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もてなし
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ラティーシャ夫人が一時的に女主人として滞在中もてなしてくれる、とルナから報告を受けた時は少しだけホッとした。なにせ王女を監禁することに対して誰一人阻止しようとしない非常識の極みな邸だ。まともなもてなしを期待できないどころか嫌がらせをしてくるかもしれない。
それが些細な嫌がらせならまだいい。ダニエルを糾弾できる材料になるから。
だが、万が一食事に毒が盛られるなど命にかかわるような嫌がらせをされた場合はオーガスタ家の一族全員が断頭台送りとなってしまう。それは困る。
ダニエル失脚後には是非ともラティーシャ夫人の子に跡を継いでもらいたい。
敵視していた従弟が当主の座に就けばダニエルはさぞかし悔しがるだろう。
悔しくて、惨めで、尊厳を踏みにじられるような想いをダニエルに味合わせたい。
ジュリアーナはその為に来たくもない忌まわしいこの場所に再びやって来たのだから。
(まあ、それ以外にも理由はあるけどね……)
それにしても、忌まわしきこの場所に再び訪れた時、精神への負荷で体調不良にならないか心配だったが存外平気だった。というのも、時戻り前はここに来てすぐ門前で別邸へと連行されたから本邸には足を踏み入れてないからかもしれない。門前では少し動機がしたが、前回とは違いラティーシャ夫人が出迎えてくれたから気が紛れた。
時戻り前もラティーシャ夫人がいてくれたならあんな目に遭わなかったと思うが、それは無理な話だ。今回ジュリアーナは客人としてこの邸を訪れたが、時戻り前は妻……つまりはこの邸の女主人となる為にやってきたのだから。
女主人となるべくやってきたジュリアーナを別の女主人が出迎えたらそれは無礼極まりない行為だ。常識とマナーがしっかりと身についているであろうラティーシャ夫人がそんな真似をするとは思えない。
それでも、夫人が取り仕切るだけでこうも快適に過ごせるのかと感心してしまう。
「王女殿下、お食事はお口に合いますでしょうか?」
「ええ、とても美味ですわ」
「それはようございました。何か足りない物があればおっしゃってください。すぐにご用意させていただきますので」
ラティーシャ夫人の采配は見事なもので、案内された部屋も提供された食事もジュリアーナの好みに合わせたものだった。きっと事前にジュリアーナの好みを調べてくれたのだろう。これこそよく教育された貴族夫人の手腕だと称賛したくなるほどだ。
貴族の妻は貴族でなくてはならない理由がこれだ。
王族や貴族の客人をもてなすというのはそう簡単なことではない。
その為の教育を受けた貴婦人でないと細かいところまで行き届かず、もてなすどころか怒らせてしまうことも有り得る。まともなもてなしも出来ないとなればそれはその家の恥に繋がり、社交界で笑い者となってしまう。
だからまともな貴族は貴族令嬢を妻にして、平民の愛人は外で囲うものだ。
教育を受けていない平民に女主人は務まらない。
なのに平民を邸に連れ込んで妻扱いするとは、ダニエルが貴族の体面も常識も理解していないことが分かる。
現に今も話題ひとつ振ることなく黙々と食事をしている。
彼は自分が接待する側だと分かっていない。案の定ラティーシャ夫人に睨まれて渋々こちらに話しかけてきた。
「あー……王女殿下、よろしければこの後遠乗りにでも行きませんか?」
「まあ、遠乗りですか……」
乗馬自体は好きだがこの男と遠出など嫌な気しかしない。
最悪そのまま何処かに監禁される可能性があるのでジュリアーナはやんわりと断った。
「そうですか、残念です……。あ、では馬車で領地を巡るのは如何でしょうか?」
何がなんでも外出させたがるあたり魂胆が丸見えだ。
どうにかしてジュリアーナを監禁したいのだろう。生憎だがその手には乗るものか。
(婚約してから既に一か月が経とうとしているものね。多分……アニーが臨月でいつ産まれてもおかしくないから焦っているのかも……)
時戻り前とは違いこんなにも大勢の護衛と侍女がいるというのにどうやって監禁するつもりかは不明だが、みすみす罠にかかってなどやるものか。
悔しそうな顔をするダニエルに笑いが込み上げてくる。
「それよりも部屋の模様替えのご相談をしたく存じます。輿入れにあたってそろそろ準備しておかないといけませんので」
「え……部屋の模様替え、ですか……?」
悔しそうな顔から一変、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして驚くダニエルに堪えた笑いが再び込み上げるのを感じた。
それが些細な嫌がらせならまだいい。ダニエルを糾弾できる材料になるから。
だが、万が一食事に毒が盛られるなど命にかかわるような嫌がらせをされた場合はオーガスタ家の一族全員が断頭台送りとなってしまう。それは困る。
ダニエル失脚後には是非ともラティーシャ夫人の子に跡を継いでもらいたい。
敵視していた従弟が当主の座に就けばダニエルはさぞかし悔しがるだろう。
悔しくて、惨めで、尊厳を踏みにじられるような想いをダニエルに味合わせたい。
ジュリアーナはその為に来たくもない忌まわしいこの場所に再びやって来たのだから。
(まあ、それ以外にも理由はあるけどね……)
それにしても、忌まわしきこの場所に再び訪れた時、精神への負荷で体調不良にならないか心配だったが存外平気だった。というのも、時戻り前はここに来てすぐ門前で別邸へと連行されたから本邸には足を踏み入れてないからかもしれない。門前では少し動機がしたが、前回とは違いラティーシャ夫人が出迎えてくれたから気が紛れた。
時戻り前もラティーシャ夫人がいてくれたならあんな目に遭わなかったと思うが、それは無理な話だ。今回ジュリアーナは客人としてこの邸を訪れたが、時戻り前は妻……つまりはこの邸の女主人となる為にやってきたのだから。
女主人となるべくやってきたジュリアーナを別の女主人が出迎えたらそれは無礼極まりない行為だ。常識とマナーがしっかりと身についているであろうラティーシャ夫人がそんな真似をするとは思えない。
それでも、夫人が取り仕切るだけでこうも快適に過ごせるのかと感心してしまう。
「王女殿下、お食事はお口に合いますでしょうか?」
「ええ、とても美味ですわ」
「それはようございました。何か足りない物があればおっしゃってください。すぐにご用意させていただきますので」
ラティーシャ夫人の采配は見事なもので、案内された部屋も提供された食事もジュリアーナの好みに合わせたものだった。きっと事前にジュリアーナの好みを調べてくれたのだろう。これこそよく教育された貴族夫人の手腕だと称賛したくなるほどだ。
貴族の妻は貴族でなくてはならない理由がこれだ。
王族や貴族の客人をもてなすというのはそう簡単なことではない。
その為の教育を受けた貴婦人でないと細かいところまで行き届かず、もてなすどころか怒らせてしまうことも有り得る。まともなもてなしも出来ないとなればそれはその家の恥に繋がり、社交界で笑い者となってしまう。
だからまともな貴族は貴族令嬢を妻にして、平民の愛人は外で囲うものだ。
教育を受けていない平民に女主人は務まらない。
なのに平民を邸に連れ込んで妻扱いするとは、ダニエルが貴族の体面も常識も理解していないことが分かる。
現に今も話題ひとつ振ることなく黙々と食事をしている。
彼は自分が接待する側だと分かっていない。案の定ラティーシャ夫人に睨まれて渋々こちらに話しかけてきた。
「あー……王女殿下、よろしければこの後遠乗りにでも行きませんか?」
「まあ、遠乗りですか……」
乗馬自体は好きだがこの男と遠出など嫌な気しかしない。
最悪そのまま何処かに監禁される可能性があるのでジュリアーナはやんわりと断った。
「そうですか、残念です……。あ、では馬車で領地を巡るのは如何でしょうか?」
何がなんでも外出させたがるあたり魂胆が丸見えだ。
どうにかしてジュリアーナを監禁したいのだろう。生憎だがその手には乗るものか。
(婚約してから既に一か月が経とうとしているものね。多分……アニーが臨月でいつ産まれてもおかしくないから焦っているのかも……)
時戻り前とは違いこんなにも大勢の護衛と侍女がいるというのにどうやって監禁するつもりかは不明だが、みすみす罠にかかってなどやるものか。
悔しそうな顔をするダニエルに笑いが込み上げてくる。
「それよりも部屋の模様替えのご相談をしたく存じます。輿入れにあたってそろそろ準備しておかないといけませんので」
「え……部屋の模様替え、ですか……?」
悔しそうな顔から一変、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして驚くダニエルに堪えた笑いが再び込み上げるのを感じた。
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