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また会えた
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「人生を狂わせたなんて……そんな大袈裟な。それに、男爵家の令嬢が婚約者なんて、侯爵である父上がお許しにならないだろう……?」
ここであの方の名を出すのか、とベロニカは怒りを覚えた。
散々あの方の忠告を無視しておきながら、都合のいい時だけあの方の名を伝家の宝刀の如く振りかざすなんて……。
沸き上がる怒りのまま、ベロニカは手に持つ扇子を折れんばかりに握りしめる。
いっそこの衝動のまま、目の前の軽薄な男を引っぱたいてしまおうかと思ったその時だった。
「失礼する! エーミール……貴様はここでいったい何をしているんだ!!」
厳しくも威厳のある声と、険しくも整った顔。
ベロニカが最も会いたかった人、コンラッド侯爵が扉を開けてその姿を現した。
「父上!? どうしてここに……?」
「家令からお前が見知らぬ令嬢を連れて何処かに行ったと聞いてな。行き先を告げなかったので、もしやと思い来てみたが……お前はどこまでベロニカ嬢に迷惑をかけるつもりだ!!」
雷が落ちる、という表現がぴったりなほど怒鳴る侯爵に、エーミールもビビも震え上がった。
だがベロニカだけは最愛の人に会えた嬉しさで頬を赤らめる。
そんなベロニカの反応を『怖がらせてしまった』と勘違いした侯爵は慌てて彼女に謝罪した。
「あ、すまないベロニカ嬢……怖がらせてしまったな。それにいきなり押しかけてしまい、重ね重ね申し訳ない……」
「いいえ、謝らないでくださいませ侯爵閣下。わたくしを心配してくださる閣下のお気持ち、誠に嬉しく思います」
「なんと寛容な……。本当に出来た人だ、我が愚息とは大違いだな……」
頬を染め、瞳を潤ませ、愛しい人の顔を焼き付けんとばかりに見つめるベロニカの姿を侯爵は『怖かったが気丈に振る舞う健気な娘』と盛大な勘違いをした。
「本当に申し訳ない……。後日また改めて謝罪に伺うので、今日の所はこの馬鹿を連れて失礼させてもらってもよろしいか?」
え、また会ってくれるの?
「ええ、構いません。わざわざご足労いただきありがとうございました」
ここでベロニカは決して「謝罪は結構です」とは言わなかった。
本来ならば婚約破棄をする大嫌いな男の親になど二度と会いたくないのが普通だろう。
だが、ベロニカにとって侯爵は『大嫌いな男の父親』でなく『初恋の君』なのだ。
会いたいと願ってしまう気持ちは止められない。
引きずるようにエーミールを連行する侯爵の後ろ姿をベロニカは名残惜しく眺めていた。
視界にビビが慌てた様子で彼等についていくのが見え、ふと、あの子は今後どうなるだろうと考える。
(婚約者に、とは言ったものの……どうなるかしらね……)
男爵令嬢、しかも愛人との庶子。
侯爵家嫡男のエーミールの婚約者になるには身分も血筋も足りない。
おまけにランカ男爵家は特別裕福をいうわけでもなく、領地にこれといった特色もない。
利益のない婚約を結ぶ貴族なんているのだろうか。
ベロニカとエーミールの婚約も、エーミールの一目惚れといえども互いの家に利益があったからこそ結ばれたようなものなのに。
あんな男に惚れたばかりに可哀想、と思うがそれと同時に自業自得だろうとも思ってしまう。
夜会でエーミールをダンスに誘った時はまだ婚約者がいると知らなかったようだが、ベロニカの邸を訪ねた時点で理解していたはず。
その状態でノコノコとやってきた時点で彼女は“巻き込まれただけの哀れな少女”ではない。
彼女の未来は決して明るくないだろう。でも同情はしない。
エーミールには従順な女を装っていたが、あれは明らかにこちらを見下していた。
ああ、そういえば”そんなだから捨てられるのよ!”なんてふざけた台詞も吐いていたな。
彼がダンスの誘いを受けてくれたからか、それとも馬車で迎えにきたことで勘違いしたかは知らないが、自分を選んでくれたとでも思ったのだろうか。エーミールは彼女をそういう目で見てはなさそうだが。
彼女もエーミール同様、物事を深く考えない性質なのだろう。
未だ婚約破棄の手続きが済んでいない状態の彼と二人きりになり、しかもそれを目撃されたらどうなるかを考えないのだから。
(まあ、もう会わないし別にいいわね)
元婚約者が見知らぬ女を連れて突撃してくるのは、普通に考えれば嫌だし後味が悪いものだろう。
だがベロニカにとってはそんな阿呆二人よりも、もう会えないと思っていた初恋の人に会えた喜びの方が大きい。
あの人は改めて謝罪に来ると言っていた。
その時は目一杯着飾って、綺麗な自分を見て欲しい。
早速ドレスを選ばなきゃ、と浮かれた気分で部屋へと戻るベロニカの頭からは、エーミールとビビはすっかり消え去っていた。
ここであの方の名を出すのか、とベロニカは怒りを覚えた。
散々あの方の忠告を無視しておきながら、都合のいい時だけあの方の名を伝家の宝刀の如く振りかざすなんて……。
沸き上がる怒りのまま、ベロニカは手に持つ扇子を折れんばかりに握りしめる。
いっそこの衝動のまま、目の前の軽薄な男を引っぱたいてしまおうかと思ったその時だった。
「失礼する! エーミール……貴様はここでいったい何をしているんだ!!」
厳しくも威厳のある声と、険しくも整った顔。
ベロニカが最も会いたかった人、コンラッド侯爵が扉を開けてその姿を現した。
「父上!? どうしてここに……?」
「家令からお前が見知らぬ令嬢を連れて何処かに行ったと聞いてな。行き先を告げなかったので、もしやと思い来てみたが……お前はどこまでベロニカ嬢に迷惑をかけるつもりだ!!」
雷が落ちる、という表現がぴったりなほど怒鳴る侯爵に、エーミールもビビも震え上がった。
だがベロニカだけは最愛の人に会えた嬉しさで頬を赤らめる。
そんなベロニカの反応を『怖がらせてしまった』と勘違いした侯爵は慌てて彼女に謝罪した。
「あ、すまないベロニカ嬢……怖がらせてしまったな。それにいきなり押しかけてしまい、重ね重ね申し訳ない……」
「いいえ、謝らないでくださいませ侯爵閣下。わたくしを心配してくださる閣下のお気持ち、誠に嬉しく思います」
「なんと寛容な……。本当に出来た人だ、我が愚息とは大違いだな……」
頬を染め、瞳を潤ませ、愛しい人の顔を焼き付けんとばかりに見つめるベロニカの姿を侯爵は『怖かったが気丈に振る舞う健気な娘』と盛大な勘違いをした。
「本当に申し訳ない……。後日また改めて謝罪に伺うので、今日の所はこの馬鹿を連れて失礼させてもらってもよろしいか?」
え、また会ってくれるの?
「ええ、構いません。わざわざご足労いただきありがとうございました」
ここでベロニカは決して「謝罪は結構です」とは言わなかった。
本来ならば婚約破棄をする大嫌いな男の親になど二度と会いたくないのが普通だろう。
だが、ベロニカにとって侯爵は『大嫌いな男の父親』でなく『初恋の君』なのだ。
会いたいと願ってしまう気持ちは止められない。
引きずるようにエーミールを連行する侯爵の後ろ姿をベロニカは名残惜しく眺めていた。
視界にビビが慌てた様子で彼等についていくのが見え、ふと、あの子は今後どうなるだろうと考える。
(婚約者に、とは言ったものの……どうなるかしらね……)
男爵令嬢、しかも愛人との庶子。
侯爵家嫡男のエーミールの婚約者になるには身分も血筋も足りない。
おまけにランカ男爵家は特別裕福をいうわけでもなく、領地にこれといった特色もない。
利益のない婚約を結ぶ貴族なんているのだろうか。
ベロニカとエーミールの婚約も、エーミールの一目惚れといえども互いの家に利益があったからこそ結ばれたようなものなのに。
あんな男に惚れたばかりに可哀想、と思うがそれと同時に自業自得だろうとも思ってしまう。
夜会でエーミールをダンスに誘った時はまだ婚約者がいると知らなかったようだが、ベロニカの邸を訪ねた時点で理解していたはず。
その状態でノコノコとやってきた時点で彼女は“巻き込まれただけの哀れな少女”ではない。
彼女の未来は決して明るくないだろう。でも同情はしない。
エーミールには従順な女を装っていたが、あれは明らかにこちらを見下していた。
ああ、そういえば”そんなだから捨てられるのよ!”なんてふざけた台詞も吐いていたな。
彼がダンスの誘いを受けてくれたからか、それとも馬車で迎えにきたことで勘違いしたかは知らないが、自分を選んでくれたとでも思ったのだろうか。エーミールは彼女をそういう目で見てはなさそうだが。
彼女もエーミール同様、物事を深く考えない性質なのだろう。
未だ婚約破棄の手続きが済んでいない状態の彼と二人きりになり、しかもそれを目撃されたらどうなるかを考えないのだから。
(まあ、もう会わないし別にいいわね)
元婚約者が見知らぬ女を連れて突撃してくるのは、普通に考えれば嫌だし後味が悪いものだろう。
だがベロニカにとってはそんな阿呆二人よりも、もう会えないと思っていた初恋の人に会えた喜びの方が大きい。
あの人は改めて謝罪に来ると言っていた。
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早速ドレスを選ばなきゃ、と浮かれた気分で部屋へと戻るベロニカの頭からは、エーミールとビビはすっかり消え去っていた。
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