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彼女と早朝の訪問客
「ちょっと! お邪魔するわよ!」
早朝から何やら騒がしい声が別邸に響く。
寝ぼけ眼のジュリエッタが声のする方へ向かうと、そこには伯爵の愛人であるマリアナが立っていた。
いつもの派手派手しい身なりではなく、質素なワンピースに薄化粧という大人しい姿。
一瞬誰だか分からないほどの変身ぶりだ。
「あら、随分お久しぶりね? 元気だった?」
まるで友人に対するように、親し気な態度を見せたジュリエッタにマリアナは信じられないというような顔を向ける。
自分達は正妻と愛人という決して交わらない水と油のような関係なはず。
しかも夫はその愛人に入れ込み、正妻を蔑ろにしている。いわば愛人は正妻の不幸の根源のようなもの。
なのにこの親密な態度は何なのかと。
「な……なんでアンタ、そんな親し気なのよ?」
「え? 別に敵同士ってわけでもないし、普通じゃない?」
「いやいやいや! アタシは愛人、アンタは妻。世間的に考えれば敵同士でしょうよ!?」
「え!? どうしたのよ、貴女……そんな常識的なことを言うなんて?」
「アンタ、アタシを何だと思ってたの? ……いや、まあいいわ。アンタさ、やっぱりそっちが素なのね?」
マリアナの指摘にジュリエッタは目を見開いて驚いた。
いつも妄言を吐き散らかす彼女の口からこんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったからだ。
「なあに? そんな驚いた顔して……」
「いや、驚くでしょう? 貴女、なんかいつもと違うじゃない?」
ジュリエッタの問いかけに、マリアナはうんざりした様子で話し始めた。
「アタシもいい加減目が覚めたのよ……。貴族に見初められて舞い上がっていたけど、やっていることは相当ヤバイことだって。平民の愛人が、貴族の邸に上がり込んで女主人のように振る舞うって……有り得ないことなのよね。何でアタシは今まで気づかなかったのかしら……」
「ええ!? その通りだけど、本当にどうしたの? 何か悪い物でも食べたの?」
それともリサやシロにあの毒薬の入った注射器を打たれたのかな?
そうやって心配するジュリエッタにマリアナは怪訝な顔を向けた。
「アンタ……割とハッキリ言うわね? 前々から思ってたんだけど、アンタってもしかして平民だった? なーんかこう、生まれつきの貴族様とは違うのよね……。弱いお嬢様気取ってるけど、変にタフだしさ」
鋭いマリアナの指摘にジュリエッタは内心驚くも、それを悟られぬようただ静かに微笑んだ。
「訳アリってこと? ふん、まあいいわ。それよりほら、これ返しにきたのよ」
「ん? これって……?」
マリアナの視線の先にあったのはいくつもの箱。
大小様々なソレは手押し車の上に無造作に積まれていた。
「誰にも見つからないようにこっそり運んできたのよ。ダニエルがくれたとはいえ、泥棒行為は普通に駄目よね……。だから返しにきたの」
そう言われてもジュリエッタには何が入っているのか見当がつかない。
なので一番上に積んである箱を開け、中を確かめた。
「これは……髪飾り? それに耳飾りや首飾りまで……」
小さな箱には宝飾品が収められていた。
それはどれも大粒の宝石があしらわれており、見ただけで高級品と分かる逸品だ。
「こっちの大きな箱はドレスが入ってるわ。これ全部、アンタが輿入れのとき持ってきたやつでしょ?」
そう言われてみれば確かにそうだ。
宝飾品にもドレスにもハルバード公爵家の家紋があしらわれている。
一度も身に着けることのなかったそれらはダニエルの手によって奪われ、マリアナへと渡ったことを思い出した。
「ごめん。人のを奪って当たり前のように着るなんてどうかしてたわ……。謝って済むことじゃないけど、本当にごめんね」
あのマリアナが謝罪を!?
いったい彼女の身に何が起こったの?
早朝から何やら騒がしい声が別邸に響く。
寝ぼけ眼のジュリエッタが声のする方へ向かうと、そこには伯爵の愛人であるマリアナが立っていた。
いつもの派手派手しい身なりではなく、質素なワンピースに薄化粧という大人しい姿。
一瞬誰だか分からないほどの変身ぶりだ。
「あら、随分お久しぶりね? 元気だった?」
まるで友人に対するように、親し気な態度を見せたジュリエッタにマリアナは信じられないというような顔を向ける。
自分達は正妻と愛人という決して交わらない水と油のような関係なはず。
しかも夫はその愛人に入れ込み、正妻を蔑ろにしている。いわば愛人は正妻の不幸の根源のようなもの。
なのにこの親密な態度は何なのかと。
「な……なんでアンタ、そんな親し気なのよ?」
「え? 別に敵同士ってわけでもないし、普通じゃない?」
「いやいやいや! アタシは愛人、アンタは妻。世間的に考えれば敵同士でしょうよ!?」
「え!? どうしたのよ、貴女……そんな常識的なことを言うなんて?」
「アンタ、アタシを何だと思ってたの? ……いや、まあいいわ。アンタさ、やっぱりそっちが素なのね?」
マリアナの指摘にジュリエッタは目を見開いて驚いた。
いつも妄言を吐き散らかす彼女の口からこんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったからだ。
「なあに? そんな驚いた顔して……」
「いや、驚くでしょう? 貴女、なんかいつもと違うじゃない?」
ジュリエッタの問いかけに、マリアナはうんざりした様子で話し始めた。
「アタシもいい加減目が覚めたのよ……。貴族に見初められて舞い上がっていたけど、やっていることは相当ヤバイことだって。平民の愛人が、貴族の邸に上がり込んで女主人のように振る舞うって……有り得ないことなのよね。何でアタシは今まで気づかなかったのかしら……」
「ええ!? その通りだけど、本当にどうしたの? 何か悪い物でも食べたの?」
それともリサやシロにあの毒薬の入った注射器を打たれたのかな?
そうやって心配するジュリエッタにマリアナは怪訝な顔を向けた。
「アンタ……割とハッキリ言うわね? 前々から思ってたんだけど、アンタってもしかして平民だった? なーんかこう、生まれつきの貴族様とは違うのよね……。弱いお嬢様気取ってるけど、変にタフだしさ」
鋭いマリアナの指摘にジュリエッタは内心驚くも、それを悟られぬようただ静かに微笑んだ。
「訳アリってこと? ふん、まあいいわ。それよりほら、これ返しにきたのよ」
「ん? これって……?」
マリアナの視線の先にあったのはいくつもの箱。
大小様々なソレは手押し車の上に無造作に積まれていた。
「誰にも見つからないようにこっそり運んできたのよ。ダニエルがくれたとはいえ、泥棒行為は普通に駄目よね……。だから返しにきたの」
そう言われてもジュリエッタには何が入っているのか見当がつかない。
なので一番上に積んである箱を開け、中を確かめた。
「これは……髪飾り? それに耳飾りや首飾りまで……」
小さな箱には宝飾品が収められていた。
それはどれも大粒の宝石があしらわれており、見ただけで高級品と分かる逸品だ。
「こっちの大きな箱はドレスが入ってるわ。これ全部、アンタが輿入れのとき持ってきたやつでしょ?」
そう言われてみれば確かにそうだ。
宝飾品にもドレスにもハルバード公爵家の家紋があしらわれている。
一度も身に着けることのなかったそれらはダニエルの手によって奪われ、マリアナへと渡ったことを思い出した。
「ごめん。人のを奪って当たり前のように着るなんてどうかしてたわ……。謝って済むことじゃないけど、本当にごめんね」
あのマリアナが謝罪を!?
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