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側近とは

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「お前は……本当に愚かだな……。はぁ……その様子だとクローディア嬢に散々貶されたようだから余からはこれ以上責めるのは止めておく」

 夜会での一部始終を侍従から聞いた国王は、目の前でだらだらと涙を流して項垂れるギルベルトに対してため息をついた。本当なら激怒したいところだが、見ているこちらが恥ずかしくなるぐらい無様に泣いている相手に言うのは忍びない。それだけでも国王は息子が婚約者に随分辛辣な言葉をぶつけられたと理解した。

「まあ、自業自得だな。あれほど婚約者のクローディア嬢を大切にしろと言ったのに、散々蔑ろにした挙句に他の女に現を抜かすとはな。飽きれて物も言えぬわ。しかも贈り物一つしていないとは……さすがにそこまで屑だとは思わなかった。知らなんだ余にも責任はあるが、こういうことは最も近くにいる側近が気を利かせるべきではないのか? なぜお主はギルベルトの側近でありながら、気を利かせて代わりに贈らなかったのだ? それか余へ報告をしていればよかったのに、何故怠った?」

 ギルベルトの後ろに控える側近一号が王の言葉を受け小刻みに震えはじめる。
 確かに側近ならば気を利かせて主人の代わりに主人の名で婚約者に無難な贈り物をすべきではある。
 
 でも彼はそれをしなかった。
 なぜならギルベルトがクローディアを嫌っていたからだ。
 主人が嫌う相手は見下してもいいと勘違いしていた。

「お、恐れながら申し上げます……クローディア嬢は身分を笠に着てギルベルト殿下の婚約者の座を無理矢理もぎ取るような女性です。そんな人に気を遣う必要など……」

「当のクローディア嬢がギルベルトとの婚約は嫌で嫌で仕方なかった、王命で仕方なかった、と言っておったのにか? 余が公爵に何度も頼んでようやく結んだ婚約を台無しにしてくれよって……。クローディア嬢が言った通りお前達は本当に人の話を聞かず思い込みで行動をする阿呆だな。こんなことなら早々に側近を変え、ギルベルトには厳しい教育を施すべきだったな……。今更悔やんでももう遅いか。まあいい、ギルベルト、お前はしばらく謹慎だ。沙汰が下されるまでは部屋から一歩も出るな。そして側近のお前はクビだ。どこへなりとも好きに行くがいい」

「……畏まりました」

「そ、そんなっ!! 陛下、どうかご温情を……! 私はギルベルト殿下の為を思って……!!」

 国王からの命にギルベルトは項垂れながら了承し、側近一号は悲鳴を上げて抗議した。
 王城をクビになったところで行くあてなどない。
 実家に戻っても王太子の婚約破棄に加担した自分を家族は許さないだろう。

「お許しを……! これからは心を入れ替えますゆえ……!」

「見苦しいな。 衛兵、この男を城の外に捨ててこい」 

「そんなっ!! お、お許しを……お許しをっ……!!」

 衛兵二人によって両脇を抱えられ側近一号は無理矢理引きずられていく。
 主人の為にしてきたことなのに、当の主人はこちらを一瞥すらしない。
 
 彼は今更ながら後悔した。仕えるべき方を間違えたと。
 しかし今更悔やんだところでどうしようもなく、彼は衛兵の手によって城門の外へ放り出され二度と王城へは入れなかった。
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