フランチェスカ王女の婿取り

わらびもち

文字の大きさ
32 / 84

彼からの贈り物

しおりを挟む
 新しい婚約者候補のルイともう一度会って話してみようと思い、ヨーク公爵家へ手紙を送る。すると比較的早く返事が届き、今度はルイのみが王宮を訪れることになった。

「ローゼ、変なところはないかしら?」

「大丈夫ですよ姫様、とてもお美しいです」

 ルイとの約束の日、私は朝からソワソワと落ち着かず、普段は気にならないことまで気になってしまう。
 相手に自分の装いをどう思われるかなど、セレスタンの時には気にも留めなかったことだ。

 早く会いたいと思うのに、会ったらどんな顔をすればいいのと戸惑う。

 早く話がしたいのに、何を話せば彼は喜んでくれるだろうかと迷う。

 胸が苦しいのに、何故か心地いい。
 甘い痺れが全身に広がり、不思議と幸福な気分に満たされる。

「姫様、頬が赤いですよ?」

 ローゼに揶揄う様に指摘され、私は思わず両手で頬を押さえる。
 手に触れた部分は確かに熱かった。

「ローゼ、何か冷たい飲み物をちょうだい」

 彼が来る前に顔の火照りを冷ましたい。
 こんな顔を見られるのは恥ずかしいから。



「フランチェスカ王女殿下、またお会いできて嬉しいです」

 眩い笑みを浮かべるルイに、先ほど冷ましたばかりの頬が再び熱を帯びる。
 まだ会って二度目なのに、彼にときめく気持ちが抑えられない。

「ようこそおいでくださいました、ルイ様。わたくしもまたお会いできて嬉しいです」

 幾度となく社交辞令で使ってきた「お会いできて嬉しい」という台詞。
 それを本心から言う日が来ようとは思ってもみなかった。

「今日は殿下への贈り物をお持ちしました。女性に贈り物を選ぶのは初めてですので、気に入って頂けると嬉しいのですが……」

 はにかみながら言うルイは可愛い。
 物よりもその表情だけでお腹いっぱいになりそうだ。
 勿論物も有難くいただくけど。

「まあ、ルイ様が自ら選んでくださったの? 嬉しいわ、開けてみてもいいかしら?」

 ルイが手渡してくれたのは白い包装紙に可愛らしい赤色のリボンが飾られた箱。
 大きさから見てアクセサリーだろうか。

「勿論です。殿下」

 彼の眩い微笑みにまた頬が熱くなる。
 それを隠すように俯き、包装紙を剥がして箱を開封した。

「まあ……綺麗!」

 箱の中から出てきたのは美しいオルゴール。
 白を基調とした上品な色使いに、宝石をあしらったそれは高級感があり煌びやかだ。

「素敵だわ……。蓋の部分にはめ込まれているのはエメラルドかしら?」

「ええ、そうです。ちなみにその下の部分はサファイアが使われております」

「まあ……綺麗、ルイ様の瞳と同じ色ね」

 わざわざ私の瞳の色と彼の色が使われている物を選んでくれたのだろうか。
 そう考えると嬉しくてまた体の熱が上がってしまいそうだ。

「殿下がこのオルゴールを目にする度、私のことを思い出してくれたら嬉しいと思いまして……」

「ルイ様……嬉しいです」

 彼も私と同様に頬が赤い。

 サファイアのように美しい青の瞳は潤み、真っすぐに私を見つめてくる。

 私達は時が止まったかのようにそのまま見つめあい、しばらく互いの瞳から目が離せなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 年内最後の更新です。

 当作品を読んでいただきありがとうございました。

 来年もどうぞよろしくお願い致します。

 よいお年をお迎えください。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

処理中です...