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第一章 ー魔王と出会い編ー
第5話 ―魔王と侵入―
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クロウから魔法の扱いを教わってから数日後、ラースは城門の前に立っていた。
数日の間に魔法に慣れ、幾つかの魔法と魔術を覚えている。
そしてなにより侵入するための魔法については幾度かの実験を行い、周囲の人間に気付かれないことが確認できていた。
時刻は昼過ぎ。
ラースはミリアに夜這いしてついでに王女の姿を確認するつもりだったが、夜になってしまうと自室に籠もってしまう可能性が高く、居室のわからないラース達は各部屋を総当たりしないといけなくなるのでクロウに却下された。
既にラース達の存在を隠蔽する魔法はかけてある。
発見されても今のラース達であれば何とかなるだろうが、
夜這いはあくまで密やかに行うものである。
「では、行くか」
街から城内に戻ってくる衛兵に続いて城門をくぐる。
城門の先は庭園が広がっている。
綺麗に整えられた多くの樹木は花を咲かせている。
道はそんな庭園を横目に城の正面となる赤色の大きな正門へと続いていた。
ラースがふと横を見ると数人の庭師が今も何か作業をしている。
土いじりに興味のないラースには何をしているかはさっぱりだが。
正門前まで辿り着くと兵士達はその右側にある横道に入る。
この大きな正門が開かれるのは儀式や行事、来賓客の出迎えなど権威を示す時のみだ。
多くの兵や下男下女は脇にある通用口か同じような普通の大きさの出入り口から行っている。
そのまま兵士に続き城内に入ると数人の兵士とすれ違ったが、二人が気づかれる気配なかった。
吸音のためか暗い赤色の絨毯が廊下の中心に敷かれている。
みる限り奥まで続いているので恐らく城内全体に敷き詰められていることだろう。
比較的広い通路をまっすぐ進むと大きな、二階部分まで吹き抜けになっている部屋へ辿り着いた。
天井に設置された窓が日射しを取り込み、その真下にある玉座を照らしている。
謁見の間である。
ほかより高い壇上に置かれた椅子の主である国王は今はいない。
代わりに見張りの兵が二人ほど立っていた。
「ここにもいないか…」
時間帯からして食事ということはないだろう。
となると執務室か私室か、いずれにせよその場所がわからないラース達はミリアや王女の居そうな部屋を探し出す必要がある。
「せっかくの王城だ。のんびり探索といくか」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
部屋の入口に見張りが2人立っている部屋を見つけたのはそれから暫くしてからだった。
その部屋の周囲には簡単な書庫や会議室があったので恐らくは執務室だろう。
中には人の気配がする。
早速扉を開けて確認したいところだが透明化(正確には周囲の人間に認識されていない状態なだけだ)しているラース達が開ける訳にはいかない。
どうしたものかと思案していると丁度良いところにメイドがやってきて部屋へと入る。
丁寧に抱えているのは水差しだ。
部屋の中のものと入れ換えるらしい。
ラース達もメイドと共に部屋の中へと滑り込む。
部屋の中には大きな机とその上に積まれた書類の山。
そこに埋もれるように頭の禿げた齢50過ぎているであろう男がいた。
男はニヤニヤしながら手元の羊皮紙を見ている。
この部屋の奥にもう一部屋休憩室があるのだが、そちらには誰もいなかった。
どうやらこの禿げた男の執務室のようだ。
街で聞いていた国王の年齢とも一致しないので恐らく大臣などの要職の1人だろう。
はずれだと思い部屋を出ようとするが、ここで一つミスを犯していることにラースは気づいた。
メイドが既にいなかったのである。
これではこの部屋から出ることが出来ない。
禿げたオッサンと二人きりだ。
すぐに誰かが来るか、オッサンが部屋から出てくれればいいのだが、椅子から動かない男を見ると後者の望みは薄い。
「…これであの王も王女もお終いか。」
男が相変わらずニヤニヤと手元の紙を見ている。
王女という言葉に引っかかりを覚えたラースは男の背後に回り込みその紙を見てみる。
内容は
・ホーミン一家の身柄の確保に成功
・薬の入手とその金額
・白竜王国からの連絡
の三点だった。
細かく読むつもりもないラースは興味のある王女という文字だけを探したがそれらしい文字は見当たらない。
王女の名前は確かー
『フィリオナ殿下は白竜王国から非公式に何かを要求されているようですね』
王女の名前は三つ目の内容に出てくる。
要求の催促のようだった。
他に興味のありそうな内容は書かれていない。
他に暇潰しはないかとラースが顔を上げたところで、
コンコン
と部屋の入口がノックされた。
数日の間に魔法に慣れ、幾つかの魔法と魔術を覚えている。
そしてなにより侵入するための魔法については幾度かの実験を行い、周囲の人間に気付かれないことが確認できていた。
時刻は昼過ぎ。
ラースはミリアに夜這いしてついでに王女の姿を確認するつもりだったが、夜になってしまうと自室に籠もってしまう可能性が高く、居室のわからないラース達は各部屋を総当たりしないといけなくなるのでクロウに却下された。
既にラース達の存在を隠蔽する魔法はかけてある。
発見されても今のラース達であれば何とかなるだろうが、
夜這いはあくまで密やかに行うものである。
「では、行くか」
街から城内に戻ってくる衛兵に続いて城門をくぐる。
城門の先は庭園が広がっている。
綺麗に整えられた多くの樹木は花を咲かせている。
道はそんな庭園を横目に城の正面となる赤色の大きな正門へと続いていた。
ラースがふと横を見ると数人の庭師が今も何か作業をしている。
土いじりに興味のないラースには何をしているかはさっぱりだが。
正門前まで辿り着くと兵士達はその右側にある横道に入る。
この大きな正門が開かれるのは儀式や行事、来賓客の出迎えなど権威を示す時のみだ。
多くの兵や下男下女は脇にある通用口か同じような普通の大きさの出入り口から行っている。
そのまま兵士に続き城内に入ると数人の兵士とすれ違ったが、二人が気づかれる気配なかった。
吸音のためか暗い赤色の絨毯が廊下の中心に敷かれている。
みる限り奥まで続いているので恐らく城内全体に敷き詰められていることだろう。
比較的広い通路をまっすぐ進むと大きな、二階部分まで吹き抜けになっている部屋へ辿り着いた。
天井に設置された窓が日射しを取り込み、その真下にある玉座を照らしている。
謁見の間である。
ほかより高い壇上に置かれた椅子の主である国王は今はいない。
代わりに見張りの兵が二人ほど立っていた。
「ここにもいないか…」
時間帯からして食事ということはないだろう。
となると執務室か私室か、いずれにせよその場所がわからないラース達はミリアや王女の居そうな部屋を探し出す必要がある。
「せっかくの王城だ。のんびり探索といくか」
ーーーーーーーーー
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部屋の入口に見張りが2人立っている部屋を見つけたのはそれから暫くしてからだった。
その部屋の周囲には簡単な書庫や会議室があったので恐らくは執務室だろう。
中には人の気配がする。
早速扉を開けて確認したいところだが透明化(正確には周囲の人間に認識されていない状態なだけだ)しているラース達が開ける訳にはいかない。
どうしたものかと思案していると丁度良いところにメイドがやってきて部屋へと入る。
丁寧に抱えているのは水差しだ。
部屋の中のものと入れ換えるらしい。
ラース達もメイドと共に部屋の中へと滑り込む。
部屋の中には大きな机とその上に積まれた書類の山。
そこに埋もれるように頭の禿げた齢50過ぎているであろう男がいた。
男はニヤニヤしながら手元の羊皮紙を見ている。
この部屋の奥にもう一部屋休憩室があるのだが、そちらには誰もいなかった。
どうやらこの禿げた男の執務室のようだ。
街で聞いていた国王の年齢とも一致しないので恐らく大臣などの要職の1人だろう。
はずれだと思い部屋を出ようとするが、ここで一つミスを犯していることにラースは気づいた。
メイドが既にいなかったのである。
これではこの部屋から出ることが出来ない。
禿げたオッサンと二人きりだ。
すぐに誰かが来るか、オッサンが部屋から出てくれればいいのだが、椅子から動かない男を見ると後者の望みは薄い。
「…これであの王も王女もお終いか。」
男が相変わらずニヤニヤと手元の紙を見ている。
王女という言葉に引っかかりを覚えたラースは男の背後に回り込みその紙を見てみる。
内容は
・ホーミン一家の身柄の確保に成功
・薬の入手とその金額
・白竜王国からの連絡
の三点だった。
細かく読むつもりもないラースは興味のある王女という文字だけを探したがそれらしい文字は見当たらない。
王女の名前は確かー
『フィリオナ殿下は白竜王国から非公式に何かを要求されているようですね』
王女の名前は三つ目の内容に出てくる。
要求の催促のようだった。
他に興味のありそうな内容は書かれていない。
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コンコン
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