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第一章 ー魔王と出会い編ー
第8話 ―魔王と口上―
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コンコン、と扉が優しくノックされる。
フィリオナはこのノックの音だけで相手がミリアであること悟る。
「…失礼します。姫様、少々お話が。」
「ちょうど良かったわ。私も話があるの。さ、入って」
室内に侍女がいないことを確認するとフィリオナに招かれたミリアが扉を閉めようとして、
「…?」
一瞬、何かを挟んだような抵抗を感じて扉は閉まらなかった。
不思議に思い廊下を確認するがそこには誰もいない。
「ミリア、どうかしたのですか?」
「いえ、何でもありません。」
気の迷いと思うには確かな感触だったが実際に誰もいない。
正確には部屋から追い出された侍女と見張りの兵が1人近くにいるのだが扉に触れるほど側にはいなかった。
改めて扉を閉めるがそれはいつも通り静かに閉まった。
「それで、お話というのは何でしょうか」
「ミリアからお願い」
フィリオナに促されてミリアは大臣から言われた白竜帝国からの要求について伝える。
そして同時に自分は反対であることを伝えた。
「きっと姫様にはもっと相応しい方がおられます。他国への侵略を繰り返す蛮族のような王族へ嫁ぐことはありません。」
「大陸の半分を占めるような大国の王族なのよ?」
「大小は関係ありません。姫様に相応しいのは権威を持ち誠実で有能な者で、単独でも姫様をお守りできるような屈強な男でなければいけません」
ミリアの行き過ぎた過保護っぷりにフィリオナの顔から思わず笑顔が零れる。
「…そのような男性いるかしら」
「きっとおります。ですから婚姻については焦らずに慎重に決めるべきだと具申致します。」
ミリアの態度は崩れない。
大臣からの依頼など端から聞く気はなかった。
当然前回キッパリと断っている姫様も同じ想いだろうとミリアは疑っていない。
そのためフィリオナの次の言葉はミリアにとって驚愕のものだった。
「……ミリア。」
「はい。」
「私、この話承けようかと思っているの」
「なっー」
「なんだとーーーっ!」
「!?」
声は2人のすぐ隣から突然聞こえた。
『ラース様、術が解けました』
「えぇい!そんなのはどうでもいいわ!」
ラースはフィリオナに向き直り、両肩を掴まえる。
「いかん。いかんぞ!お前はオレ様が貰う。なんとか帝国の奴らになどくれてやらん」
ラースは、
この部屋に入り王女の姿を見た途端に感嘆の声を漏らしていた。
ミリアも間違いなく美人だがフィリオナはそれとは違う種類の美少女だった。
一目で気に入り、既に自分のものにするつもりでその姿を眺めていたが、婚約話で我慢できなくなったのだ。
元々今回の侵入の目的は王女ではなくミリアである。
それも夜這いの本番となる夜ではなくまだ昼間だ。
侵入した目標としては失敗もいいところだが当のラースはそれどころではなかった。
人妻が悪いとは言わない。
だがこの美少女を見逃して誰かに貰われた後に戴く気は毛頭無いのだ。
フィリオナは突然の来訪者にキョトンとした顔のまま、
「えっと…どちらさまでしょう、か…?」
と尋ねるのが精一杯だった。
真っ先に正気に返ったのはミリアだった。
「サイレンス」
「曲者っ」
ラースが魔術を行使するのとほぼ同時にミリアは抜剣し、そのまま
ラースへと切りかかる。
が、ラースは魔甲で覆われたの右腕でこれを受け止めていた。
乾いた衝撃音が部屋の中に響き渡り、ミリアは驚愕の表情を見せていた。
過信しているわけではないが彼女にとって自分の一撃をあっさりと、それも素手で止められるとは思っていなかったのである。
止めた当人は、
「おー…本当にコレ硬いんだな。隊長クラスの斬撃をあっさり防げるとは」
自分の右手をしげしげと眺めていた。
「姫様!こちらへ!」
ミリアが声をかけてもフィリオナは動かなかった。
あまりの突然の事に身が竦んでしまったか。
ミリアはラースに向けて剣を突きつけたまま、フィリオナの元へと寄るとそのまま自分の背後へ隠す。
これで部屋の入り口から遠ざかってしまった。
だがフィリオナを放置する訳にもいかない。
「貴様、何者だ?」
「お、そうか。こういう名乗りは初めてだな。」
ラースは体を覆う外套をバサリと翻して不敵な笑みを浮かべる。
そして軽く溜めを作ったあと、
「オレ様はラース。魔王ラースだ。この世の美女を全て手に入れる、その手始めに貴様達を貰いに来た」
高らかにそう宣言した。
そして、
………………
…………沈黙が部屋を支配した。
フィリオナはこのノックの音だけで相手がミリアであること悟る。
「…失礼します。姫様、少々お話が。」
「ちょうど良かったわ。私も話があるの。さ、入って」
室内に侍女がいないことを確認するとフィリオナに招かれたミリアが扉を閉めようとして、
「…?」
一瞬、何かを挟んだような抵抗を感じて扉は閉まらなかった。
不思議に思い廊下を確認するがそこには誰もいない。
「ミリア、どうかしたのですか?」
「いえ、何でもありません。」
気の迷いと思うには確かな感触だったが実際に誰もいない。
正確には部屋から追い出された侍女と見張りの兵が1人近くにいるのだが扉に触れるほど側にはいなかった。
改めて扉を閉めるがそれはいつも通り静かに閉まった。
「それで、お話というのは何でしょうか」
「ミリアからお願い」
フィリオナに促されてミリアは大臣から言われた白竜帝国からの要求について伝える。
そして同時に自分は反対であることを伝えた。
「きっと姫様にはもっと相応しい方がおられます。他国への侵略を繰り返す蛮族のような王族へ嫁ぐことはありません。」
「大陸の半分を占めるような大国の王族なのよ?」
「大小は関係ありません。姫様に相応しいのは権威を持ち誠実で有能な者で、単独でも姫様をお守りできるような屈強な男でなければいけません」
ミリアの行き過ぎた過保護っぷりにフィリオナの顔から思わず笑顔が零れる。
「…そのような男性いるかしら」
「きっとおります。ですから婚姻については焦らずに慎重に決めるべきだと具申致します。」
ミリアの態度は崩れない。
大臣からの依頼など端から聞く気はなかった。
当然前回キッパリと断っている姫様も同じ想いだろうとミリアは疑っていない。
そのためフィリオナの次の言葉はミリアにとって驚愕のものだった。
「……ミリア。」
「はい。」
「私、この話承けようかと思っているの」
「なっー」
「なんだとーーーっ!」
「!?」
声は2人のすぐ隣から突然聞こえた。
『ラース様、術が解けました』
「えぇい!そんなのはどうでもいいわ!」
ラースはフィリオナに向き直り、両肩を掴まえる。
「いかん。いかんぞ!お前はオレ様が貰う。なんとか帝国の奴らになどくれてやらん」
ラースは、
この部屋に入り王女の姿を見た途端に感嘆の声を漏らしていた。
ミリアも間違いなく美人だがフィリオナはそれとは違う種類の美少女だった。
一目で気に入り、既に自分のものにするつもりでその姿を眺めていたが、婚約話で我慢できなくなったのだ。
元々今回の侵入の目的は王女ではなくミリアである。
それも夜這いの本番となる夜ではなくまだ昼間だ。
侵入した目標としては失敗もいいところだが当のラースはそれどころではなかった。
人妻が悪いとは言わない。
だがこの美少女を見逃して誰かに貰われた後に戴く気は毛頭無いのだ。
フィリオナは突然の来訪者にキョトンとした顔のまま、
「えっと…どちらさまでしょう、か…?」
と尋ねるのが精一杯だった。
真っ先に正気に返ったのはミリアだった。
「サイレンス」
「曲者っ」
ラースが魔術を行使するのとほぼ同時にミリアは抜剣し、そのまま
ラースへと切りかかる。
が、ラースは魔甲で覆われたの右腕でこれを受け止めていた。
乾いた衝撃音が部屋の中に響き渡り、ミリアは驚愕の表情を見せていた。
過信しているわけではないが彼女にとって自分の一撃をあっさりと、それも素手で止められるとは思っていなかったのである。
止めた当人は、
「おー…本当にコレ硬いんだな。隊長クラスの斬撃をあっさり防げるとは」
自分の右手をしげしげと眺めていた。
「姫様!こちらへ!」
ミリアが声をかけてもフィリオナは動かなかった。
あまりの突然の事に身が竦んでしまったか。
ミリアはラースに向けて剣を突きつけたまま、フィリオナの元へと寄るとそのまま自分の背後へ隠す。
これで部屋の入り口から遠ざかってしまった。
だがフィリオナを放置する訳にもいかない。
「貴様、何者だ?」
「お、そうか。こういう名乗りは初めてだな。」
ラースは体を覆う外套をバサリと翻して不敵な笑みを浮かべる。
そして軽く溜めを作ったあと、
「オレ様はラース。魔王ラースだ。この世の美女を全て手に入れる、その手始めに貴様達を貰いに来た」
高らかにそう宣言した。
そして、
………………
…………沈黙が部屋を支配した。
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