4 / 12
第四話 街を抜け、山の中へ
しおりを挟む
「こんにちわ、私は第一次審査員でケットシーのボンベイです。
さて皆さん、第一次テストは単純に体力の問題です。
冒険者の基本的お仕事、貴重品の輸送だけにしても、ちゃんと歩けないとお話しになりませんからね。
さあ、みなさん、私について歩きましょう。」
黒髪の美少女のケットシー。顔は人間で頭から猫耳が生えている。
すごく感じのいい女の子だった。
街を抜け、山の中へ。
けっこう広い道を歩いていくと、大きな湖が現れた。
「主殿、ここで水を調達してまいりましょう」
鈴木に向かってカラミティが言った。
当然ながら俺たちも水筒は持ってきているが、熱い気候の中、
だいぶ水を飲んで水量が減っている。
道の上にはショッピングモールの看板がある。
そっちに行けば食糧も確保できそうだ。
だが、ボンベイは湖の直前で山側に進路を変えた。
けっこう速足なので、ここで寄り道したら見失う可能性がある。
「だめだ、ここで寄り道したらおいてかれるよ」
俺は鈴木に警告した。
「ああそうか、残念だな。次の機会にしよう」
鈴木はそういうと俺と一緒に歩きだした。
何人か、足に自信のありそうな奴が湖のほうへ向かう。
「うわー!」
「ぎゃー!」
遠くのほうで何か悲鳴が聞こえる。
たぶん、湖に化け物が住んでいたのだろう。
しばらく歩いていると、山の中にポツポツと集落が現れた。
その先に進むと道路は川沿いの道に出た。
白い河原の砂が目にまぶしい。
俺たちは河原に降りて、水を調達しながらボンベイの動きを目で追って、
駆け足で追いついた。
そこで、ほかの連中の何人かも俺たちと同じ行動をとっていた。
大多数の人間は水の補給をしていなかった。
事前に大量の水を持っている者もいる。
フォレデパンと書いた看板が目に入る。
けっこう速足で来たのでへばってきている連中も目立つようになった。
街を出発したのがすでに午後だったので、周囲が薄暗くなってきている。
もしかして、真っ暗な中で夜間行動するのか。
しかし、そうではなかった。
そこからしばらく歩いた場所で、ボンベイは立ち止った。
「皆さん、夜に森の中に入ると危険なので、ここで固まってビバークしましょう。
絶対に勝手に森に入ったりしてはいけませんよ、水を汲みに行ったりするのも朝になってからです。
夜は絶対にここから動かないでくださいね。これは警告ですよ」
そういうと猫耳美少女はニッコリと笑った。
「クソッ、朝まで水飲むなとか馬鹿かよ、そんなの我慢できるわけねーだろ!」
「そう言うなや、森の中に何がいるかもわからねえんだ、初見殺しがあるにちげえねえや」
冒険者たちが勝手なことを話している。
ニャンコが薪を拾い集めてきて、火をつけ、その上に鍋を置き、
その中に水を入れて、上からタオルをかぶせた。
沸騰した水が水蒸気になり、タオルを濡らす。
そのタオルをクチャクチャしがんでニャンコは水分を補給した。
「ああ、水が鉱水かもしれないから安全策だね。さすがニャンコ」
俺がそう言うと、ニャンコは照れて顔を赤らめ頭をかいた。
「えへへへ」
鈴木とカラミティも同じようにしていた。
「そんなまどろっこしいことできるかよ」
俺たちのやってることを嘲笑する奴もいた。
「え~、水~水はいりまへんか~」
背中に水が入ったボトルを何本も担いだキツネが受験者たちの間を練り歩く。
「おい、キツネ、一本くれや」
一人の受験者が声をかける。
「はい、1本金貨一枚」
「はあ?ふざけんな、水が金貨一枚とかなめてんのか」
「嫌ならいいんですよ、飲まなくても」
「くそっ、人の足元みやがって、早くよこせよ!」
受験者がキツネに金貨を投げつける。
「はい、まいどあり~」
キツネは水の入ったボトルを渡す。
そうしてすべてのボトルが売れるとキツネはそのまま夜道を帰っていった。
なんだ、受験者じゃなくて商売かよ。
「私も一本買った~」
笑顔でニャンコが言った。
……って、おい!
「なにやってんだよ」
「まあまあ」
あきれる俺をよそ眼にニャンコはボトルをあける。
クンクン匂いをかぐ。
「ああ、やっぱり」
「何がやっぱりなの」
「これ、ものすごく希釈してあるけど、ゾンビパウダー入ってるわ」
「え? 」
「だって、ここ有名でしょ、ゾンビパウダー。」
「え?! そうなの? 」
「それがなきゃ、わざわざ、こんな南海の島国までくるわけないよ。
マイアミで試験しても全然問題ないわけで」
「うわ~えぐいなあ」
ボトルを買ったほとんどの者はすでに水を飲んでいたが、
俺たちの話を聞いて水を捨てたものもいた。
俺たちは鈴木と一緒に固まって、木陰で寝ることにした。
「う~……う~」
なにかうめき声がする。
はっとして目が覚めた。
目の前の冒険者が俺に向かって歯をむき出してゆっくりと歩いてくる。
顔の色が腐ったような緑色だ。
「おい、みんな起きろ! 」
後ろに気配を感じた。
「そこか! 」
俺は反射的に手に力を込めて後ろから迫ってくる人影をヒノキの棒で殴り倒した。
フワッと白い光が輝いた。
うわっ、またやっちまった。
と思ったら、その人影はボロボロと土くれのように崩れ落ちた。
「へ? 」
俺は気づいた。
ゾンビが浄化したんだ。
アンデットは切っても叩いても、魔法でも死なない。
唯一、浄化すると死ぬ。
「ここが俺のベストプレースじゃん! 」
俺は狂喜した。
「みんな起きろ! ゾンビが襲撃してきたぞ」
俺は次から次へとゾンビたちを殴りたおしていった。
ことごとく砕け散るゾンビたち。
そして、朝になった。
「ふえ~」
試験官のボンベイが生ぬるい声をあげた。
「困ったわねえ、例年だと、ここで大部分が死んじゃうんだけど、
いっぱい生き残っちゃったわね。誰のせいかな~」
そう言ってボンベイがジロリと俺を見た。
「どうもさ~せんした~」
俺は苦笑いをしながら頭をさげた。
でも、初めてモンスターの群れを叩きのめして無双したので気持ちよかった。
さて皆さん、第一次テストは単純に体力の問題です。
冒険者の基本的お仕事、貴重品の輸送だけにしても、ちゃんと歩けないとお話しになりませんからね。
さあ、みなさん、私について歩きましょう。」
黒髪の美少女のケットシー。顔は人間で頭から猫耳が生えている。
すごく感じのいい女の子だった。
街を抜け、山の中へ。
けっこう広い道を歩いていくと、大きな湖が現れた。
「主殿、ここで水を調達してまいりましょう」
鈴木に向かってカラミティが言った。
当然ながら俺たちも水筒は持ってきているが、熱い気候の中、
だいぶ水を飲んで水量が減っている。
道の上にはショッピングモールの看板がある。
そっちに行けば食糧も確保できそうだ。
だが、ボンベイは湖の直前で山側に進路を変えた。
けっこう速足なので、ここで寄り道したら見失う可能性がある。
「だめだ、ここで寄り道したらおいてかれるよ」
俺は鈴木に警告した。
「ああそうか、残念だな。次の機会にしよう」
鈴木はそういうと俺と一緒に歩きだした。
何人か、足に自信のありそうな奴が湖のほうへ向かう。
「うわー!」
「ぎゃー!」
遠くのほうで何か悲鳴が聞こえる。
たぶん、湖に化け物が住んでいたのだろう。
しばらく歩いていると、山の中にポツポツと集落が現れた。
その先に進むと道路は川沿いの道に出た。
白い河原の砂が目にまぶしい。
俺たちは河原に降りて、水を調達しながらボンベイの動きを目で追って、
駆け足で追いついた。
そこで、ほかの連中の何人かも俺たちと同じ行動をとっていた。
大多数の人間は水の補給をしていなかった。
事前に大量の水を持っている者もいる。
フォレデパンと書いた看板が目に入る。
けっこう速足で来たのでへばってきている連中も目立つようになった。
街を出発したのがすでに午後だったので、周囲が薄暗くなってきている。
もしかして、真っ暗な中で夜間行動するのか。
しかし、そうではなかった。
そこからしばらく歩いた場所で、ボンベイは立ち止った。
「皆さん、夜に森の中に入ると危険なので、ここで固まってビバークしましょう。
絶対に勝手に森に入ったりしてはいけませんよ、水を汲みに行ったりするのも朝になってからです。
夜は絶対にここから動かないでくださいね。これは警告ですよ」
そういうと猫耳美少女はニッコリと笑った。
「クソッ、朝まで水飲むなとか馬鹿かよ、そんなの我慢できるわけねーだろ!」
「そう言うなや、森の中に何がいるかもわからねえんだ、初見殺しがあるにちげえねえや」
冒険者たちが勝手なことを話している。
ニャンコが薪を拾い集めてきて、火をつけ、その上に鍋を置き、
その中に水を入れて、上からタオルをかぶせた。
沸騰した水が水蒸気になり、タオルを濡らす。
そのタオルをクチャクチャしがんでニャンコは水分を補給した。
「ああ、水が鉱水かもしれないから安全策だね。さすがニャンコ」
俺がそう言うと、ニャンコは照れて顔を赤らめ頭をかいた。
「えへへへ」
鈴木とカラミティも同じようにしていた。
「そんなまどろっこしいことできるかよ」
俺たちのやってることを嘲笑する奴もいた。
「え~、水~水はいりまへんか~」
背中に水が入ったボトルを何本も担いだキツネが受験者たちの間を練り歩く。
「おい、キツネ、一本くれや」
一人の受験者が声をかける。
「はい、1本金貨一枚」
「はあ?ふざけんな、水が金貨一枚とかなめてんのか」
「嫌ならいいんですよ、飲まなくても」
「くそっ、人の足元みやがって、早くよこせよ!」
受験者がキツネに金貨を投げつける。
「はい、まいどあり~」
キツネは水の入ったボトルを渡す。
そうしてすべてのボトルが売れるとキツネはそのまま夜道を帰っていった。
なんだ、受験者じゃなくて商売かよ。
「私も一本買った~」
笑顔でニャンコが言った。
……って、おい!
「なにやってんだよ」
「まあまあ」
あきれる俺をよそ眼にニャンコはボトルをあける。
クンクン匂いをかぐ。
「ああ、やっぱり」
「何がやっぱりなの」
「これ、ものすごく希釈してあるけど、ゾンビパウダー入ってるわ」
「え? 」
「だって、ここ有名でしょ、ゾンビパウダー。」
「え?! そうなの? 」
「それがなきゃ、わざわざ、こんな南海の島国までくるわけないよ。
マイアミで試験しても全然問題ないわけで」
「うわ~えぐいなあ」
ボトルを買ったほとんどの者はすでに水を飲んでいたが、
俺たちの話を聞いて水を捨てたものもいた。
俺たちは鈴木と一緒に固まって、木陰で寝ることにした。
「う~……う~」
なにかうめき声がする。
はっとして目が覚めた。
目の前の冒険者が俺に向かって歯をむき出してゆっくりと歩いてくる。
顔の色が腐ったような緑色だ。
「おい、みんな起きろ! 」
後ろに気配を感じた。
「そこか! 」
俺は反射的に手に力を込めて後ろから迫ってくる人影をヒノキの棒で殴り倒した。
フワッと白い光が輝いた。
うわっ、またやっちまった。
と思ったら、その人影はボロボロと土くれのように崩れ落ちた。
「へ? 」
俺は気づいた。
ゾンビが浄化したんだ。
アンデットは切っても叩いても、魔法でも死なない。
唯一、浄化すると死ぬ。
「ここが俺のベストプレースじゃん! 」
俺は狂喜した。
「みんな起きろ! ゾンビが襲撃してきたぞ」
俺は次から次へとゾンビたちを殴りたおしていった。
ことごとく砕け散るゾンビたち。
そして、朝になった。
「ふえ~」
試験官のボンベイが生ぬるい声をあげた。
「困ったわねえ、例年だと、ここで大部分が死んじゃうんだけど、
いっぱい生き残っちゃったわね。誰のせいかな~」
そう言ってボンベイがジロリと俺を見た。
「どうもさ~せんした~」
俺は苦笑いをしながら頭をさげた。
でも、初めてモンスターの群れを叩きのめして無双したので気持ちよかった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる