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九話 ドーベルマン犬の顔の紳士
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「ふぉっふぉっふぉ、こりゃまた派手にやったもんじゃわい」
俺たちの頭の上で声がした。
見上げると、大きな鷹に両肩をつかまれた背広を着たドーベルマン犬の顔をした紳士が上から見下ろしていた。
鷹は足を離す。
ドーベルマン犬の顔をした紳士は、ストンと地面に降り立つ。
鷹の上からドブネズミが顔を出す。
「今回は緊急チャーター便だから高くつくぜ」
「此度は急ぎの用だったからしかたない。本部に請求しといてくれ。あと、受験生を運ぶ
船も用意しといてくれ。今年の受験生は危険じゃ、隔離試験に変更する」
「まかしときな、物流は俺たちのネズミの本職だ。もし金が足りなくなったら金も貸してやるぜ」
「ははは、ネズミから金を借りたら目玉の水晶体までもっていかれるからやめておくよ」
「これは人聞きが悪い。俺たちネズミはいつも被害者なんだぜ。善良な被害者さ。
それじゃ、船の手配をするか」
そう言って鷹に乗ったネズミは去っていった。
「さて」
ドーベルマン犬の顔の紳士は俺たちを見た。
顎から白いひげが生えていて、口元にもひげを蓄えている。
ふっとドーベルマン犬のおじいさんの後ろに石虎が現れる。
石虎はコブシを振り上げ、思いっきり、ドーベルマンの後頭部にコブシを打ち込む。
ドーベルマンは素早く振り返り、右手でコブシを受け止める。
「おやおや君、メテオクライシスとは穏やかではないね。ワシが相手でなければ、
ここにいる全員がチリになっちまうとこだぞ」
「お前とこの黒猫が体に打ち込んできた。だから返した」
「そうかい、そりゃ失礼をした。もうしわけない」
ドーベルマンは深々と頭をさげた。
「いえいえ、どういたしまして」
石虎も頭をさげた。
それで石虎はおとなしくなった。
ドーベルマンは俺たちの方に向きなおった。
「おやおや、坊ちゃん。あなたのおじい様の弟子のドーベルマンですよ」
そう言ってドーベルマンは柔和に笑った。
「え、そうなんですか?」
「ええ、今では一応、冒険者協会の会長を任されております。
まあ、あなたのおじい様がオーナーなんですけどね。
おじい様は根っからの冒険者で、ひとところにじっとしているのが苦手だそうで、
この番犬めに雑用係をお任せになったのです。
アメショーが失態をしでかしたと伝書鳩で知らせがとどき、至急鷹を飛ばしてこちらまで来ました。
いつもはロス・アンジェリスにおります」
「そうなんですね」
「今回の受験生はざっと見ただけで、かなりのツワモノが多そうなので、
試験会場を隔離した場所に移します。すぐにネズミの船が着ますので、みなさん、そちらに
移動してください」
「船って、ネズミが所有しているんですね」
「ネズミは各所で迫害されていて、物品の販売マーケットから排除されている場合が
多いのでね、だから物を作って売るのではなく、物を運んだり、芸能をやったり、演劇をかいたり、
歌を歌ったり、金を貸したりして、生産にかかわらない職業についている者が多いんですよ。
いろいろと勉強しており、国の官僚になっている者も多い。立派な連中です」
「そうなんですね」
「ええ、それではみなさん、私についてきてくださいね」
「待ちな、じいさん、これだけ迷惑かけといて、何も無しじゃすまされないぞ、
落とし前つけてもらおうじゃねえか」
一人の受験者がドーベルマンにすごんだ。
「そうですか、じゃあ、どれくらいの落とし前がいいですか、これくらいかな? 」
ドーベルマンはにこやかに笑いながら男にコブシを見せた。
「ふざけんじゃねえ」
男はドーベルマンに襲い掛かる。
ドーン!
男の目の前に直径1メートル、全長10メートルくらいの火柱があがる。
「ひ、ひい!」
男は腰を抜かす。
「よかったわね、命拾いして。あのまま突っ込んでたら、あなた確実に殺されてたわよ」
男の前にライラが現れた。
「相手の強さも計れないようじゃ、あなたには冒険者は無理よ」
ライラはそう言って腰を抜かしてガタガタ震えている男に近づく。
「た、たすけて、殺さないでくれ」
男は涙目で懇願する。
「そうやって、目に見える力だけに怯えてぇ」
ライラは呆れたように男を見下す。
「あの犬のじいさんは私なんかより百倍は怖いのよ。それを知っておくことね。
あ、このプレートもらっとくね、いい? 」
「かまいませんから、どうか殺さないで」
「いいわ、殺さないと約束してあげる」
そう言いながらライラは男のプレートをはずして、自分の首輪につける。
カチャ
音がして首輪がはずれた。
「今回のテストは無効になったから、係員に言えばはずしてもらえたのに」
俺がそういうとライラはニヤリと笑った。
「だってさ、自分の実力ではずせなきゃ、今後もないじゃん」
ライラは俺のほうを向き、男に背を向けた。
男が懐からナイフを取り出してライラに向けて振りかぶる。
ジュッ
ナイフが一瞬で溶けて手にへばりつく。
「ぎゃああああああー! 熱い! 熱い! 熱い! 」
男はころがりまわる。
「運がよかったわねえ、殺さないって約束してなかったら、
今ごろお前、黒焦げの炭になってたわよ」
冷ややかにそう言い終わるとライラはドーベルマンの後ろについていった。
俺たちもドーベルマンのあとについていった。
浜辺の港まで行くと、すでにネズミが大きな船を用意していた。
俺たちはその船に乗り、つぎの目的地に移動した。
俺たちの頭の上で声がした。
見上げると、大きな鷹に両肩をつかまれた背広を着たドーベルマン犬の顔をした紳士が上から見下ろしていた。
鷹は足を離す。
ドーベルマン犬の顔をした紳士は、ストンと地面に降り立つ。
鷹の上からドブネズミが顔を出す。
「今回は緊急チャーター便だから高くつくぜ」
「此度は急ぎの用だったからしかたない。本部に請求しといてくれ。あと、受験生を運ぶ
船も用意しといてくれ。今年の受験生は危険じゃ、隔離試験に変更する」
「まかしときな、物流は俺たちのネズミの本職だ。もし金が足りなくなったら金も貸してやるぜ」
「ははは、ネズミから金を借りたら目玉の水晶体までもっていかれるからやめておくよ」
「これは人聞きが悪い。俺たちネズミはいつも被害者なんだぜ。善良な被害者さ。
それじゃ、船の手配をするか」
そう言って鷹に乗ったネズミは去っていった。
「さて」
ドーベルマン犬の顔の紳士は俺たちを見た。
顎から白いひげが生えていて、口元にもひげを蓄えている。
ふっとドーベルマン犬のおじいさんの後ろに石虎が現れる。
石虎はコブシを振り上げ、思いっきり、ドーベルマンの後頭部にコブシを打ち込む。
ドーベルマンは素早く振り返り、右手でコブシを受け止める。
「おやおや君、メテオクライシスとは穏やかではないね。ワシが相手でなければ、
ここにいる全員がチリになっちまうとこだぞ」
「お前とこの黒猫が体に打ち込んできた。だから返した」
「そうかい、そりゃ失礼をした。もうしわけない」
ドーベルマンは深々と頭をさげた。
「いえいえ、どういたしまして」
石虎も頭をさげた。
それで石虎はおとなしくなった。
ドーベルマンは俺たちの方に向きなおった。
「おやおや、坊ちゃん。あなたのおじい様の弟子のドーベルマンですよ」
そう言ってドーベルマンは柔和に笑った。
「え、そうなんですか?」
「ええ、今では一応、冒険者協会の会長を任されております。
まあ、あなたのおじい様がオーナーなんですけどね。
おじい様は根っからの冒険者で、ひとところにじっとしているのが苦手だそうで、
この番犬めに雑用係をお任せになったのです。
アメショーが失態をしでかしたと伝書鳩で知らせがとどき、至急鷹を飛ばしてこちらまで来ました。
いつもはロス・アンジェリスにおります」
「そうなんですね」
「今回の受験生はざっと見ただけで、かなりのツワモノが多そうなので、
試験会場を隔離した場所に移します。すぐにネズミの船が着ますので、みなさん、そちらに
移動してください」
「船って、ネズミが所有しているんですね」
「ネズミは各所で迫害されていて、物品の販売マーケットから排除されている場合が
多いのでね、だから物を作って売るのではなく、物を運んだり、芸能をやったり、演劇をかいたり、
歌を歌ったり、金を貸したりして、生産にかかわらない職業についている者が多いんですよ。
いろいろと勉強しており、国の官僚になっている者も多い。立派な連中です」
「そうなんですね」
「ええ、それではみなさん、私についてきてくださいね」
「待ちな、じいさん、これだけ迷惑かけといて、何も無しじゃすまされないぞ、
落とし前つけてもらおうじゃねえか」
一人の受験者がドーベルマンにすごんだ。
「そうですか、じゃあ、どれくらいの落とし前がいいですか、これくらいかな? 」
ドーベルマンはにこやかに笑いながら男にコブシを見せた。
「ふざけんじゃねえ」
男はドーベルマンに襲い掛かる。
ドーン!
男の目の前に直径1メートル、全長10メートルくらいの火柱があがる。
「ひ、ひい!」
男は腰を抜かす。
「よかったわね、命拾いして。あのまま突っ込んでたら、あなた確実に殺されてたわよ」
男の前にライラが現れた。
「相手の強さも計れないようじゃ、あなたには冒険者は無理よ」
ライラはそう言って腰を抜かしてガタガタ震えている男に近づく。
「た、たすけて、殺さないでくれ」
男は涙目で懇願する。
「そうやって、目に見える力だけに怯えてぇ」
ライラは呆れたように男を見下す。
「あの犬のじいさんは私なんかより百倍は怖いのよ。それを知っておくことね。
あ、このプレートもらっとくね、いい? 」
「かまいませんから、どうか殺さないで」
「いいわ、殺さないと約束してあげる」
そう言いながらライラは男のプレートをはずして、自分の首輪につける。
カチャ
音がして首輪がはずれた。
「今回のテストは無効になったから、係員に言えばはずしてもらえたのに」
俺がそういうとライラはニヤリと笑った。
「だってさ、自分の実力ではずせなきゃ、今後もないじゃん」
ライラは俺のほうを向き、男に背を向けた。
男が懐からナイフを取り出してライラに向けて振りかぶる。
ジュッ
ナイフが一瞬で溶けて手にへばりつく。
「ぎゃああああああー! 熱い! 熱い! 熱い! 」
男はころがりまわる。
「運がよかったわねえ、殺さないって約束してなかったら、
今ごろお前、黒焦げの炭になってたわよ」
冷ややかにそう言い終わるとライラはドーベルマンの後ろについていった。
俺たちもドーベルマンのあとについていった。
浜辺の港まで行くと、すでにネズミが大きな船を用意していた。
俺たちはその船に乗り、つぎの目的地に移動した。
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