鬼嫁物語

楠乃小玉

文字の大きさ
25 / 48

二十五話 常識外れ

しおりを挟む
 謀反に失敗した織田信勝は母親に泣きついた。

 信勝の実母は信長の実母でもある。

 涙ながらに懇願する母親の態度に織田信長は屈して信勝を許してしまう。

 これで事が済めばそれでよかったが、信勝は近臣の津々木蔵人とつるんで、
 また信長に謀反を起こそうとしていた。

 すでに勢力は減退しており、謀反を起こしても勝てる見込みはない。

 柴田勝家がその事を諭しても信勝は聞く耳を持たず、むしろ
 勝家を遠ざけた。

 この事に怒った勝家は、信長にそれを密告した。

 信長はそれでも弟の命を助けようと考え、仮病を使って寝所に呼び出し、
 監禁しようとしていたようだが、これは、近臣がやってきた信勝をその場で
 切り殺した。

 また合戦でも始められたらたまったものではない。

 信勝を排除し、尾張の情勢も落ち着いてきたので、
 信長は坂井文助、岡八右衛門・山口太郎兵衛・河野藤蔵などに命令して道をつくらせた。

 信長は津島や熱田のうちで、道や橋を作るのに熟達した者たちを集めたが、
 その中でもそれぞれの得意分野を談合で話合わせ、理解を調整させて
 仕事に金を出した。

 本来、奉行衆は一つの地域に一人のはずであるが、

 信長は、一つの地域に複数の道橋奉行を設置し、談合を行うことで、
 常にもっともその分野が得意な一門衆が仕事を受け持つよう、仕向けたのだ。

 これが談合の始まりである。

 乱世で乱れた世の中、その中において、信長は色々な新しいものを発案した。

 その一つが談合。

 そして、相見互い身である。

 これは武士同士お互い助け合わなければならないという美談のような話ではあるが、
 その実、相互監視でもあった。

 常に近隣の者と意思の疎通をはかり、困ったことはないか聞き、
 そして、謀反を起こす者は密告する。

 柴田勝家はこの制度を作って以来の初めての密告者となった。

 これは織田家独特の村制度であったが、のちに信長の版図が広がるにつれ、
 全土に広がっていった。

 そして治安はよくなったが、近所の者が少し贅沢をすると、あの家は何故あれほど
 金回りがよくなったのかと詮索し、近隣で調べるようにもなった。

 生活は窮屈になったが、押し込み強盗に入られて殺されるよりましだ。

 この制度は信長の近臣にまで徹底され、

 信長の乳母兄弟の池田勝三郎のお気に入りの小者左介が、織田造酒丞の家臣甚兵衛の家に
 盗みに入った時は、自らが切り殺した。

 このため、余計にこの制度は徹底されることとなった。

 戦国の世である。

 多少の盗み、さぼりは日常であり、みのがされているものであった。

 しかし、信長はわずかな盗みすら許さなかった。

 こういう戦国の慣習を無視する信長の態度に、
 口の悪いものは「常識外れ、ウツケ」と言って陰口を叩いていた。

 
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

輿乗(よじょう)の敵 ~ 新史 桶狭間 ~

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 美濃の戦国大名、斎藤道三の娘・帰蝶(きちょう)は、隣国尾張の織田信長に嫁ぐことになった。信長の父・信秀、信長の傅役(もりやく)・平手政秀など、さまざまな人々と出会い、別れ……やがて信長と帰蝶は尾張の国盗りに成功する。しかし、道三は嫡男の義龍に殺され、義龍は「一色」と称して、織田の敵に回る。一方、三河の方からは、駿河の国主・今川義元が、大軍を率いて尾張へと向かって来ていた……。 【登場人物】 帰蝶(きちょう):美濃の戦国大名、斎藤道三の娘。通称、濃姫(のうひめ)。 織田信長:尾張の戦国大名。父・信秀の跡を継いで、尾張を制した。通称、三郎(さぶろう)。 斎藤道三:下剋上(げこくじょう)により美濃の国主にのし上がった男。俗名、利政。 一色義龍:道三の息子。帰蝶の兄。道三を倒して、美濃の国主になる。幕府から、名門「一色家」を名乗る許しを得る。 今川義元:駿河の戦国大名。名門「今川家」の当主であるが、国盗りによって駿河の国主となり、「海道一の弓取り」の異名を持つ。 斯波義銀(しばよしかね):尾張の国主の家系、名門「斯波家」の当主。ただし、実力はなく、形だけの国主として、信長が「臣従」している。 【参考資料】 「国盗り物語」 司馬遼太郎 新潮社 「地図と読む 現代語訳 信長公記」 太田 牛一 (著) 中川太古 (翻訳)  KADOKAWA 東浦町観光協会ホームページ Wikipedia 【表紙画像】 歌川豊宣, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

久遠の海へ ー最期の戦線ー

koto
歴史・時代
ソ連によるポツダム宣言受託拒否。血の滲む思いで降伏を決断した日本は、なおもソ連と戦争を続ける。    1945年8月11日。大日本帝国はポツダム宣言を受託し、無条件降伏を受け入れることとなる。ここに至り、長きに渡る戦争は日本の敗戦という形で終わる形となった。いや、終わるはずだった。  ソ連は日本国のポツダム宣言受託を拒否するという凶行を選び、満州や朝鮮半島、南樺太、千島列島に対し猛攻を続けている。    なおも戦争は続いている一方で、本土では着々と無条件降伏の準備が始められていた。九州から関東、東北に広がる陸軍部隊は戦争継続を訴える一部を除き武装解除が進められている。しかし海軍についてはなおも対ソ戦のため日本海、東シナ海、黄海にて戦争を継続していた。  すなわち、ソ連陣営を除く連合国はポツダム宣言受託を起因とする日本との停戦に合意し、しかしソ連との戦争に支援などは一切行わないという事だ。    この絶望的な状況下において、彼らは本土の降伏後、戦場で散っていった。   本作品に足を運んでいただき?ありがとうございます。 著者のkotoと申します。 応援や感想、更にはアドバイスなど頂けると幸いです。 特に、私は海軍系はまだ知っているのですが、陸軍はさっぱりです。 多々間違える部分があると思います。 どうぞよろしくお願いいたします。 

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

処理中です...