東京ケモミミ学園

楠乃小玉

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第二章 牡丹ろうどう編

十話 貢ぎ物

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 金長は「たぬチャン」というニックネームで順調に仲間を集めていった。

 ファンクラブが出来、軍団が出来、親衛隊長が出来た。

 「ねえ、たぬチャン、たぬチャンは男の子ですか?女の子ですか?」

 チャットが飛んできた。

 「女の子だよ」

 金長は即答した。

 「ダメじゃないですか!オッサンじゃないですか、いまから
 ボクがオッサンだって書きます」

 「なにしとんじゃ、ボケ、そんな事書いたらすべてが台無しになるじゃないか、
 やめろこら」
 
 武と金長が取っ組み合いになる。

 「仲いいな、お前ら、ちょっとジェラシーだ」

 そう言いながら伏見がパソコンの前に行く。

 「はい、送信、ターン!」

 伏見が無慈悲にエンターキーを押す。

 「あー!」
 
 「ははは、これでウソをつき通すしかなくなったな」

 金長は嬉しそうに言った。

 「知りませんよ」

 武は困惑する。

 すぐに返信が来る。
 
 「かわいいですね、これあげます」

 相手から課金アイテムのドレスが送られてくる。

 「だめですよ、受け取っちゃ。お返ししてください」

 「あ、ラッキー!」

 金長はすぐに受け取ってしまった。

 そのあともグループのメンバーに同じものをおねだりして、
 ダブったものを換金しているようだった。

 「おまえはキャバクラ嬢か……」

 武はつぶやいた。

 それでも、「たぬチャン」軍団は順調に数を増やしていった。


 60万人登録者がいるオンラインゲーム内での人気投票で30位に
 入るくらい人気者になっていた。

 幼女を演じる可愛い女子高生たぬチャン。

 自分のプロフィールには、中国で売っているフリー素材の
 美人少女の写真が貼り付けてあった。

 それからしばらくしてからのこと。

 「この国で生まれて超ラッキー」

 京都の観光局がこんなポスターを作ってすごく話題になった。

 そのポスターの女性がすごく美人だというので話題になったのだが、
 同じ画像を渋谷の洋服店が使っていた。

 「うちの服、チョーいけてるんだけどぉ」

 同じ、美人の女の子がピースサインをしている画像。
 
 どちらが盗作かでインターネットが炎上した。
 
 結局、報道によると、その写真は、中国で安く売っている
 フリー素材であり、両方とも悪くないことがわかった。

 チャンチャン。
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