ねこのフレンズ

楠乃小玉

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二十話 ミルフィーユ

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 ドカンちゃんはまずスマホでお花が売っているお店を調べる。
 最初は小さなお花屋さんを回っていたけど、小さなお花屋さんは
 どうしても、よく売れるお花をおいている。
 よく売れるお花は花束と墓花で、お庭に植える植物は少ない。
 そうなるとホームセンターだ。
 ホームセンターの場所を調べながら、もう一人の自分が自分にささやく。
 「もう、どうせねこのフレンズなんて出来ないかもしれないのに、何してるの?」
 ブルブルブル!
 ドカンちゃんは勢いよく頭を横に振った。
 汚い大人になっちゃだめだ。
 汚れた、人を利用して突き落として、自分だけ良い思いをしようなんて、
 人が悲しんでいてもヘラヘラ笑っているような大人になっちゃだめだ。
 
 虚無感、それは大人への階段の一歩なのかもしれない。

 その虚無感を必死に振り払い、ドカンちゃんは前に進む。
 
 たとえ無駄になったっていい、前に進もう!前に!前に!前に!前に!
 
 ここは現実なんだ、物語の世界みたいにいい人ばかりじゃない。
 おぞましい人達が沢山いる。

 そうだ!そんな人達にお人好しのおじいさんやおばあさんが騙されて、
 殺されないために、ボクは頑張って自転車をこいでいるんじゃないか!
 なにを考えているんだ!
 
 そうだ!そうだよ!もしダメでもいいんだ!

 一生懸命今、自分が頑張って、その姿をそのまま小説に書けばいいんだ!

 迷うな!

 ボクが書いたものが多くの人に読まれ、悪徳業者に騙されない人が増えれば、
 それがボクの悪との戦いじゃないか!
 ボクは勇者ドカンなんだ!

 勇気をふりしぼってドカンちゃんは自転車のペダルを踏んだ。
 
 目からポロポロと涙がこぼれた。

 「すごいぞ勇者!私達のヒーロードカンちゃん!」
 自転車の前カゴの中でチカンちゃんが叫んだ。

 コマリホームセンターの前を越えて、和坂を登る。

 途中で疲れて自転車を押す。
 
 川波重工の前を通って、陸橋を渡る。
 
 JR沿いの道をずっと西に進む。
 
 西明石駅前で右折する。

 そこからしばらく行って交差点で左折。
 
 たしかこっちだよなあ。
 
 ドカンちゃんは首をひねる。
 
 いつまでも道が続く、アップダウン、アップダウン、
 いつまでも無限に道が続くような気がしてきた。

 「やばいよドカンちゃん、ここは撤退だ!」
 「だめだ!勇者には撤退は許されない。
 この道で正しいんだ、この道を行こう、行けば分かるさ!」
 ドカンちゃんがそう言うと、
 チカンちゃんも覚悟を決めたように拳を振り上げた。 
 「おー!」
 それでも道は続く。
 どこまでも西に進む。
 もう限界だと思われたとき、向こうに行き止まりがあった。
 「ここでもう西に行けない。これで南に降ってそれでも
 見つからなかったら、お家に帰ろう。
 「一時撤退だね」
 チカンちゃんがいった。
 南に左折して、ずっといくと、そこには国道二号線があった。
 いままでずっと自転車をこいでいても同じ風景ばっかりだったので、
 よく知っている二号線を見つけるとホッとした。
 大久保の駅前に一〇〇円寿司の寿司二郎があった。
 
 ドカンちゃんはちょっとドキドキしながらお店に入った。
 たまごがまわってきた。取った。チカンちゃんと半分こしてたべた。
 甘えびが回ってきた、チカンちゃんと半分こしてたべた。
 「ぜんぶ、半分こだね!このお店は仲良しのためのお店なんだよ!」
 チカンちゃんが言った。
 ドカンちゃんはなんだか嬉しい気分になった。
 そうしているうちに、ミルフィーユが回ってきた。
 「やったーミルフィーユだー!」
 チカンちゃんがピョンピョン跳ねる。
 でもミルフィーユは一個しかない。
 「これで友情がためされるね!」
 チカンちゃんが言った。
 「全部食べていいよ」
 ドカンちゃんた微笑んだ。
 「だめだよ!これは友情がためされているんだよ!
 最初、私が食べるね」
 そう言ってチカンちゃんがミルフィーユをすくう」
 「おいしい、何層にもなったクレープ生地がとろけるみたいでおいしいよ!」
 チカンちゃんがすごく喜ぶ。
 次に遠慮気味にドカンちゃんがとる。
 次にチカンちゃん。
 どんどん取って、最期は、二人でミルフィーユを縦に割って二人同時に口の中に入れた。
 「うんみゃー!友情完成!」
 チカンちゃんか体をクネクネ動かしてそう言った。
 その日は、ホームセンターを見つけられなかったけどチカンちゃんとの友情が
 深まってとってもよかったなとドカンちゃんは思った。
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