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始まり

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「はる、はるは…」
どうしてそんなに私の事を考えてくれるの。私が少しでも苦しまないように。傷つかない様に。柔らかく包む目に見えないフィールドの様に。
「みみ、後で聞くよ。さっ、ご飯食べよう!」
はるくんは、お茶碗に炊飯器からふわふわに真っ白で艶々なご飯をよそぎ始める。
「はっ、はい!」
慌てて立ち上がり、傍に駆け寄り手を出す。
「ありがとう、熱いから気をつけて」
「うん、美味しそ~!!」
思わず口から感嘆の声が溢れ出りつつ、はるくんからほかほかのご飯が入った茶碗を受け取る。机に敷かれているランチョンマットにご飯をそっと音を立てないように並べる。
「さぁ、食べよう」
お盆にお味噌汁が入ったお椀二つとそぼろを入れた入れたものを持ってくる。
「ありがとう」
お椀を受け取る。
お盆を近くに置いてはるくんも席に着く。
「さあ、食べようか!」
にこにこお花が周りに咲くように笑う。
「うん!!」
「頂きます!」
二人で手を合わせて、頂きますと手を合わせる。
お箸で既に置いてあった半熟の目玉焼きの君を上手く救いとってとそぼろをご飯にかけて頬張る。
「みみは高校の時もその食べ方だったんだね」
「はっ」
つい、美味しすぎてガサツな食べ方しちゃった。 
「ごめ···」
「可愛い、よっと!」
ふふと笑ってはるくんも同じように君を上手に救いとってご飯に入れる。
「ふふ。美味しいね、この食べ方」
本当に美味しそうにもぐもぐしてるはるくん。
「うん、はるの作ってくれたご飯全部美味しいよ!」
「ありがとう、早起きしたかいがあった」
少し伏し目がちになりながら嬉しそうに答える。
「うんうん、いいお嫁さんになれるよ!はっ、じゃなくてお婿さんだね」
「お婿さんに貰ってくれる?」
綺麗に箸さばきをし、黙々と食べながら独り言のようにはるくんは言う。
「あ、え····と」
実際もう貰ってるというより、この体の私は貰われてるわけで。
「もう、貰ってるよ!」
私も冷えないうちにご飯を口に運びながらそう答える。
「嬉しい、これからもっと精進するね」
本当に嬉しそうににこやかに笑うはるくん。お椀を持ってる左手には、指輪の痕があってなんとも言えない気持ちになった。
「はる、無理はしないでね」
一週間の我慢とはいえ、普通に考えて結婚してる夫婦ではこんなことはありえない事だ。その状況に戸惑ってるのはきっと私だけではなく、はるくんも楓先輩も両方に違いない。
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