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 王都の夜会で、わたくしは婚約を破棄されました。理由は「その手を見ろ」。蜂に刺された痕だらけの手が、侯爵家の恥だと。 「我が領の果樹園に据えられた箱は、すべて焼き払う」 「では、持ち帰る許可をいただけませんか」 「持っていけ。一匹残らずだ」  ――承知いたしました。一匹残らず、でございますね。  その夜のうちに、四十二の巣箱を運び出しました。  花は、それだけでは実になりません。運ぶものが要るのです。けれどあの方は三年間、一度も果樹園に足を運ばず、木は勝手に実るものだと信じておいででした。  やがて訪ねてきたのは、十年も果樹が実らぬ北の辺境伯。「木ではなく、土でもなく、虫が」——わたくしの言葉を、手帳に書き留めてくださる方でした。  北の丘に緑の粒が実る頃、南の果樹園は花だけを咲かせて秋を迎えます。  異世界養蜂ざまぁ・一話完結。ヒロインの武器は特殊能力ではなく、百年ぶんの帳面です。
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