猫の飼い主

猫の飼い主

5
経済・企業 連載中 長編
「地方の道楽だろ」と笑った連中が、名刺を持って戻ってくる。 「地方の道楽ですよね」 そう言って金を出さずに帰った人間が、何人もいた。 観客一五〇〇人、空席は七割。斜陽の港町の弱小バスケクラブ〈潮見ブルーホエールズ〉は、来季の開幕を待たずに消えかけていた。宝くじで七億円を当てた要実(かなめみのる)は、その金でこのクラブを買い取る。だが金で買えたのは、たった一年の猶予だけ。 派手なスター補強も、魔法もない。武器はひとつ――誰も値段をつけていない価値を見抜く目。戦力外寸前の選手、点を取らないセンター、焼き鳥の屋台、誰も読まなかった地元紙。安く見積もられていたものを、一つずつ数え直していく。 やがて、あの人間たちが、名刺を持って戻ってくる。 数字しか見えない男が、誰も数えなかったものだけで、町ごと黒字にしていく話。
24h.ポイント 555pt
小説 2,471 位 / 230,688件 経済・企業 3 位 / 430件
文字数 5,980 最終更新日 2026.09.02 登録日 2026.09.02
恋愛 完結 短編
 私の結婚は、三百六十五回の夕食で終わります。  仕事しか見ない孫を案じた亡き公爵夫人の遺言は、「妻と同じ食卓を囲み、三百六十五回の夕食を共にすること」。冷血公爵と呼ばれる旦那様と、母の書店を買い戻したい私は、納得ずくで契約結婚を結びました。数え終えた翌朝、預けてある離縁状が受理されます。 「明日が三百六十五回目。あと一度で離縁ですね」 「……そうか」  泣いてしまいそうだったので、笑って言いました。  その翌晩から、旦那様が夕食の席に来なくなりました。  馬車の中でクルミを三粒。医師に止められた夜食。四日目には執事の説明も尽きて――「旦那様は執務室で、夕食を召し上がらない努力をなさっています」。廊下ですれ違えば、お腹は正直に鳴っているのに。パンを勧めても「食事とパンの境界は曖昧だ」と逃げていきます。  それならばと、私は最後の一食を籠に詰め、執務室の扉を叩きました。  異世界恋愛・一話完結。悪役も、ざまぁも、特殊能力もありません。あるのは契約書と、一年ぶんの食卓だけです。
24h.ポイント 2,351pt
小説 529 位 / 230,688件 恋愛 284 位 / 66,540件
文字数 8,827 最終更新日 2026.09.02 登録日 2026.09.02
青春 連載中 長編
 「お前には、無理だ」——まだ走れたのに、夢を途中で諦めさせられた少年は、スポーツ医学の医者として一生を終えた。  目が覚めると、六歳。今度は、誰も夢を止めない家に、生まれ直していた。  前世で叩き込んだ医学で"90分落ちない身体"を設計し、地味で、賢く、誰よりも走り続けるサイドバックとして——今度こそ、世界の頂へ。  サッカーの才能を親に「正しく」見限られ、勉強を強いられてスポーツ医学の道へ進んだ男が、六十八年の生涯を終えて転生する。  武器は二つ。押しつけられた最新医学の知識と、それで設計する"90分間、誰よりも走り続ける身体"。授かった才能ではなく、積み上げた設計で、天才たちに挑む。  治した親友は、いつか宿敵になる。かつて最強だった少女は、別のルートで世界を目指す。そして前世で「諦めろ」と告げた親の言葉は、やがて——。  目指すのは、アジア人がまだ立ったことのない場所。ワールドカップの舞台で世界とフィジカルで殴り合う、世界一のサイドバック。  テーマは、「途中で終わらせない」。
24h.ポイント 484pt
小説 2,837 位 / 230,688件 青春 29 位 / 7,969件
文字数 9,718 最終更新日 2026.09.02 登録日 2026.09.02
青春 連載中 長編
 スピードF。瞬発F。技術G。  片瀬湊、十七歳。物心ついた頃から自分にだけ見える「ステータス画面」は、ずっとこの色だった。  ただし、二項目だけおかしい。持久と回復——こいつらだけ、十年間、伸びが一度も落ちていない。  そんな俺が見つけてしまった。二千メートルを予選・準決・決勝と三日連続で走り、月二回、オフなしで開催される競技。タイムじゃなく着順で決まる、相対値の勝負。  ……おい。これ、回復がそのまま年収になる競技じゃないか。  日本競輪選手養成所、適性試験枠。自転車未経験、記録会ドベ、ヘルメットは最弱の青。同期には十年に一人の天才。武器は、自分だけの観測データと実験ノートと、白米。  数字は残酷だ。でも、嘘はつかない。最弱の候補生が、観測と実験で強くなる。目標、年収二億。  ——競輪は、最後まで踏んでた奴が勝つ。 ※実在の制度・施設を取材に基づいて描くフィクションです。実在の選手・団体は登場しません。
24h.ポイント 484pt
小説 2,837 位 / 230,688件 青春 29 位 / 7,969件
文字数 8,662 最終更新日 2026.09.02 登録日 2026.09.02
恋愛 完結 短編
 王都の夜会で、わたくしは婚約を破棄されました。理由は「その手を見ろ」。蜂に刺された痕だらけの手が、侯爵家の恥だと。 「我が領の果樹園に据えられた箱は、すべて焼き払う」 「では、持ち帰る許可をいただけませんか」 「持っていけ。一匹残らずだ」  ――承知いたしました。一匹残らず、でございますね。  その夜のうちに、四十二の巣箱を運び出しました。  花は、それだけでは実になりません。運ぶものが要るのです。けれどあの方は三年間、一度も果樹園に足を運ばず、木は勝手に実るものだと信じておいででした。  やがて訪ねてきたのは、十年も果樹が実らぬ北の辺境伯。「木ではなく、土でもなく、虫が」——わたくしの言葉を、手帳に書き留めてくださる方でした。  北の丘に緑の粒が実る頃、南の果樹園は花だけを咲かせて秋を迎えます。  異世界養蜂ざまぁ・一話完結。ヒロインの武器は特殊能力ではなく、百年ぶんの帳面です。
24h.ポイント 7,802pt
小説 151 位 / 230,688件 恋愛 90 位 / 66,540件
文字数 10,817 最終更新日 2026.09.01 登録日 2026.09.01
5