5 / 14
5
しおりを挟む
「やれやれ。」
閉じたボス部屋の扉を見ながら、ザックの話を思い返す。
新しい高難度のダンジョンか。攻略中で経験値はおいしい、と。
普段着の違和感から予想した通り、ジムさん達は皇国関係者で間違い
なさそうだな。
レベル120超えの見知らぬパーティ、どこから来たのかと思っては
いたが、きっとレベルが99でカンストしたまま、新ダンジョンを
攻略中に、ここのボス戦で限界突破した連中のことを知ったんだろう。
で、ここでボス戦して限界突破したら溜まっていた経験値でレベルが
急上昇した、と。多分そんなところだろう。
番人討伐にこだわる理由がよくわからないが、ああも無知のまま
挑戦しようとしている理由は、ここでのナビゲータ妖精の情報がどれ
ほど役に立つのかを理解できていないせいに違いない。
ここでレベルを上げていった奴らなら、要所要所で現れるナビゲータ
妖精の情報がどれほど的確か知っているはずだからな。
もしも彼らの目的が番人討伐というよりは、新ダンジョンの攻略だ
というのであれば、急いでレベルを200以上にする必要もない。
新ダンジョンで順当に経験値を稼ぎながら攻略すればいいんだから。
新ダンジョンで討伐者が攻略を始めたとかなら焦り始めるだろうが、
ザックの話を聞く限りそんなこともなさそうだ。
大体あの変わり者の異常者たちだ。よほどのことがなければ真面目に
ダンジョン攻略なんてするはずもないからなー。
金貨10万枚につられる討伐者なんて、ボクくらいじゃないか?
自分で言っておいて、なんとも言えない気分になるが、事実だ。
となると、ステータス宝珠を大量に売り付けるのもなしか?
ここのボスを瞬殺して見せた後、新ダンジョンのことを聞いてみよう。
新ダンジョン攻略が目的なら、そこでお別れだな。
未知のダンジョンを攻略かぁ。面白そうではあるんだが。
シオンとならそこそこいいところまでは行けそうだが、実入りは少な
そうだし、報奨金は競争だから安全マージンを取ってゆっくり攻略と
いうわけにもいかない。攻略者全員に10万枚、のわけないよな?
向こうのエリア探索で稼いでいるし、シオンに持たせる予定の持参金
だってそれなりに用意できている。無理する必要は全然ない。
うん、やっぱり行くのはなしだな。
とりとめのないことを考えていたら、ザックたちも終わったようだ。
後続待ちについていたパーティに軽く手を挙げてボス部屋に入る。
さて、どうするか。
魔力盾を数枚展開しながら、取り巻きの雑魚をどうするか考えて
なかったことに気づいた。
今日の取り巻きは、左右6体ずつか。
まだ距離があるから動き出していないな。
取り巻きは魔力矢で一掃するか。
取り巻きは別にオーバーキルでも構わんが、問題はボスだ。
番人初討伐の頃、全力の爆裂魔法1発では瞬殺出来なかったが、
追撃は火球弾程度で済んだんだから、今なら2割程度の爆裂魔法
で行けるかな?
よし、その線で行ってみよう。
当たり前だが、今更詠唱なんてしない。
取り巻き用の魔力矢12発と、2割程の魔力で構成した爆裂魔法
の魔法陣を展開する。ボクの方式だと魔法陣は砲塔みたいなもんだ。
実は内心で、こうやって複数の魔法陣を周囲に展開して敵に対峙する
のが、なかなかカッコいいと思っている。
魔力矢なら数千は展開できるから、さぞかし壮観だろう。
そういや、シオンを連れて番人討伐した時は、最大出力の爆裂魔法
を10数個一気に叩き込んだんだったか。出来たでっかいクレーターと
押し寄せる熱気が引かないせいで、シオンにこっぴどく怒られたな。
『クロウもダンジョン壊さないようにね。』
そんなことを考えながら、一気に前進して攻撃を叩き込む。
雑魚は予定通り爆散、ボスは...うん瞬殺だな。戻ろう。
ボス部屋の転移陣で一旦外に出る。
転移石で50階層のセーフティエリアへ。
ここでちょっと考えをまとめよう。ついでに早めの昼飯も。
想定通り、知力2000数百相当での爆裂魔法でボスは瞬殺できた。
当時の知力2000相当では瞬殺出来なかったが、今ならどうだろう。
レベルは20近く上がっているし、レベル補正が効くかな?
次は知力2000相当でやってみよう。2割弱か。加減が難しいな。
初回の番人討伐は、あやつがいたから正確なところはなんとも言え
ないが、爆裂魔法を数十発は叩き込んだ記憶はある。
あの頃は爆裂魔法の並行起動はせいぜい5発だったし、長期戦だったから
一撃は爆裂魔法2-3発だった。
シオンの時は知力6000を超えていたから、10数発でオーバーキルに
なったことから考えると、知力上昇による威力増大が比例だと仮定して、
知力2000で50-60発を連続で叩き込めれば、討伐は可能だろうが、
番人はダンジョン産だ。戦闘中の回復が無視できない。
この試練のダンジョンには2種類の魔物が存在する。
ダンジョン産、つまりダンジョンが産み出す魔物と、ダンジョンが召喚
したのか、フィールドエリアに住み着いて増えている、外にもいるような
普通の魔物の2種類だ。
ダンジョン産はドロップが残るだけで、死体は消える。
素材とかは取れないんだが、後始末に時間をかけずに済むから、
ある意味探索の効率はいい。
ダンジョン産の魔物が厄介なのは、戦闘中に回復することと、
戦闘が長引いた場合に終盤でいきなり強くなったりする、いわゆる狂化だ。
番人の場合は狂化はブレスの威力倍増だな。
いかんせん、番人戦は例が少ないせいで、戦闘中の回復についての
情報は無いに等しい。
うかつなことは言えないか。
ここまで考えて、はたと気づいた。
ボクがジムさん達の番人討伐戦術を考える必要ってないじゃないか!
よし、依頼のことだけ考えよう。
知力2000数百相当での爆裂魔法でOKなことは確認できた。
次はレベル補正の確認として、知力2000相当の爆裂魔法を叩き
込んでみよう。その次は...どうしよう。それ以上は不要か?
うーん。
あ!思いついた。
今のボクは知力12000を超えている。
向こうのエリアのドロップ率の高さと、シオンのドロップ運のおかげで、
探索毎に20個近いステータス宝珠を手に入れられるおかげだ。
ギルドに売りに出す1-2個以外は、シオンと山分けしている。
つまり、1回の探索で二人ともステータスが50近く上がるわけで、
10近いレベルアップをしているようなものだ。
ボクもシオンも、力はあまり上げていないが、500はある。
普通の戦士系のレベル100相当といっていい。
知力、俊敏、器用、体力は二人とも1000超えだ。
普通にレベルアップしているとしたら、職に関係するステータスが
レベル毎に平均5、それ以外は1上がる程度だから、複数の職で
レベル200相当になっている計算になる。
斥候職のシオンは俊敏と器用を中心に上げていて、今は
1000後半くらいだったか。
補助魔法と支援魔法を中心に魔法も教え込んであるので、ある意味で
万能かつ高位の後衛職といえる。
姉さんからも体術は叩き込まれているし、近接戦闘もこなせなくは
ないが、使う武器がちょっと特殊で、アラクネの糸に鋼糸を混ぜた鞭?
というか紐だ。場合に合わせて鏢や錘をつけている。
完全に姉さんの影響だな。
基本的には中距離戦。
防具はダンジョン産のいいものではあるんだが、斥候職向けのものを
身に着けているせいで、防御性能はそれほど高くない。
さっき魔法鎧をかけてしまったのもそのせいだ。
もちろんシオン自身がかけられるし、魔法盾だって張れるんだが、
ついついおせっかいを焼いてしまう。
ありゃ、また思考がそれた。
思いついたのは、最大威力の魔力矢だ。
上位の誘導矢もありだが、あれは威力的には魔力矢の2倍強で
今回のように直線的に攻撃を叩き込む場合にはコスト的に見合わない。
あれの真価は発動時に軌道を操作できるという点だ。
とんでもない曲射もできるから、極端な話城門前から裏の閂を狙える。
使いどころを間違えなければ、非常に優秀な中級魔法なんだが。
魔力矢は、威力は爆裂魔法の100分の1以下だが、初級魔法なので
ボクなら2000や3000は楽に並行起動できる。
最大威力の魔力矢を連続で叩き込んで、何発位でボスが沈むか
試してみよう。多分2,30発で行けるだろうが、爆裂魔法より威力
増強の限界値が低いから、もっと必要かもしれない。
2回分の予定を立てて、飯を平らげたボクは最下層へと向かった。
閉じたボス部屋の扉を見ながら、ザックの話を思い返す。
新しい高難度のダンジョンか。攻略中で経験値はおいしい、と。
普段着の違和感から予想した通り、ジムさん達は皇国関係者で間違い
なさそうだな。
レベル120超えの見知らぬパーティ、どこから来たのかと思っては
いたが、きっとレベルが99でカンストしたまま、新ダンジョンを
攻略中に、ここのボス戦で限界突破した連中のことを知ったんだろう。
で、ここでボス戦して限界突破したら溜まっていた経験値でレベルが
急上昇した、と。多分そんなところだろう。
番人討伐にこだわる理由がよくわからないが、ああも無知のまま
挑戦しようとしている理由は、ここでのナビゲータ妖精の情報がどれ
ほど役に立つのかを理解できていないせいに違いない。
ここでレベルを上げていった奴らなら、要所要所で現れるナビゲータ
妖精の情報がどれほど的確か知っているはずだからな。
もしも彼らの目的が番人討伐というよりは、新ダンジョンの攻略だ
というのであれば、急いでレベルを200以上にする必要もない。
新ダンジョンで順当に経験値を稼ぎながら攻略すればいいんだから。
新ダンジョンで討伐者が攻略を始めたとかなら焦り始めるだろうが、
ザックの話を聞く限りそんなこともなさそうだ。
大体あの変わり者の異常者たちだ。よほどのことがなければ真面目に
ダンジョン攻略なんてするはずもないからなー。
金貨10万枚につられる討伐者なんて、ボクくらいじゃないか?
自分で言っておいて、なんとも言えない気分になるが、事実だ。
となると、ステータス宝珠を大量に売り付けるのもなしか?
ここのボスを瞬殺して見せた後、新ダンジョンのことを聞いてみよう。
新ダンジョン攻略が目的なら、そこでお別れだな。
未知のダンジョンを攻略かぁ。面白そうではあるんだが。
シオンとならそこそこいいところまでは行けそうだが、実入りは少な
そうだし、報奨金は競争だから安全マージンを取ってゆっくり攻略と
いうわけにもいかない。攻略者全員に10万枚、のわけないよな?
向こうのエリア探索で稼いでいるし、シオンに持たせる予定の持参金
だってそれなりに用意できている。無理する必要は全然ない。
うん、やっぱり行くのはなしだな。
とりとめのないことを考えていたら、ザックたちも終わったようだ。
後続待ちについていたパーティに軽く手を挙げてボス部屋に入る。
さて、どうするか。
魔力盾を数枚展開しながら、取り巻きの雑魚をどうするか考えて
なかったことに気づいた。
今日の取り巻きは、左右6体ずつか。
まだ距離があるから動き出していないな。
取り巻きは魔力矢で一掃するか。
取り巻きは別にオーバーキルでも構わんが、問題はボスだ。
番人初討伐の頃、全力の爆裂魔法1発では瞬殺出来なかったが、
追撃は火球弾程度で済んだんだから、今なら2割程度の爆裂魔法
で行けるかな?
よし、その線で行ってみよう。
当たり前だが、今更詠唱なんてしない。
取り巻き用の魔力矢12発と、2割程の魔力で構成した爆裂魔法
の魔法陣を展開する。ボクの方式だと魔法陣は砲塔みたいなもんだ。
実は内心で、こうやって複数の魔法陣を周囲に展開して敵に対峙する
のが、なかなかカッコいいと思っている。
魔力矢なら数千は展開できるから、さぞかし壮観だろう。
そういや、シオンを連れて番人討伐した時は、最大出力の爆裂魔法
を10数個一気に叩き込んだんだったか。出来たでっかいクレーターと
押し寄せる熱気が引かないせいで、シオンにこっぴどく怒られたな。
『クロウもダンジョン壊さないようにね。』
そんなことを考えながら、一気に前進して攻撃を叩き込む。
雑魚は予定通り爆散、ボスは...うん瞬殺だな。戻ろう。
ボス部屋の転移陣で一旦外に出る。
転移石で50階層のセーフティエリアへ。
ここでちょっと考えをまとめよう。ついでに早めの昼飯も。
想定通り、知力2000数百相当での爆裂魔法でボスは瞬殺できた。
当時の知力2000相当では瞬殺出来なかったが、今ならどうだろう。
レベルは20近く上がっているし、レベル補正が効くかな?
次は知力2000相当でやってみよう。2割弱か。加減が難しいな。
初回の番人討伐は、あやつがいたから正確なところはなんとも言え
ないが、爆裂魔法を数十発は叩き込んだ記憶はある。
あの頃は爆裂魔法の並行起動はせいぜい5発だったし、長期戦だったから
一撃は爆裂魔法2-3発だった。
シオンの時は知力6000を超えていたから、10数発でオーバーキルに
なったことから考えると、知力上昇による威力増大が比例だと仮定して、
知力2000で50-60発を連続で叩き込めれば、討伐は可能だろうが、
番人はダンジョン産だ。戦闘中の回復が無視できない。
この試練のダンジョンには2種類の魔物が存在する。
ダンジョン産、つまりダンジョンが産み出す魔物と、ダンジョンが召喚
したのか、フィールドエリアに住み着いて増えている、外にもいるような
普通の魔物の2種類だ。
ダンジョン産はドロップが残るだけで、死体は消える。
素材とかは取れないんだが、後始末に時間をかけずに済むから、
ある意味探索の効率はいい。
ダンジョン産の魔物が厄介なのは、戦闘中に回復することと、
戦闘が長引いた場合に終盤でいきなり強くなったりする、いわゆる狂化だ。
番人の場合は狂化はブレスの威力倍増だな。
いかんせん、番人戦は例が少ないせいで、戦闘中の回復についての
情報は無いに等しい。
うかつなことは言えないか。
ここまで考えて、はたと気づいた。
ボクがジムさん達の番人討伐戦術を考える必要ってないじゃないか!
よし、依頼のことだけ考えよう。
知力2000数百相当での爆裂魔法でOKなことは確認できた。
次はレベル補正の確認として、知力2000相当の爆裂魔法を叩き
込んでみよう。その次は...どうしよう。それ以上は不要か?
うーん。
あ!思いついた。
今のボクは知力12000を超えている。
向こうのエリアのドロップ率の高さと、シオンのドロップ運のおかげで、
探索毎に20個近いステータス宝珠を手に入れられるおかげだ。
ギルドに売りに出す1-2個以外は、シオンと山分けしている。
つまり、1回の探索で二人ともステータスが50近く上がるわけで、
10近いレベルアップをしているようなものだ。
ボクもシオンも、力はあまり上げていないが、500はある。
普通の戦士系のレベル100相当といっていい。
知力、俊敏、器用、体力は二人とも1000超えだ。
普通にレベルアップしているとしたら、職に関係するステータスが
レベル毎に平均5、それ以外は1上がる程度だから、複数の職で
レベル200相当になっている計算になる。
斥候職のシオンは俊敏と器用を中心に上げていて、今は
1000後半くらいだったか。
補助魔法と支援魔法を中心に魔法も教え込んであるので、ある意味で
万能かつ高位の後衛職といえる。
姉さんからも体術は叩き込まれているし、近接戦闘もこなせなくは
ないが、使う武器がちょっと特殊で、アラクネの糸に鋼糸を混ぜた鞭?
というか紐だ。場合に合わせて鏢や錘をつけている。
完全に姉さんの影響だな。
基本的には中距離戦。
防具はダンジョン産のいいものではあるんだが、斥候職向けのものを
身に着けているせいで、防御性能はそれほど高くない。
さっき魔法鎧をかけてしまったのもそのせいだ。
もちろんシオン自身がかけられるし、魔法盾だって張れるんだが、
ついついおせっかいを焼いてしまう。
ありゃ、また思考がそれた。
思いついたのは、最大威力の魔力矢だ。
上位の誘導矢もありだが、あれは威力的には魔力矢の2倍強で
今回のように直線的に攻撃を叩き込む場合にはコスト的に見合わない。
あれの真価は発動時に軌道を操作できるという点だ。
とんでもない曲射もできるから、極端な話城門前から裏の閂を狙える。
使いどころを間違えなければ、非常に優秀な中級魔法なんだが。
魔力矢は、威力は爆裂魔法の100分の1以下だが、初級魔法なので
ボクなら2000や3000は楽に並行起動できる。
最大威力の魔力矢を連続で叩き込んで、何発位でボスが沈むか
試してみよう。多分2,30発で行けるだろうが、爆裂魔法より威力
増強の限界値が低いから、もっと必要かもしれない。
2回分の予定を立てて、飯を平らげたボクは最下層へと向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる