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シュークリーム
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「じゃあ、いっせーのでやめにしませんか?」
「ふふっ、敬語ってそういうものですか?」
と俺が笑うと
「嫌ですか?」
と俺の顔を伺うように覗き込んでくる。
「いや、嫌なんじゃなくて、俺がすぐにリュウさんに対して、敬語を使うのをやめられる気がしなくて。本当、俺よりも断然、凄い人ですから」
俺と比べるのも、おこがましい気がしてきた。
「それ、まじで言ってくれてますねっ!あははっ、超嬉しいっすわあ!」
と俺の言葉に驚いたような表情を見せてから、ルンルンで飛び跳ねている。そんなに喜ぶことか?とも思ったが、ただリュウさんが感情豊かなのかと思えば、腑に落ちた。
「ふふっ、そんなに喜んでくれると、こっちまで嬉しくなりますね」
「だって、僕の年齢とか学歴とかで、下に見てんだろうって、馬鹿にしてんだろうって思って」
「そんなわけない、ありえないっすよ⁉」
「良いんすよ、実際に僕のが下なんすから」
と俺があんなに心から否定してんのに、彼は懐疑的で諦めたように笑う。
「俺はリュウさんとまだ知り合って間もないですけど、俺が困ってたときに話しかけてくれて、めっちゃ救われましたし、嬉しかったですし、うまく話せないですけど、色々と気遣ってくださって、本当に、ありがとうございます。俺にはリュウさんみたいなことできないですから、まじで凄いなって、ほんと、尊敬してるんです」
伝えたい感情がたくさんあって、でも、それを言葉にすると、全然うまく伝えられなくて、すげえもどかしい。何で俺はこんなにも不器用なんだろう。
「じゃあ、僕がテンさんに対して、呼び捨てで呼んだり、タメ口を使ったりしても良いんですか?」
「もちろんです、というより俺はその方が気楽っすね」
クズ人間に敬語は身に余りすぎるから、クレームの怒鳴り声が、ちょうどいい。自分の立場を見誤らなくて済むから、人間として扱ってくれなくていいから、そしたら、すんなりと死を受け入れられる。
「ほんと、尊敬するっすよ。そうやって、相手をレッテルや見た目で判断しないところ。タメ口なんて聞けませんわ」
なんて彼は俺のことを称えてくれる。俺はきっと明日にはその期待を裏切るだろう。貴方が尊敬したこの人間は、仕事も家事も自分のことですらままならないクズ人間だったと。失望するだろう。ごめんなさい。俺はそんな綺麗な立ち位置には立てない。
「何だか恐縮ですね。俺が誰かに尊敬されるなんて、天変地異でも起きたんですかね?」
恐ろしくて身が縮みそうだ。何だか、死ぬよりも恐ろしいことが起こる予感がした。
「ええーっ、信じてくださいよお」
距離を縮めるようにリュウさんが俺の肩に手を置いた。
「ええ、信じてますよ。ただ、リュウさんが思っている以上に、俺はクズ人間ですよ」
「え?」
ほら、この発言だって、俺がクズ人間だからできたことだ。リュウさんの表情が固まる。そんなことは言う前から想像ついていたから。でも俺に変な期待を持ち続けることは、俺がそれを裏切ったときの失望が大きくなり続けていることに等しい。これも保身的な考えだけれども、どーせ傷を付けるのならば、浅い傷がいい。表面上は誰でも綺麗に装える。だから人間は、知れば知るほど嫌いになる。俺の虚像じゃなくて、等身大のクズ人間の俺を見て欲しい。
「あっ、コンビニに着きましたね。何買いますか?」
俺は、もちろん、酒だ。明日の仕事もできる気はしないが、酒を飲みたかった。彼は食後のデザートと言って、シュークリームを手に取っていた。遠慮したのに、俺の分と二つ買っていた。
「食べてみてください、僕のお気に入りなんですよ」
ただただ甘かった。その甘さを食感で誤魔化すために、またかぶりつく。
「ん、美味しいですね」
「お口に合ったようで良かったです。けど、酒のツマミになる方が良かったですかね?」
十九歳だから、まだ飲めないと言われても、彼の言動が大人びているせいか、あまり信じがたかった。でも、デザートにシュークリームを選ぶところは可愛げがあった。
「これは、眠るためのお酒なんで大丈夫ですよ」
「寝酒ってあんまり良くないって聞きますけど」
「心配してくれるんですか?」
「はい、とっても心配ですよ」
満天の星空の下、コンビニの明かりに背中を照らされて、シュークリームを二人で食べて、談笑する。よく分からないが、夢のような時間だと感覚的に分かった。
「ふふっ、敬語ってそういうものですか?」
と俺が笑うと
「嫌ですか?」
と俺の顔を伺うように覗き込んでくる。
「いや、嫌なんじゃなくて、俺がすぐにリュウさんに対して、敬語を使うのをやめられる気がしなくて。本当、俺よりも断然、凄い人ですから」
俺と比べるのも、おこがましい気がしてきた。
「それ、まじで言ってくれてますねっ!あははっ、超嬉しいっすわあ!」
と俺の言葉に驚いたような表情を見せてから、ルンルンで飛び跳ねている。そんなに喜ぶことか?とも思ったが、ただリュウさんが感情豊かなのかと思えば、腑に落ちた。
「ふふっ、そんなに喜んでくれると、こっちまで嬉しくなりますね」
「だって、僕の年齢とか学歴とかで、下に見てんだろうって、馬鹿にしてんだろうって思って」
「そんなわけない、ありえないっすよ⁉」
「良いんすよ、実際に僕のが下なんすから」
と俺があんなに心から否定してんのに、彼は懐疑的で諦めたように笑う。
「俺はリュウさんとまだ知り合って間もないですけど、俺が困ってたときに話しかけてくれて、めっちゃ救われましたし、嬉しかったですし、うまく話せないですけど、色々と気遣ってくださって、本当に、ありがとうございます。俺にはリュウさんみたいなことできないですから、まじで凄いなって、ほんと、尊敬してるんです」
伝えたい感情がたくさんあって、でも、それを言葉にすると、全然うまく伝えられなくて、すげえもどかしい。何で俺はこんなにも不器用なんだろう。
「じゃあ、僕がテンさんに対して、呼び捨てで呼んだり、タメ口を使ったりしても良いんですか?」
「もちろんです、というより俺はその方が気楽っすね」
クズ人間に敬語は身に余りすぎるから、クレームの怒鳴り声が、ちょうどいい。自分の立場を見誤らなくて済むから、人間として扱ってくれなくていいから、そしたら、すんなりと死を受け入れられる。
「ほんと、尊敬するっすよ。そうやって、相手をレッテルや見た目で判断しないところ。タメ口なんて聞けませんわ」
なんて彼は俺のことを称えてくれる。俺はきっと明日にはその期待を裏切るだろう。貴方が尊敬したこの人間は、仕事も家事も自分のことですらままならないクズ人間だったと。失望するだろう。ごめんなさい。俺はそんな綺麗な立ち位置には立てない。
「何だか恐縮ですね。俺が誰かに尊敬されるなんて、天変地異でも起きたんですかね?」
恐ろしくて身が縮みそうだ。何だか、死ぬよりも恐ろしいことが起こる予感がした。
「ええーっ、信じてくださいよお」
距離を縮めるようにリュウさんが俺の肩に手を置いた。
「ええ、信じてますよ。ただ、リュウさんが思っている以上に、俺はクズ人間ですよ」
「え?」
ほら、この発言だって、俺がクズ人間だからできたことだ。リュウさんの表情が固まる。そんなことは言う前から想像ついていたから。でも俺に変な期待を持ち続けることは、俺がそれを裏切ったときの失望が大きくなり続けていることに等しい。これも保身的な考えだけれども、どーせ傷を付けるのならば、浅い傷がいい。表面上は誰でも綺麗に装える。だから人間は、知れば知るほど嫌いになる。俺の虚像じゃなくて、等身大のクズ人間の俺を見て欲しい。
「あっ、コンビニに着きましたね。何買いますか?」
俺は、もちろん、酒だ。明日の仕事もできる気はしないが、酒を飲みたかった。彼は食後のデザートと言って、シュークリームを手に取っていた。遠慮したのに、俺の分と二つ買っていた。
「食べてみてください、僕のお気に入りなんですよ」
ただただ甘かった。その甘さを食感で誤魔化すために、またかぶりつく。
「ん、美味しいですね」
「お口に合ったようで良かったです。けど、酒のツマミになる方が良かったですかね?」
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「これは、眠るためのお酒なんで大丈夫ですよ」
「寝酒ってあんまり良くないって聞きますけど」
「心配してくれるんですか?」
「はい、とっても心配ですよ」
満天の星空の下、コンビニの明かりに背中を照らされて、シュークリームを二人で食べて、談笑する。よく分からないが、夢のような時間だと感覚的に分かった。
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