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きっかけ
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「あ……」
こっちを見たシーバスはなぜかすぐに目を逸らす。
「大丈夫か?」
それでもすぐ目の前で声を掛けると、シーバスは小さく頷いた。
「そうか。……悪かったな、僕のせいでこんな怪我をすることになってしまって」
その様子を窺うが、シーバスの格好は薄手の白シャツに綿の白いパンツ。
見た目では怪我の様子はわからない。
「これから歩いてみるところなのでちょうど良かったです」
そんなぎこちない僕とシーバスの側にユグノ医師も来て屈むと、シーバスの足に靴を履かせる。
そして、ユグノ医師はこっちを見上げた。
「せっかくだから王太子様もお手伝い頂けますか?」
柔和な笑みに頷くのに、
「そんな!ご迷惑……」
シーバスはフルフルと首を横に振る。
「何が迷惑だ」
拒絶されたことが少なからずショックで俺は咄嗟にその手を握った。
だが、シーバスはすぐに手を引き抜いてギュッと胸の前で握ってしまう。
「緊張されていますか?」
それを見たユグノ医師が立ち上がって前屈みになると、シーバスはその肩に両手をついた。
「アーリン様は私とは違う雲の上のような存在で……」
言いながらグッと力を込めてもその体は持ち上がらない。
ユグノ医師が腰に手をやって支えると、やっとシーバスはその場で立つことができた。
もう半年以上経ったのにまだそこまでダメージがあることに申し訳なく思う。
だからこそ手伝いたいのだが……シーバスは僕では嫌なのだろうか?
こっちを見たシーバスはなぜかすぐに目を逸らす。
「大丈夫か?」
それでもすぐ目の前で声を掛けると、シーバスは小さく頷いた。
「そうか。……悪かったな、僕のせいでこんな怪我をすることになってしまって」
その様子を窺うが、シーバスの格好は薄手の白シャツに綿の白いパンツ。
見た目では怪我の様子はわからない。
「これから歩いてみるところなのでちょうど良かったです」
そんなぎこちない僕とシーバスの側にユグノ医師も来て屈むと、シーバスの足に靴を履かせる。
そして、ユグノ医師はこっちを見上げた。
「せっかくだから王太子様もお手伝い頂けますか?」
柔和な笑みに頷くのに、
「そんな!ご迷惑……」
シーバスはフルフルと首を横に振る。
「何が迷惑だ」
拒絶されたことが少なからずショックで俺は咄嗟にその手を握った。
だが、シーバスはすぐに手を引き抜いてギュッと胸の前で握ってしまう。
「緊張されていますか?」
それを見たユグノ医師が立ち上がって前屈みになると、シーバスはその肩に両手をついた。
「アーリン様は私とは違う雲の上のような存在で……」
言いながらグッと力を込めてもその体は持ち上がらない。
ユグノ医師が腰に手をやって支えると、やっとシーバスはその場で立つことができた。
もう半年以上経ったのにまだそこまでダメージがあることに申し訳なく思う。
だからこそ手伝いたいのだが……シーバスは僕では嫌なのだろうか?
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