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3話「鬼たちは帰った」
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鬼の騒動の中、尊はその鬼と会話していた。赤い盃に溢れんばかりに酒が
注がれた。その酒を飲み干し鬼は話し出した。
「渡辺綱の子孫か。そりゃあ茨木童子としては恨まずには
おられんかの」
若い容姿に反して爺臭い口調の鬼だ。彼の向かい側に座っている尊は
瓶に手を掛けた。
「相変わらず酒豪だな、千住。喧嘩を売りたい、などと
言うんでは無いだろうな?」
「まさか。子孫であろうと渡辺綱の力をそのまま受け継いでいるわけでは無かろう?
儂は儂と同等か、それ以上の者にしか喧嘩は売らん。その中にはお主も入っておるぞ
須佐之男命」
尊という神の正体、それは須佐之男命。
「やめろ。お前と戦っては、俺も無事ではないからな」
「冗談だ。儂も無事ではすまぬからなぁ」
「それよりもお前には茨木童子を止めて欲しい。どうにかならないのか」
無理矢理本題に戻した尊に対して千住は笑った。
「あぁ、構わんよ」
「…あっさり引き受けたな。何か裏があるのか」
「酷いのぅ…良心から引き受けたというのに」
千住は尊の家を出て行った。周りから頭一つ抜け出している千住の姿は遠くからでも
目につく。
外に逃げ出した渡辺真姫だが既に後ろから鬼が追いかけていた。
何処か、何処か彼らを撒くことが出来る場所は無いかと走り続けた。
「お姉さん、こっちだよ!こっち!」
おかっぱ頭の少女が手を振っていた。彼女がいる小屋に体を滑りこませた。
「大丈夫なの…?」
「しーっ、気付かれちゃう」
彼女は人差し指を口の前に充てる。戸の覗き穴から外を見ると鬼たちは
真姫を見失ってそれぞれ散って探しに行ったようだ。
「ありがとう助けてくれて」
「お姉さんはこの神社の神様だもの。助けないとバチが当たっちゃうわ」
「神様って…私は人間なんだけどね」
「それでも神様。私、座敷童の由佳。この小屋も神社の敷地内なの。狐のお兄ちゃんと
雪女のお姉ちゃんも無事だよ」
暫くはこの小屋に隠れることにした。
「茨木童子はすぐに気が付いちゃうかも、もう来ちゃう!」
「逃げないとね。本当にありがとうね、由佳ちゃん」
そう告げてから出て行こうとするも駄目だった。裏から出て行こうと開けた。
戸の前には茨木童子が立っていた。
「見つけたぞ。渡辺綱の子孫、お前を殺せば俺たちの願いは果たされる」
「私を殺して、何か得があるの?」
「あるさ。野っと恨みが晴らせる」
茨木童子が笑った。彼は刀を抜き、振り上げるも何者かの存在に気付き一旦距離を
取った。真姫は腰が抜けた。落下した来たのは巨大な木だ。根元から引っこ抜かれて
いる。投げた大男を見て茨木童子は歯噛みする。
「邪魔するのかよ。クソジジイ!」
「するに決まっておるわい。茨木童子。お前さん、酒呑童子に許可を取らずに
小娘を襲いに来たな?」
酒呑童子。鬼たちのリーダーだ。その鬼もまた頼光四天王により退治されていたはずだが
人知れず息を吹き返し、この世で生きていたらしい。
茨木童子は痛いところを付かれた。
「大人しく引き下がれ。さすれば酒呑童子には黙っておいてやろう」
「…誰が、誰がここで引き下がるかァァァァ!!!!」
刀を握り、茨木童子は無謀にも鬼に斬りかかる。
「無駄じゃ。小童」
茨木童子の体が宙を飛んだ。重い拳を受けて地面に転がった茨木童子は何度も
咳き込んだ。近寄ろうとするも彼の方から拒否されてしまった。
大人しく彼らは引き下がった。
「大丈夫だったか。すまぬな。だが許してやってくれ」
「私は大丈夫です。鬼なのに、私の事を憎まないんですね…」
「儂は渡辺綱と因縁など無いからのぅ。喧嘩は売りたいと思ったが」
最後の言葉を聞き真姫は苦笑した。座敷童の由佳はこの大きな鬼に懐いているらしい。
この鬼はどことなく爺臭い。それだけ長寿の鬼なのかもしれない。妖怪自体、寿命が
長いので銀月や雪華も同じなのかもしれない。
鬼は千住と名乗り、尊に言われてやって来たという。
「それに儂は昔、人間の娘に恋をしておる。どうにも人間を憎む気にはならぬ。
儂はこの神社の近くに屋敷を置いている。何時でも来ると良い。歓迎する」
千住はそう言って、この場所を離れた。由佳が銀月たちが来ることに気付いて声を
上げた。彼らは疲れた顔をしていた。耳も何処か下に力なく倒れていた。
「真姫さん、無事ですか」
「うん。千住さんっていう鬼が助けてくれたの。それに由佳ちゃんもね」
「良かったじゃない。千住様が来てくれて」
大妖怪らしい。長い時を生きており、そして力が強い。
銀月の後ろに回り由佳は大胆にも彼の尻尾に飛びついた。
「銀月の尻尾はいつもモフモフ~」
「僕の尻尾は抱き枕やぬいぐるみでは無いんですよ…?」
銀月は諦めた。そのモフモフの尻尾に抱き着いたまま由佳が眠ってしまい
彼女が目を覚ますまで銀月は動けなかった。が、怒る気にもなれない。
こちらは鬼たちの住む地域。茨木童子は勝手な振る舞いをしたことを咎められるのでは
と心配しながら酒呑童子の前に正座していた。
「今回だけだぞ。次にやったら鉄拳制裁だ」
「良いのですか」
「構わねえ。それだけ俺たちの事を考えてくれてたって事だろ?」
酒呑童子は歯を見せて笑った。
「…にしても神力を授かった人間ねぇ。その子娘もこれから大変だな。神には勝てずとも
人間になら勝てると確信する妖怪も多いからな。茨木童子、反省しているのなら
彼女を手助けしてやれよ」
「…御意」
少し渋った。しかし彼はそう返事をしたのだった。
注がれた。その酒を飲み干し鬼は話し出した。
「渡辺綱の子孫か。そりゃあ茨木童子としては恨まずには
おられんかの」
若い容姿に反して爺臭い口調の鬼だ。彼の向かい側に座っている尊は
瓶に手を掛けた。
「相変わらず酒豪だな、千住。喧嘩を売りたい、などと
言うんでは無いだろうな?」
「まさか。子孫であろうと渡辺綱の力をそのまま受け継いでいるわけでは無かろう?
儂は儂と同等か、それ以上の者にしか喧嘩は売らん。その中にはお主も入っておるぞ
須佐之男命」
尊という神の正体、それは須佐之男命。
「やめろ。お前と戦っては、俺も無事ではないからな」
「冗談だ。儂も無事ではすまぬからなぁ」
「それよりもお前には茨木童子を止めて欲しい。どうにかならないのか」
無理矢理本題に戻した尊に対して千住は笑った。
「あぁ、構わんよ」
「…あっさり引き受けたな。何か裏があるのか」
「酷いのぅ…良心から引き受けたというのに」
千住は尊の家を出て行った。周りから頭一つ抜け出している千住の姿は遠くからでも
目につく。
外に逃げ出した渡辺真姫だが既に後ろから鬼が追いかけていた。
何処か、何処か彼らを撒くことが出来る場所は無いかと走り続けた。
「お姉さん、こっちだよ!こっち!」
おかっぱ頭の少女が手を振っていた。彼女がいる小屋に体を滑りこませた。
「大丈夫なの…?」
「しーっ、気付かれちゃう」
彼女は人差し指を口の前に充てる。戸の覗き穴から外を見ると鬼たちは
真姫を見失ってそれぞれ散って探しに行ったようだ。
「ありがとう助けてくれて」
「お姉さんはこの神社の神様だもの。助けないとバチが当たっちゃうわ」
「神様って…私は人間なんだけどね」
「それでも神様。私、座敷童の由佳。この小屋も神社の敷地内なの。狐のお兄ちゃんと
雪女のお姉ちゃんも無事だよ」
暫くはこの小屋に隠れることにした。
「茨木童子はすぐに気が付いちゃうかも、もう来ちゃう!」
「逃げないとね。本当にありがとうね、由佳ちゃん」
そう告げてから出て行こうとするも駄目だった。裏から出て行こうと開けた。
戸の前には茨木童子が立っていた。
「見つけたぞ。渡辺綱の子孫、お前を殺せば俺たちの願いは果たされる」
「私を殺して、何か得があるの?」
「あるさ。野っと恨みが晴らせる」
茨木童子が笑った。彼は刀を抜き、振り上げるも何者かの存在に気付き一旦距離を
取った。真姫は腰が抜けた。落下した来たのは巨大な木だ。根元から引っこ抜かれて
いる。投げた大男を見て茨木童子は歯噛みする。
「邪魔するのかよ。クソジジイ!」
「するに決まっておるわい。茨木童子。お前さん、酒呑童子に許可を取らずに
小娘を襲いに来たな?」
酒呑童子。鬼たちのリーダーだ。その鬼もまた頼光四天王により退治されていたはずだが
人知れず息を吹き返し、この世で生きていたらしい。
茨木童子は痛いところを付かれた。
「大人しく引き下がれ。さすれば酒呑童子には黙っておいてやろう」
「…誰が、誰がここで引き下がるかァァァァ!!!!」
刀を握り、茨木童子は無謀にも鬼に斬りかかる。
「無駄じゃ。小童」
茨木童子の体が宙を飛んだ。重い拳を受けて地面に転がった茨木童子は何度も
咳き込んだ。近寄ろうとするも彼の方から拒否されてしまった。
大人しく彼らは引き下がった。
「大丈夫だったか。すまぬな。だが許してやってくれ」
「私は大丈夫です。鬼なのに、私の事を憎まないんですね…」
「儂は渡辺綱と因縁など無いからのぅ。喧嘩は売りたいと思ったが」
最後の言葉を聞き真姫は苦笑した。座敷童の由佳はこの大きな鬼に懐いているらしい。
この鬼はどことなく爺臭い。それだけ長寿の鬼なのかもしれない。妖怪自体、寿命が
長いので銀月や雪華も同じなのかもしれない。
鬼は千住と名乗り、尊に言われてやって来たという。
「それに儂は昔、人間の娘に恋をしておる。どうにも人間を憎む気にはならぬ。
儂はこの神社の近くに屋敷を置いている。何時でも来ると良い。歓迎する」
千住はそう言って、この場所を離れた。由佳が銀月たちが来ることに気付いて声を
上げた。彼らは疲れた顔をしていた。耳も何処か下に力なく倒れていた。
「真姫さん、無事ですか」
「うん。千住さんっていう鬼が助けてくれたの。それに由佳ちゃんもね」
「良かったじゃない。千住様が来てくれて」
大妖怪らしい。長い時を生きており、そして力が強い。
銀月の後ろに回り由佳は大胆にも彼の尻尾に飛びついた。
「銀月の尻尾はいつもモフモフ~」
「僕の尻尾は抱き枕やぬいぐるみでは無いんですよ…?」
銀月は諦めた。そのモフモフの尻尾に抱き着いたまま由佳が眠ってしまい
彼女が目を覚ますまで銀月は動けなかった。が、怒る気にもなれない。
こちらは鬼たちの住む地域。茨木童子は勝手な振る舞いをしたことを咎められるのでは
と心配しながら酒呑童子の前に正座していた。
「今回だけだぞ。次にやったら鉄拳制裁だ」
「良いのですか」
「構わねえ。それだけ俺たちの事を考えてくれてたって事だろ?」
酒呑童子は歯を見せて笑った。
「…にしても神力を授かった人間ねぇ。その子娘もこれから大変だな。神には勝てずとも
人間になら勝てると確信する妖怪も多いからな。茨木童子、反省しているのなら
彼女を手助けしてやれよ」
「…御意」
少し渋った。しかし彼はそう返事をしたのだった。
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