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第二章 消えた金庫
風は 終
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「犯人は、貴方だ」
十六夜は廃病院の診察室で、一連の事件の犯人に向けて、指を指していた。
その指が向けられたのは…
森林竹雄。
森林竹雄に、指は向けられていた。
「き、急に如何したんだ十六夜くん。犯人が分かったと聞いて嬉しくなったのに、俺が犯人とは。どういう事なんだ」
「…少し、長くなりますが」
そう言って、十六夜は事件の転末を話し始めた。
「…違和感を感じ始めたのは、森林さんの家にお邪魔した時からです。玄関から出入りしているのに裏口の鍵を持っていたし、犯人を庇う様な言葉を言ったし、森林さんだけを襲わなかったし…」
「す、全て偶然だよ。あの時はたまたま裏口の鍵を持っていたし、あの言葉も…」
「多重人格」
清少納言が続けて言う。
「は…?」
森林は驚いた顔をする。
「森林さん、貴方には2つの人格がある。1つは、建築家をやっていて、優しい人。もう1つは、ずる賢くて、醜悪で、貪欲で、残酷で…酷い性格の持ち主です。」
「…如何いう事だ」
小納言の話は続く。
「あの日の夜、貴方の貪欲な人格の方が事件を起こした。奥さんと息子さんを傷付け、金庫のパスワードを知っている自分だからこそ、金庫ごと奪った。」
「まさか…そんな…」
「全ては、貴方のもう1つの人格のせい。」
小納言が森林を攻めていく。
「おい…まさか…嘘だろ…ぐぅ!」
森林がベッドを叩く。
「俺は…何て事を…」
森林の目からぽろぽろと涙が溢れる。
「と、貴方の頭の中の真実はそうなっている」
「!!」
小納言が水を差すように言う。
「全ては、貴方の妄想。全てが、嘘偽りです」
「な、何だ。如何いう事だ…」
「全部、無かったんですよ。事件なんて。金庫も奪われていなかったし、奥さんと息子さんも怪我はしていましたが軽いです」
「どどど、如何いう事だ!詳しく教えてくれ!」
十六夜が引き継ぐ。
「はい。実際、森林さんの家に行った時、奥さんと息子さんは寝室にいました。」
「で、でも寝室には誰も居なかったんじゃ…」
「そこから、疑い始めたんです。この事件は全て、森林さんの脳内の事件だと」
「…」
外では風が吹いているようで、少しだけ部屋の窓が揺れる。
「ここからは私の考えですけど、多分、その日の朝。森林さんが起きる前に、息子さんが、鼻血でも出してしまったんだと思います。それが奥さんの衣服にも付いてしまった。其処に森林さんが起きてきて、その現場を見た。森林さんは、2人が大怪我をしていると思ってしまうという勘違いをしてしまった。ここから、この事件は始まったんです」
「まさか…そうだったのか…」
外の風が止み、窓の揺れも止まる。
「妻と息子は…無事なのか」
「はい。先程もう一度森林さんの家に行って、奥さんと息子さんに私が治療を施しました。ついでに、事件の事も話しました。」
「そうなのか…」
すると、小納言が森林に手を差し出した。
「行きましょう、森林さん。家に。大切な奥さんと息子さんが待っています。」
「…そうだな。行こう。」
病室に、夕暮れの木漏れ日が差し込む。
「…十六夜くんと、小林くん…ありがとう。本当にありがとう。この事件を解決してくれて…」
「大丈夫です!それが…私達の仕事ですから!」
こうして、この事件は幕を閉じた。
十六夜は廃病院の診察室で、一連の事件の犯人に向けて、指を指していた。
その指が向けられたのは…
森林竹雄。
森林竹雄に、指は向けられていた。
「き、急に如何したんだ十六夜くん。犯人が分かったと聞いて嬉しくなったのに、俺が犯人とは。どういう事なんだ」
「…少し、長くなりますが」
そう言って、十六夜は事件の転末を話し始めた。
「…違和感を感じ始めたのは、森林さんの家にお邪魔した時からです。玄関から出入りしているのに裏口の鍵を持っていたし、犯人を庇う様な言葉を言ったし、森林さんだけを襲わなかったし…」
「す、全て偶然だよ。あの時はたまたま裏口の鍵を持っていたし、あの言葉も…」
「多重人格」
清少納言が続けて言う。
「は…?」
森林は驚いた顔をする。
「森林さん、貴方には2つの人格がある。1つは、建築家をやっていて、優しい人。もう1つは、ずる賢くて、醜悪で、貪欲で、残酷で…酷い性格の持ち主です。」
「…如何いう事だ」
小納言の話は続く。
「あの日の夜、貴方の貪欲な人格の方が事件を起こした。奥さんと息子さんを傷付け、金庫のパスワードを知っている自分だからこそ、金庫ごと奪った。」
「まさか…そんな…」
「全ては、貴方のもう1つの人格のせい。」
小納言が森林を攻めていく。
「おい…まさか…嘘だろ…ぐぅ!」
森林がベッドを叩く。
「俺は…何て事を…」
森林の目からぽろぽろと涙が溢れる。
「と、貴方の頭の中の真実はそうなっている」
「!!」
小納言が水を差すように言う。
「全ては、貴方の妄想。全てが、嘘偽りです」
「な、何だ。如何いう事だ…」
「全部、無かったんですよ。事件なんて。金庫も奪われていなかったし、奥さんと息子さんも怪我はしていましたが軽いです」
「どどど、如何いう事だ!詳しく教えてくれ!」
十六夜が引き継ぐ。
「はい。実際、森林さんの家に行った時、奥さんと息子さんは寝室にいました。」
「で、でも寝室には誰も居なかったんじゃ…」
「そこから、疑い始めたんです。この事件は全て、森林さんの脳内の事件だと」
「…」
外では風が吹いているようで、少しだけ部屋の窓が揺れる。
「ここからは私の考えですけど、多分、その日の朝。森林さんが起きる前に、息子さんが、鼻血でも出してしまったんだと思います。それが奥さんの衣服にも付いてしまった。其処に森林さんが起きてきて、その現場を見た。森林さんは、2人が大怪我をしていると思ってしまうという勘違いをしてしまった。ここから、この事件は始まったんです」
「まさか…そうだったのか…」
外の風が止み、窓の揺れも止まる。
「妻と息子は…無事なのか」
「はい。先程もう一度森林さんの家に行って、奥さんと息子さんに私が治療を施しました。ついでに、事件の事も話しました。」
「そうなのか…」
すると、小納言が森林に手を差し出した。
「行きましょう、森林さん。家に。大切な奥さんと息子さんが待っています。」
「…そうだな。行こう。」
病室に、夕暮れの木漏れ日が差し込む。
「…十六夜くんと、小林くん…ありがとう。本当にありがとう。この事件を解決してくれて…」
「大丈夫です!それが…私達の仕事ですから!」
こうして、この事件は幕を閉じた。
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