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第二章 消えた金庫
風は 参
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清少納言と十六夜は、事件解決の為、歩き出していた。
「この事件は色々とおかしいね」
十六夜が口を開いた。
「えっ…ま、まあ、そうだね。矛盾点が色々とある。だけどまずは」
「被害者の奥さんと息子さんの所へ行こう」
小納言と十六夜は息の合った会話を続ける。
「その奥さんと息子さんの居る病院は分かるの?」
小納言が聞いた。たしかに、森林は妻と息子の居る病院は知らないと言っていた。
「…まず…本当に病院に居るかだね」
「??」
小納言は、何を言っているんだ、と言わんばかりに、十六夜を見る。十六夜は顎に手を当てる。
「分からない。この事件には謎が多い。森林さんの証言が無ければ、私達も上手く動けない」
「確かに。森林さんの証言には本当かどうか分からないものも多いし…」
十六夜が目を細め、懐から何かを取り出した。
「森林さん宅から拝借してきた、森林さん家の中の誰かのスマホだよ。中を見てみよう」
「…何なのその四角い箱は。確か奥之浦さんも使っていたような…」
「!!」
十六夜が驚いた様な顔を見せる。だが、直ぐに普通の顔に戻った。
「ま、まあ、この画面を見てみて。」
「!これは…」
その画面は、電話の通話履歴だった。
「これはおそらく、森林さんの奥さんの物。何かおかしいと思わない?」
其処に載っている通話履歴は、ほぼ森林の奥さんの友達や家族のものだった。
「…これは…」
「あ、平安時代の人だったね。この小型の携帯式電話を、現代ではスマートフォンと言い、それを略してスマホと言う。このスマホ1つで、どんな遠くに居る人とも画面を通じて会話が出来る」
「へえ…今はそんな便利な物が…」
感心している小納言に、今はそんな事どうでもいい、とばっさり言う。
「まず根本的におかしいんだよ。森林さんの話では奥さんと息子さん、両方とも深い傷を負っていたらしい。でも、病院に搬送されたという連絡も森林さんに来ないし、この通話履歴に、病院への履歴も、警察への履歴も無い。」
「…まさか」
小納言が目を見開く。
「おかしい。森林さんの奥さんと息子さんは、今何処で何をしているの」
「考えられるのは…」
2人の間に長い沈黙が流れる。
「あそこしかない」
「そうだね」
如何やらこの2人は、犯人が分かったようだ。そして1階へ向かう階段を降り始める。
「でも問題は、誰が犯人かって事だよ」
小納言が言った。2人は1階に着いた。外では、見事に咲いている桜が風に吹かれて花びらを舞わせている。
「…何故、犯人は森林さんだけを襲わなかったのだろうか」
十六夜が言った。
「森林さんに向けて嫌がらせでもしたかったんじゃない?」
「だとしたら森林さん本人を襲うべきだよ」
「そっか…」
不思議な間が空く。外の風が止み、花びらはすとんと下に落ちる。先刻の桜吹雪が無かったかの様に。
「森林さんが裏口の鍵を持っていたのもおかしい。何時も玄関から出入りしたと言っているのに、何故裏口の鍵を持っている?」
十六夜は矛盾点を口に出してゆく。
「何か特別な事情があったとか」
「森林さんの話ではそんな事一言も言ってなかった」
十六夜は続けて言う。
「まだ矛盾点はある。」
「まだ!?」
「此れはちょっとした事だけど、森林さんの家の玄関にいる時、森林さんは…『俺の大切な妻と息子を傷付けてしまうなんて…許せない』って言ってた気がするんだけど」
「それがどうかした?」
十六夜がオッドアイの目を鋭く細くする。
「犯人を恨んでいるのなら、言う言葉がおかしくない?〝傷付けてしまう〟なんて言うのは、おかしいと思わない?まるで犯人を庇っている様な…」
「たしかに…そうかも」
小納言が頷く。
「…この現状にある証拠から導き出される真実…犯人は…」
「あの人しかいないね」
2人が息の合った会話を続ける。犯人は誰なのか。
「まあこれで、犯人は分かった訳だけど…」
小納言は少し表情を緩める。だが、十六夜がすぐに言う。
「本当は、この謎を解く必要も無いんだけどね」
小納言は俯く。
「…まあ、そうだね」
「さあ、少し辛い結末だけれど…事件解決といこうか」
「…そうだね」
2人は、〝犯人〟の所へと向かった。
(どんなに辛くても、今ある現実は変えられない。事件の犯人があの人だったとしても、私が平安時代に戻りたいと思っても。私1人の力ではどうにも出来ない。だから私…私達は、頑張るんだ)
「この事件は色々とおかしいね」
十六夜が口を開いた。
「えっ…ま、まあ、そうだね。矛盾点が色々とある。だけどまずは」
「被害者の奥さんと息子さんの所へ行こう」
小納言と十六夜は息の合った会話を続ける。
「その奥さんと息子さんの居る病院は分かるの?」
小納言が聞いた。たしかに、森林は妻と息子の居る病院は知らないと言っていた。
「…まず…本当に病院に居るかだね」
「??」
小納言は、何を言っているんだ、と言わんばかりに、十六夜を見る。十六夜は顎に手を当てる。
「分からない。この事件には謎が多い。森林さんの証言が無ければ、私達も上手く動けない」
「確かに。森林さんの証言には本当かどうか分からないものも多いし…」
十六夜が目を細め、懐から何かを取り出した。
「森林さん宅から拝借してきた、森林さん家の中の誰かのスマホだよ。中を見てみよう」
「…何なのその四角い箱は。確か奥之浦さんも使っていたような…」
「!!」
十六夜が驚いた様な顔を見せる。だが、直ぐに普通の顔に戻った。
「ま、まあ、この画面を見てみて。」
「!これは…」
その画面は、電話の通話履歴だった。
「これはおそらく、森林さんの奥さんの物。何かおかしいと思わない?」
其処に載っている通話履歴は、ほぼ森林の奥さんの友達や家族のものだった。
「…これは…」
「あ、平安時代の人だったね。この小型の携帯式電話を、現代ではスマートフォンと言い、それを略してスマホと言う。このスマホ1つで、どんな遠くに居る人とも画面を通じて会話が出来る」
「へえ…今はそんな便利な物が…」
感心している小納言に、今はそんな事どうでもいい、とばっさり言う。
「まず根本的におかしいんだよ。森林さんの話では奥さんと息子さん、両方とも深い傷を負っていたらしい。でも、病院に搬送されたという連絡も森林さんに来ないし、この通話履歴に、病院への履歴も、警察への履歴も無い。」
「…まさか」
小納言が目を見開く。
「おかしい。森林さんの奥さんと息子さんは、今何処で何をしているの」
「考えられるのは…」
2人の間に長い沈黙が流れる。
「あそこしかない」
「そうだね」
如何やらこの2人は、犯人が分かったようだ。そして1階へ向かう階段を降り始める。
「でも問題は、誰が犯人かって事だよ」
小納言が言った。2人は1階に着いた。外では、見事に咲いている桜が風に吹かれて花びらを舞わせている。
「…何故、犯人は森林さんだけを襲わなかったのだろうか」
十六夜が言った。
「森林さんに向けて嫌がらせでもしたかったんじゃない?」
「だとしたら森林さん本人を襲うべきだよ」
「そっか…」
不思議な間が空く。外の風が止み、花びらはすとんと下に落ちる。先刻の桜吹雪が無かったかの様に。
「森林さんが裏口の鍵を持っていたのもおかしい。何時も玄関から出入りしたと言っているのに、何故裏口の鍵を持っている?」
十六夜は矛盾点を口に出してゆく。
「何か特別な事情があったとか」
「森林さんの話ではそんな事一言も言ってなかった」
十六夜は続けて言う。
「まだ矛盾点はある。」
「まだ!?」
「此れはちょっとした事だけど、森林さんの家の玄関にいる時、森林さんは…『俺の大切な妻と息子を傷付けてしまうなんて…許せない』って言ってた気がするんだけど」
「それがどうかした?」
十六夜がオッドアイの目を鋭く細くする。
「犯人を恨んでいるのなら、言う言葉がおかしくない?〝傷付けてしまう〟なんて言うのは、おかしいと思わない?まるで犯人を庇っている様な…」
「たしかに…そうかも」
小納言が頷く。
「…この現状にある証拠から導き出される真実…犯人は…」
「あの人しかいないね」
2人が息の合った会話を続ける。犯人は誰なのか。
「まあこれで、犯人は分かった訳だけど…」
小納言は少し表情を緩める。だが、十六夜がすぐに言う。
「本当は、この謎を解く必要も無いんだけどね」
小納言は俯く。
「…まあ、そうだね」
「さあ、少し辛い結末だけれど…事件解決といこうか」
「…そうだね」
2人は、〝犯人〟の所へと向かった。
(どんなに辛くても、今ある現実は変えられない。事件の犯人があの人だったとしても、私が平安時代に戻りたいと思っても。私1人の力ではどうにも出来ない。だから私…私達は、頑張るんだ)
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