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第二章 消えた金庫
風は 弍
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清少納言と十六夜は、廃病院の診察室で、森林の話を聞いていた。
「じゃあ、早速だけど、森林さん。まずはその事件現場となる所…森林さんの家に行きたいんだけれども」
「ああ、良い。だが…」
森林は頷いた。
「今、妻と息子は何処で何をしているのか分からない。それに、この脚では…」
「大丈夫です。車は運転して行くので。
それに、今、奥さんと息子さんが何処で何をしているのかを、追求するのが、私たちの役目です」
「そうか。有難う」
「十六夜は探偵か…」
3人の話に区切りがついたところで、小納言と十六夜が同時に立ち上がった。
「では、行こう。森林さん、車椅子は用意してあります」
「有難う」
ようやく、1つの物語が、動き出そうとしている。
廃病院の廊下。十六夜は森林の乗った車椅子を押している。
小納言が口を開く。
「息子さん、大丈夫だったんでしょうか」
「大丈夫だと思う。今月、1年生に入学するからな」
続けて十六夜が言う。
「という事は、今年で7歳ですか」
「ああ、そうだ。立派な子でな。ちょっと運動神経は弱いけど、頭が良いんだ。」
「へぇ…」
「本当に、助かってほしいな」
そんな事を話しながら、車へ向かった。
「ちなみに誰が運転するの?」
「私」
「えっ、十六夜、運転なんて」
「私、もう免許持ってるよ」
「そうなんだ」
大型のミニバンに乗って30分ほど。森林の家に着いた。新築の一軒家で、軽自動車が2台、車庫に停まっている。
「車はあるな。もしかして、救急車で運ばれたか?」
「でも、警察も、何もいないですよ」
十六夜は、車庫の前に車を停めた。
「じゃあ、少し、中を見てみましょうか」
「そうだな」
「うん」
森林と小納言が返事をする。
予想通りと言うべきか、玄関には鍵がかかっていた。
「…開きませんね」
「大丈夫だ。裏口の鍵を持っている」
と言って、森林は懐をゴソゴソと探った。
森林の鍵で小納言達は裏口から森林宅へ入って行った。
中の電気は消えていて、昼間なのに薄暗かった。
「何だか気味の悪い所だな…此処で奥さんと息子さんは襲われたんですよね」
そう、小納言が森林に聞いた。
「ああ、そうだ。その事件現場となった寝室だが、2階にある。行こう。」
3人は2階の寝室に行った。
寝室にはベッドが2つ並んでおり、その2つのベッドには、所々血痕が付いていた。
「うわぁ…」
小納言が思わず呻き声をあげる。
「争った形跡は無さそうですね」
十六夜が探偵のような事を言う。
「ああ。俺は見ていなかったからな」
その瞬間、冷静にこの事件を考えていた十六夜と、黙ってその場の雰囲気に打ちのめされていた小納言が、同時に、目を見開いた。
「…今、奥さんと息子さんが何処に居るか分かりますか?」
小納言が森林に聞く。
「…多分、病院だと思う。生憎、あまり記憶が無いもので」
「…分かりました。では」
「今日は帰りましょう」
小納言と十六夜が続けて言う。
「えっ?も、もういいのか?」
「はい。もう充分調べましたから。だけど…」
十六夜は平然と答える。
「一回、玄関を見させてもらっても良いですか?」
十六夜達は玄関を見た。
玄関は、かなり広く、息子の物と思われるスニーカーが脱ぎ捨てられていた。
「……」
十六夜と小納言は、横の靴箱の中を見ていた。
「森林さん、森林さんはいつもこの玄関から出入りしていますか?」
小納言が森林に聞いた。
「ああ。その靴箱の中に俺の革靴が沢山あるだろう。それは全て俺の物なんだ。」
「そうですか…」
「事件の翌日も、俺は妻と息子に見送られて仕事場に行く筈だった。それなのに…犯人め、俺の大切な妻と息子を傷付けてしまうなんて…許せない」
「…」
森林の顔は、憎しみにこもっていた。
「ふぅ、待たせました。帰りましょう。」
十六夜がそう言った。
小納言達は、裏口から出て行った。
帰りの車の中で、小納言が森林に聞いた。
「前に、この様な事件に絡んだ事は無いですか?」
「あるな。2回程。その度、警察には、世話になっている。」
「そうですか…」
十六夜の廃病院のベッド。森林に、十六夜が言った。
「暫く、此処に居て下さい。私と小林は、もう少しこの事件について調べます」
「分かった。」
「では、お大事に」
そう言って、十六夜と小納言は出て行った。
(そういえば、私は小林三津子だった…)
小納言は、そう思っていた。
病室の外。十六夜と小納言は、事件解決の為、歩き出していた。
「じゃあ、早速だけど、森林さん。まずはその事件現場となる所…森林さんの家に行きたいんだけれども」
「ああ、良い。だが…」
森林は頷いた。
「今、妻と息子は何処で何をしているのか分からない。それに、この脚では…」
「大丈夫です。車は運転して行くので。
それに、今、奥さんと息子さんが何処で何をしているのかを、追求するのが、私たちの役目です」
「そうか。有難う」
「十六夜は探偵か…」
3人の話に区切りがついたところで、小納言と十六夜が同時に立ち上がった。
「では、行こう。森林さん、車椅子は用意してあります」
「有難う」
ようやく、1つの物語が、動き出そうとしている。
廃病院の廊下。十六夜は森林の乗った車椅子を押している。
小納言が口を開く。
「息子さん、大丈夫だったんでしょうか」
「大丈夫だと思う。今月、1年生に入学するからな」
続けて十六夜が言う。
「という事は、今年で7歳ですか」
「ああ、そうだ。立派な子でな。ちょっと運動神経は弱いけど、頭が良いんだ。」
「へぇ…」
「本当に、助かってほしいな」
そんな事を話しながら、車へ向かった。
「ちなみに誰が運転するの?」
「私」
「えっ、十六夜、運転なんて」
「私、もう免許持ってるよ」
「そうなんだ」
大型のミニバンに乗って30分ほど。森林の家に着いた。新築の一軒家で、軽自動車が2台、車庫に停まっている。
「車はあるな。もしかして、救急車で運ばれたか?」
「でも、警察も、何もいないですよ」
十六夜は、車庫の前に車を停めた。
「じゃあ、少し、中を見てみましょうか」
「そうだな」
「うん」
森林と小納言が返事をする。
予想通りと言うべきか、玄関には鍵がかかっていた。
「…開きませんね」
「大丈夫だ。裏口の鍵を持っている」
と言って、森林は懐をゴソゴソと探った。
森林の鍵で小納言達は裏口から森林宅へ入って行った。
中の電気は消えていて、昼間なのに薄暗かった。
「何だか気味の悪い所だな…此処で奥さんと息子さんは襲われたんですよね」
そう、小納言が森林に聞いた。
「ああ、そうだ。その事件現場となった寝室だが、2階にある。行こう。」
3人は2階の寝室に行った。
寝室にはベッドが2つ並んでおり、その2つのベッドには、所々血痕が付いていた。
「うわぁ…」
小納言が思わず呻き声をあげる。
「争った形跡は無さそうですね」
十六夜が探偵のような事を言う。
「ああ。俺は見ていなかったからな」
その瞬間、冷静にこの事件を考えていた十六夜と、黙ってその場の雰囲気に打ちのめされていた小納言が、同時に、目を見開いた。
「…今、奥さんと息子さんが何処に居るか分かりますか?」
小納言が森林に聞く。
「…多分、病院だと思う。生憎、あまり記憶が無いもので」
「…分かりました。では」
「今日は帰りましょう」
小納言と十六夜が続けて言う。
「えっ?も、もういいのか?」
「はい。もう充分調べましたから。だけど…」
十六夜は平然と答える。
「一回、玄関を見させてもらっても良いですか?」
十六夜達は玄関を見た。
玄関は、かなり広く、息子の物と思われるスニーカーが脱ぎ捨てられていた。
「……」
十六夜と小納言は、横の靴箱の中を見ていた。
「森林さん、森林さんはいつもこの玄関から出入りしていますか?」
小納言が森林に聞いた。
「ああ。その靴箱の中に俺の革靴が沢山あるだろう。それは全て俺の物なんだ。」
「そうですか…」
「事件の翌日も、俺は妻と息子に見送られて仕事場に行く筈だった。それなのに…犯人め、俺の大切な妻と息子を傷付けてしまうなんて…許せない」
「…」
森林の顔は、憎しみにこもっていた。
「ふぅ、待たせました。帰りましょう。」
十六夜がそう言った。
小納言達は、裏口から出て行った。
帰りの車の中で、小納言が森林に聞いた。
「前に、この様な事件に絡んだ事は無いですか?」
「あるな。2回程。その度、警察には、世話になっている。」
「そうですか…」
十六夜の廃病院のベッド。森林に、十六夜が言った。
「暫く、此処に居て下さい。私と小林は、もう少しこの事件について調べます」
「分かった。」
「では、お大事に」
そう言って、十六夜と小納言は出て行った。
(そういえば、私は小林三津子だった…)
小納言は、そう思っていた。
病室の外。十六夜と小納言は、事件解決の為、歩き出していた。
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