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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
頼りになる旦那様。
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オス麿達の記憶によれば、視察の途中で計画を立て、麻痺香を使用。
昏睡状態に陥った私を人質に取った上で、こちら側の護衛達の大半に煙を吸わせて無力化した。
その後オス麿達は馬を奪って逃走。
残った馬も時間稼ぎの為に尻を叩いて逃がした。シャンブリル川に出て漁民のボートを盗み、港町ジュリヴァへ向かって南下。
その際、私のドレスを剥いで、陽動として騎馬をナヴィガポール方面へと走らせた。
オス麿の配下の中に盗賊出身の男がおり、その進言によるものだった。
父サイモンの記憶の中での隠密騎士の報告によれば、表に出ず離れた場所から護衛をしていた隠密騎士達は、事態を覆す程の数が居なかったらしい。私が人質に取られていて、下手な動きが出来なかったというのもある。
彼らはすぐさま報告と増援を頼みに一人を城へ走らせ、残りは救助班と追跡班に分かれて行動したようだ。
追跡班にはグレイ、カール、馬の脚共、サリーナとナーテも加わったという。
カールは咄嗟にグレイと自分の口元を覆って倒れ、また馬の脚共やサリーナ達も口を覆って倒れた振りをしたので煙を吸った量はまだ少なくて済んだ模様。
オス麿達を逃がした後、散らされた馬達を取り戻した頃に少し遅れて出発したグレイ達は追跡を開始。
先行していた隠密騎士の案内で、オス麿達が二手に分かれたと聞いてグレイ達も二手に分かれることに。
ナヴィガポールへはグレイや馬の脚共、カール、サリーナ、ナーテ達が。
ジュリヴァへは土地勘のあるワイバーンのアーベルト・メレン達が向かったそうだ。
一方、オス麿達は無事ジュリヴァへ辿り着いたはいいものの、疲労困憊の所をたまたま戻って来ていたアーダム皇子に襲撃され、まんまと私を奪われてしまった。
アーダム皇子達が去ったところで追いかけてきたアーベルト達によって捕らえられ、尋問の末に城へと連行されて今に至る。
父サイモンは早馬での報告を聞くとすぐさま隠密騎士の増援を指示、領政総官クロヴラン・ピュトロワを通じてディディエ・シュルドーに陸路である街道を封鎖させ、ロイジウス・ウーファーには領都内警備の強化を命じていた。
視察に出る前にグレイが一時的に領主権限を父に託した形になっていたのは不幸中の幸いだったと思う。
精神感応で我が身の無事と現況をざっと伝えると、父サイモンは糸が切れたように机に崩れ落ちた。近くにいた母ティヴィーナが祈りの所作をして涙ぐんでいる。
『ああ、マリーちゃん。私の可愛い娘、無事で良かったわ!』
『グレイはお前を追って行った。今頃船を出しているに違いない』
『本当に心配をかけてごめんなさい。父、ありがとう! 母、必ず無事で戻って来るから! それまで父を宜しくね!』
精神感応を一旦切って、私はすぐさまグレイを探した。
ナヴィガポールを透視し、船乗りの一人の記憶を読む。ファリエロ達の船団がグレイや皆を乗せて慌ただしく出航したらしい。
ファリエロの船に絞って透視すると――見つけた!
***
何隻もの商船団が、固まって海上を進んでいた。
その先頭を切る帆船――船首に立ってオレンジ色の髪をなびかせながら望遠鏡を覗いている姿に、うっかり涙が出そうになる。
『グレイ、グレイ!』
感極まって名を呼びかけると、グレイははっと驚いたように望遠鏡を目から外した。
『っ、マリー!? 今何処にいるんだ!』
『ここよ!』
私は衛星写真から見た位置をそのままグレイの脳裏に送り込む。船の特徴も併せて伝えた。
『良かった、そう遠く離れてはいない。アーダム皇子に連れ去られたってアーベルト達から早馬が来たけれど、マリーは無事?』
『ええ、無事でいるわ。実は――』
私は知り得たことを全てグレイに話した。
透視と精神感応を駆使して知り得た誘拐の顛末に領地の現況から始まり、今日船室内で目覚めたこと。
アーダム皇子に聞いたアヤスラニ帝国の麻痺香の話。
何故かフレールに遭遇して逆恨みされ呪われかけたこと。フレールがアーダム皇子の共犯者となり、国を裏切る言動をしていたこと。
聖地に辿り着いたら私の貞操がヤバくなることも全て。
『分かった。急がなきゃいけないね。あのクソ女、兄さんの時と言い、本当にどこまでも余計なことを……』
おっと、グレイからそこはかとなくダークサイドな感情が。珍しく舌打ちをしている。
そもそもよく思っていなかった元義姉である。更に今回の事で相当腹に据えかねているようだ。
それはさておき、私は彼の考えを読んで驚いていた。
『グレイは最初からコスタポリに行こうとしていたのね。実は、私が乗せられている船もコスタポリへ向かっているの』
『船旅である以上はどこかで補給しないといけないからね……それにコスタポリは復興の真っ最中で船がひっきりなしに出入りしている』
人を攫ってきている以上、紛れ込めそうなコスタポリを選ぶはず――その確信があったんだ、とグレイは照れ臭そうに言った。
『それよりもマリー、アーダム皇子達にこうして連絡を取り合っていることを気付かれたら危険なのでは?』
『大丈夫よ、彼らは聖地で見せた以上の聖女の能力については知らなかったから』
『分かった。でも油断はしないでね。マリー、コスタポリで決着を付けよう。シルヴィオ殿下に連絡して軍艦で足止めをお願い出来る? 伝える内容は――』
その内容に私は妙案だと頷いた。
時間稼ぎをしている間に追い付くと思うから、とグレイは言う。
シルの協力を得ることも計算に入れていた彼は、つくづく頼りになる旦那様である。
『グレイ、助けに来てくれるのを待っているわ』
『うん。それと、僕達が追い付くまで、マリーはくれぐれも相手を刺激しないように軽挙妄動は控えて大人しくしていてね。
後……ヨハンとシュテファン、サリーナの三人を宥めておいて欲しい。三人共、滅茶苦茶殺気立ってるんだ』
特に三人がオス麿一行やアーダム皇子達をズタズタに殺してやる! と狂犬のようになっているらしい。
私を無事に取り戻す為に冷静になって欲しい、と必死で宥めたが、今度は私が無事ではなかったもしくは私を助けだした後は守り切れなかった責任取って自害するのだと言っているそうだ。
『わ、分かったわ……』
グレイが三人を呼んでくれたので精神感応で全員に声を掛けると、大号泣された。
勿論今回の事は不可抗力なので自害も禁じておきましたとも。
昏睡状態に陥った私を人質に取った上で、こちら側の護衛達の大半に煙を吸わせて無力化した。
その後オス麿達は馬を奪って逃走。
残った馬も時間稼ぎの為に尻を叩いて逃がした。シャンブリル川に出て漁民のボートを盗み、港町ジュリヴァへ向かって南下。
その際、私のドレスを剥いで、陽動として騎馬をナヴィガポール方面へと走らせた。
オス麿の配下の中に盗賊出身の男がおり、その進言によるものだった。
父サイモンの記憶の中での隠密騎士の報告によれば、表に出ず離れた場所から護衛をしていた隠密騎士達は、事態を覆す程の数が居なかったらしい。私が人質に取られていて、下手な動きが出来なかったというのもある。
彼らはすぐさま報告と増援を頼みに一人を城へ走らせ、残りは救助班と追跡班に分かれて行動したようだ。
追跡班にはグレイ、カール、馬の脚共、サリーナとナーテも加わったという。
カールは咄嗟にグレイと自分の口元を覆って倒れ、また馬の脚共やサリーナ達も口を覆って倒れた振りをしたので煙を吸った量はまだ少なくて済んだ模様。
オス麿達を逃がした後、散らされた馬達を取り戻した頃に少し遅れて出発したグレイ達は追跡を開始。
先行していた隠密騎士の案内で、オス麿達が二手に分かれたと聞いてグレイ達も二手に分かれることに。
ナヴィガポールへはグレイや馬の脚共、カール、サリーナ、ナーテ達が。
ジュリヴァへは土地勘のあるワイバーンのアーベルト・メレン達が向かったそうだ。
一方、オス麿達は無事ジュリヴァへ辿り着いたはいいものの、疲労困憊の所をたまたま戻って来ていたアーダム皇子に襲撃され、まんまと私を奪われてしまった。
アーダム皇子達が去ったところで追いかけてきたアーベルト達によって捕らえられ、尋問の末に城へと連行されて今に至る。
父サイモンは早馬での報告を聞くとすぐさま隠密騎士の増援を指示、領政総官クロヴラン・ピュトロワを通じてディディエ・シュルドーに陸路である街道を封鎖させ、ロイジウス・ウーファーには領都内警備の強化を命じていた。
視察に出る前にグレイが一時的に領主権限を父に託した形になっていたのは不幸中の幸いだったと思う。
精神感応で我が身の無事と現況をざっと伝えると、父サイモンは糸が切れたように机に崩れ落ちた。近くにいた母ティヴィーナが祈りの所作をして涙ぐんでいる。
『ああ、マリーちゃん。私の可愛い娘、無事で良かったわ!』
『グレイはお前を追って行った。今頃船を出しているに違いない』
『本当に心配をかけてごめんなさい。父、ありがとう! 母、必ず無事で戻って来るから! それまで父を宜しくね!』
精神感応を一旦切って、私はすぐさまグレイを探した。
ナヴィガポールを透視し、船乗りの一人の記憶を読む。ファリエロ達の船団がグレイや皆を乗せて慌ただしく出航したらしい。
ファリエロの船に絞って透視すると――見つけた!
***
何隻もの商船団が、固まって海上を進んでいた。
その先頭を切る帆船――船首に立ってオレンジ色の髪をなびかせながら望遠鏡を覗いている姿に、うっかり涙が出そうになる。
『グレイ、グレイ!』
感極まって名を呼びかけると、グレイははっと驚いたように望遠鏡を目から外した。
『っ、マリー!? 今何処にいるんだ!』
『ここよ!』
私は衛星写真から見た位置をそのままグレイの脳裏に送り込む。船の特徴も併せて伝えた。
『良かった、そう遠く離れてはいない。アーダム皇子に連れ去られたってアーベルト達から早馬が来たけれど、マリーは無事?』
『ええ、無事でいるわ。実は――』
私は知り得たことを全てグレイに話した。
透視と精神感応を駆使して知り得た誘拐の顛末に領地の現況から始まり、今日船室内で目覚めたこと。
アーダム皇子に聞いたアヤスラニ帝国の麻痺香の話。
何故かフレールに遭遇して逆恨みされ呪われかけたこと。フレールがアーダム皇子の共犯者となり、国を裏切る言動をしていたこと。
聖地に辿り着いたら私の貞操がヤバくなることも全て。
『分かった。急がなきゃいけないね。あのクソ女、兄さんの時と言い、本当にどこまでも余計なことを……』
おっと、グレイからそこはかとなくダークサイドな感情が。珍しく舌打ちをしている。
そもそもよく思っていなかった元義姉である。更に今回の事で相当腹に据えかねているようだ。
それはさておき、私は彼の考えを読んで驚いていた。
『グレイは最初からコスタポリに行こうとしていたのね。実は、私が乗せられている船もコスタポリへ向かっているの』
『船旅である以上はどこかで補給しないといけないからね……それにコスタポリは復興の真っ最中で船がひっきりなしに出入りしている』
人を攫ってきている以上、紛れ込めそうなコスタポリを選ぶはず――その確信があったんだ、とグレイは照れ臭そうに言った。
『それよりもマリー、アーダム皇子達にこうして連絡を取り合っていることを気付かれたら危険なのでは?』
『大丈夫よ、彼らは聖地で見せた以上の聖女の能力については知らなかったから』
『分かった。でも油断はしないでね。マリー、コスタポリで決着を付けよう。シルヴィオ殿下に連絡して軍艦で足止めをお願い出来る? 伝える内容は――』
その内容に私は妙案だと頷いた。
時間稼ぎをしている間に追い付くと思うから、とグレイは言う。
シルの協力を得ることも計算に入れていた彼は、つくづく頼りになる旦那様である。
『グレイ、助けに来てくれるのを待っているわ』
『うん。それと、僕達が追い付くまで、マリーはくれぐれも相手を刺激しないように軽挙妄動は控えて大人しくしていてね。
後……ヨハンとシュテファン、サリーナの三人を宥めておいて欲しい。三人共、滅茶苦茶殺気立ってるんだ』
特に三人がオス麿一行やアーダム皇子達をズタズタに殺してやる! と狂犬のようになっているらしい。
私を無事に取り戻す為に冷静になって欲しい、と必死で宥めたが、今度は私が無事ではなかったもしくは私を助けだした後は守り切れなかった責任取って自害するのだと言っているそうだ。
『わ、分かったわ……』
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