628 / 747
うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
聖女はつらいよ。
しおりを挟む
「……一年の、最も寒き死と眠りの暗夜を越えて、太陽神よ、今こそ子らの呼びかけに応え目覚め給え」
「この現世に、再び神の光と慈悲をもたらせ給え……」
今頃、外では日の出を迎えている事だろう。
グレイと交互に新年の聖句を唱えつつ、長々と祈りを捧げていると、ある時狙ったように初日の出の光が窓からスポットライトのように私に降り注がれた。
その瞬間、周囲からの驚嘆のようなざわめきが耳朶を打つ。
蝋燭やランプの灯りでさえもキラキラしていたのだ、初日の出の光に全身キラキラに輝き光度数の上がった今の私は、復活した太陽神ソルヘリオスの化身ともいえる存在である。いつでも宝塚やサンバカーニバルに参加出来るに違いない。
冗談はさておき、前世の太陽神信仰の如く。この世界の太陽神も冬至に一度死を迎え、新年で復活を遂げる、という筋書きで儀式が行われる。
それはまた信徒達も同じであり、冬至の日には人々は仮初の死を迎えることとなる。
ちなみに年末の大掃除はこの日に行われる。
新年に向け、特に炉の掃除がなされて新たな火が灯されるのだ。
日本でも『冬至粥』という風習があった。
陰極まった冬至に粥を食べる事で体の中に陽、つまり生命を取り入れ復活していくというものであるのだが、こちらの世界でも国によって多少の差はあるものの似た習慣がある。
ちなみにトラス王国の場合は、穀物や冬野菜、肉を一緒に煮込んだワイン煮を食べるのだ。
去年は残念ながら聖地への旅路で海上に居たのでありつけなかったけれど、今年は食べられて良かったと思う。
「「「「聖なるかな、聖なるかな、太陽神ソルヘリオス」」」」
新年の祈りの締め括りに全員で神を言祝ぐ聖句を唱和した後、私は頭を垂れる人々に向かって錫杖を掲げた。
そこから移動しながら厄落としをする神社の神主さんの如くシャンシャンと音を鳴らし、トラス王を始めとする王族や高位貴族達に順番に浄化と祝福を与えていく。
後ろに引きずる衣装は馬の脚共に持たせ、グレイに支えられながらの歩みである。
大聖堂では各家の代表として当主とその息子が出席という形だったが、それでもかなりの人数だ。
ちなみにその他の貴族達は、大聖堂での儀式が終わった後で向かうトゥラントゥール宮殿に集まることになっており、私はそこでも再び祝福の儀式をしなければならない。外国からの客人達も、だ。
祝福料金貰ってない以上、アイドルの握手会より酷い。
フーテンのマリーちゃんにとって聖女はつらいよ、である。
考えただけで憂鬱になりそうだったので、機械的に錫杖を動かしながら、私は別の――ここに来る途中の快挙について考えることにした。
実は、このトラス王国中の教会を統括する、ノートルサンテヴィヤージュ大聖堂――ちなみにサリューン枢機卿が責任者である――に来るまでの間、私達の馬車を襲撃せんと偽教皇の手の者達が集まっていたのだが、めでたく一網打尽に出来たのである。
自分が聖女という超能力者で良かったとつくづく思う。
まあ、聖女とその夫、賢者で元アヤスラニ帝国の皇子、アレマニア皇帝の次男が一つの馬車に乗ると情報を流し、全員亡き者にすれば偽教皇にとって安泰だと思考誘導の上、集団で襲撃してくるように仕組んだのは――何を隠そう隠密騎士や雪山の傭兵達。
勿論私も出掛けに馬の脚共に頼まれて一枚噛んでいる。
馬車の中から透視能力と精神感応を駆使して、曲者共の位置を隠密騎士達と共有したのだ。
馬の脚共を筆頭とした隠密騎士達が馬車を守り、変装したアルトガル達が馬車に注意し過ぎて回りが見えなくなった曲者共を囲い込むというサンドイッチ方式――相手はまさか超能力で位置から何から何までバレているとは思っても居なかったに違いない。
結果、全くこちらの狙い通りで面白いように捕まった。
入れ食い、入れ食いである!
捕らえた奴らは改めて私が脳内精査して情報をすっぱ抜いた後で、いずれ派遣元との交渉を行うことになるだろう。
身代金はたっぷりと弾んで貰おう、ククク。
ただ、おおむね問題は無かったとはいえ。
相手側を釣る為に馬車の速度を不自然に上げたりしたので、異常を感じたのであろう皆の顔は硬かった。
特に幼いヴェスカルは王都に入るなり息を大きく吐いていた。
大丈夫かとのイドゥリースの問いに対し健気に微笑んでいたが、精神的緊張を強いてしまったのは少し反省。
ん……? グレイが何だか険しい顔で数人の貴族を睨んでいる。どうしたんだろう?
――っと、お次は父とトーマス兄の番だわ。間に合って良かった。
「この現世に、再び神の光と慈悲をもたらせ給え……」
今頃、外では日の出を迎えている事だろう。
グレイと交互に新年の聖句を唱えつつ、長々と祈りを捧げていると、ある時狙ったように初日の出の光が窓からスポットライトのように私に降り注がれた。
その瞬間、周囲からの驚嘆のようなざわめきが耳朶を打つ。
蝋燭やランプの灯りでさえもキラキラしていたのだ、初日の出の光に全身キラキラに輝き光度数の上がった今の私は、復活した太陽神ソルヘリオスの化身ともいえる存在である。いつでも宝塚やサンバカーニバルに参加出来るに違いない。
冗談はさておき、前世の太陽神信仰の如く。この世界の太陽神も冬至に一度死を迎え、新年で復活を遂げる、という筋書きで儀式が行われる。
それはまた信徒達も同じであり、冬至の日には人々は仮初の死を迎えることとなる。
ちなみに年末の大掃除はこの日に行われる。
新年に向け、特に炉の掃除がなされて新たな火が灯されるのだ。
日本でも『冬至粥』という風習があった。
陰極まった冬至に粥を食べる事で体の中に陽、つまり生命を取り入れ復活していくというものであるのだが、こちらの世界でも国によって多少の差はあるものの似た習慣がある。
ちなみにトラス王国の場合は、穀物や冬野菜、肉を一緒に煮込んだワイン煮を食べるのだ。
去年は残念ながら聖地への旅路で海上に居たのでありつけなかったけれど、今年は食べられて良かったと思う。
「「「「聖なるかな、聖なるかな、太陽神ソルヘリオス」」」」
新年の祈りの締め括りに全員で神を言祝ぐ聖句を唱和した後、私は頭を垂れる人々に向かって錫杖を掲げた。
そこから移動しながら厄落としをする神社の神主さんの如くシャンシャンと音を鳴らし、トラス王を始めとする王族や高位貴族達に順番に浄化と祝福を与えていく。
後ろに引きずる衣装は馬の脚共に持たせ、グレイに支えられながらの歩みである。
大聖堂では各家の代表として当主とその息子が出席という形だったが、それでもかなりの人数だ。
ちなみにその他の貴族達は、大聖堂での儀式が終わった後で向かうトゥラントゥール宮殿に集まることになっており、私はそこでも再び祝福の儀式をしなければならない。外国からの客人達も、だ。
祝福料金貰ってない以上、アイドルの握手会より酷い。
フーテンのマリーちゃんにとって聖女はつらいよ、である。
考えただけで憂鬱になりそうだったので、機械的に錫杖を動かしながら、私は別の――ここに来る途中の快挙について考えることにした。
実は、このトラス王国中の教会を統括する、ノートルサンテヴィヤージュ大聖堂――ちなみにサリューン枢機卿が責任者である――に来るまでの間、私達の馬車を襲撃せんと偽教皇の手の者達が集まっていたのだが、めでたく一網打尽に出来たのである。
自分が聖女という超能力者で良かったとつくづく思う。
まあ、聖女とその夫、賢者で元アヤスラニ帝国の皇子、アレマニア皇帝の次男が一つの馬車に乗ると情報を流し、全員亡き者にすれば偽教皇にとって安泰だと思考誘導の上、集団で襲撃してくるように仕組んだのは――何を隠そう隠密騎士や雪山の傭兵達。
勿論私も出掛けに馬の脚共に頼まれて一枚噛んでいる。
馬車の中から透視能力と精神感応を駆使して、曲者共の位置を隠密騎士達と共有したのだ。
馬の脚共を筆頭とした隠密騎士達が馬車を守り、変装したアルトガル達が馬車に注意し過ぎて回りが見えなくなった曲者共を囲い込むというサンドイッチ方式――相手はまさか超能力で位置から何から何までバレているとは思っても居なかったに違いない。
結果、全くこちらの狙い通りで面白いように捕まった。
入れ食い、入れ食いである!
捕らえた奴らは改めて私が脳内精査して情報をすっぱ抜いた後で、いずれ派遣元との交渉を行うことになるだろう。
身代金はたっぷりと弾んで貰おう、ククク。
ただ、おおむね問題は無かったとはいえ。
相手側を釣る為に馬車の速度を不自然に上げたりしたので、異常を感じたのであろう皆の顔は硬かった。
特に幼いヴェスカルは王都に入るなり息を大きく吐いていた。
大丈夫かとのイドゥリースの問いに対し健気に微笑んでいたが、精神的緊張を強いてしまったのは少し反省。
ん……? グレイが何だか険しい顔で数人の貴族を睨んでいる。どうしたんだろう?
――っと、お次は父とトーマス兄の番だわ。間に合って良かった。
245
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。