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4.5 分かりづらい自己紹介
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「……こりゃ、リスニングとか、そういうもんじゃねえな、ははは……」
リスニングどころではない。
ディーリのややひきつった笑いも、もっともなところだ。
「……まさかおれも、物理的に存在する自分の国の文字に出くわすとは思いませんでした」
かなり引き気味に、アザミはその文字を見た。クマが深く目つきが悪い分、睨んでいるようにも見えるがそうでも無い。
実体としてそこにいる文字。
そして「ゐ」としか言わない文字は、もはや翻訳の魔法ですら意味を成さず。
「おまえ、ゐって言うのか?」
そんな中、ビリーがふと、理解したかのように声を上げた。
まるで言葉を解するような口ぶりだ。
「……!ゐ!!ゐゐゐ!」
嬉しそうに、ゐが飛び跳ねた。
合っている……らしい。
「そうか!ゐ、これからもよろしくな!」
「ゐ!!」
まさかの意気投合。
しかも何故かビリーは聞き取れるらしい。
「……あ、でも。それだと俺以外にわかる人がいないから看板とかに文字を書いたらいいと思うぜ」
そのビリーの言葉の直後に、ゐは自分の身体から黒い何かをちぎり文字を産む。
『ゐと いうなの ゐ それが ゐ』
翻訳魔法の呪印のおかげで、翻訳は文字にも及んでいる。
それ故に理解ができた他の数人も頷いた。
声のおかげで、壮年の男であることだけはどうにか理解できるのだが……。
呆気に取られていたシェザリオンが、ふと咳払いをする。
戦士たちはいっせいに向き直ると、ゆっくりとまた話を始めた彼女の声を聞いた。
「……現状、私たちが早急に対処すべきことがあります。あなた達には、さっそくですが腕試しとして任務を与えましょう」
凛とした響きが戻ってきた。
質問の間も与えぬまま、彼女は西の方角を指さした。
「あの西の方角に、およそ一万もの魔物の軍勢が迫っています」
あなた達の任務は、その殲滅。
『一人も残らず』『全て』、倒すのです。
毅然と告げる女神の声。戦士たちはそれぞれ顔を見合わせて、頷いた。
リスニングどころではない。
ディーリのややひきつった笑いも、もっともなところだ。
「……まさかおれも、物理的に存在する自分の国の文字に出くわすとは思いませんでした」
かなり引き気味に、アザミはその文字を見た。クマが深く目つきが悪い分、睨んでいるようにも見えるがそうでも無い。
実体としてそこにいる文字。
そして「ゐ」としか言わない文字は、もはや翻訳の魔法ですら意味を成さず。
「おまえ、ゐって言うのか?」
そんな中、ビリーがふと、理解したかのように声を上げた。
まるで言葉を解するような口ぶりだ。
「……!ゐ!!ゐゐゐ!」
嬉しそうに、ゐが飛び跳ねた。
合っている……らしい。
「そうか!ゐ、これからもよろしくな!」
「ゐ!!」
まさかの意気投合。
しかも何故かビリーは聞き取れるらしい。
「……あ、でも。それだと俺以外にわかる人がいないから看板とかに文字を書いたらいいと思うぜ」
そのビリーの言葉の直後に、ゐは自分の身体から黒い何かをちぎり文字を産む。
『ゐと いうなの ゐ それが ゐ』
翻訳魔法の呪印のおかげで、翻訳は文字にも及んでいる。
それ故に理解ができた他の数人も頷いた。
声のおかげで、壮年の男であることだけはどうにか理解できるのだが……。
呆気に取られていたシェザリオンが、ふと咳払いをする。
戦士たちはいっせいに向き直ると、ゆっくりとまた話を始めた彼女の声を聞いた。
「……現状、私たちが早急に対処すべきことがあります。あなた達には、さっそくですが腕試しとして任務を与えましょう」
凛とした響きが戻ってきた。
質問の間も与えぬまま、彼女は西の方角を指さした。
「あの西の方角に、およそ一万もの魔物の軍勢が迫っています」
あなた達の任務は、その殲滅。
『一人も残らず』『全て』、倒すのです。
毅然と告げる女神の声。戦士たちはそれぞれ顔を見合わせて、頷いた。
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