シャハルとハルシヤ

テジリ

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第二章 雪けぶる町

見開きの目蓋

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 ハンムルーシフを連邦軍に引き渡せと言ったって、今現在彼は救命筏に乗ってプカプカ浮いている。仕方なく軍の迎えが来るまで沈まないよう見張っていた所、突如付近の海中から潜水艦が1隻浮上して、筏からハンムルーシフと同伴者1名を回収した。

そして同伴者の彼は潜水艦に入る際、こちらの方を向いて敬礼した。おそらくは彼もまた、軍属の一人のようだった。その後潜水艦はたちまち海に沈んでいった為、どこに向かったかは分からない。



 まあ何だかんだでキオラ様はご無事だし、ウキンには連邦軍が居るようなので、概ね目的達成した私達は、そのままスミドへ引き返した。

 スミドのヨウゼン邸へ帰還後、キオラ様は質問攻めにされ、その全回答を元に検討を重ねた結果、ハンムルーシフによるウキン統治の実態が明らかとなった。

 ハンムルーシフは、若様時代から人心掌握にとても苦労していた。ある時それを誰かに相談したようで、その伝手をたどって密かに軍から人を呼び、良く訓練された軍人に勝る働き手なしと結論付けた。
 おそらく軍は軍で、地方支配を望む連邦政府の意向を受けており、アビス家と軍との一体化が進んだ結果、今回の暗殺未遂事件に繋がった。

 今回の一件で、スミドのヨウゼン家は傀儡化したウキン諸島を失ったばかりか、これからは目と鼻の先にある西海の要地から、駐留軍が直接睨みを効かせてくるのだ。

「そんな訳で、メノア姉様の縁談がまとまった。これでマリナル姉様の嫁ぎ先、ミズクズ太守のヘキサ家があれば、我々スミドと長年敵対するナルメも、三方向から挟み撃ちに出来る」

 ソピリヤ様はそのように結論付けた。家中の意見も大体皆それと同じ様な見方だった。

 ところで、身重のザビネ様と5人のお子様方は、知らせを受けて心配した夫のギリタ・ロンシュク様に呼び戻され、既に首都ポンチェト=プリューリに発った後だったが、ソピリヤ様と私とクサンナは、まだスミドに残っていた。

 そうしている内に軍に回収されていったハンムルーシフの裁判が、まず最初にスミド法廷で始まった。判決にはヨウゼン家の意向が強く働き、内乱罪が適用されて銃殺刑の判決が出た。
ハンムルーシフの国選弁護人が上訴し、次の裁判はナルメ法廷へと移った。

「わたくし、ナルメへ傍聴に参ります」

 キオラ様は、帰還後も頑として離婚を拒み、挙げ句の果てには周囲の反対を押し切ってスミド法廷で裁判を傍聴したのだが、それをまだまだ続けるつもりのようだった。愛娘の暴挙に手を焼いたスミド太守は、苦渋の末、キオラ様と親子の縁を切った。こうして自由を手に入れたキオラ様は、亡き母方の実家である武家ウラシッドに身を寄せた。

 ナルメ法廷では、一転して無罪判決が出た。今度は検察側が上訴し、裁判はポンチェト=プリューリの最終法廷へと移された。

 ここでようやく私も知ったのだが、ハンムルーシフは何故か、取り調べでも法廷でも完全黙秘を貫いていた。そのせいで明らかに余計な罪状が加わったり、結果として判決が重くなったり軽くなったりしているのだ。それを解説するニュース映像を眺めていると、次のニュースで息が止まった。

「シャハル!」

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