シャハルとハルシヤ

テジリ

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第一章 シャハルとハルシヤ

シャハルの長話

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 イェノイェとは、かつて逆賊討伐で名を上げた元武家で、既に解散しているが、今でも一族の多くは一所ひとところに暮らしている。

 *

 騒がしい妹等の声と、耳慣れた足音が聞こえてくる。そろそろ帰って来たのだなと思い、廊下に顔を出すと、向こうも私に気がついた。

 「ハルシヤ」

 彼、シャハル=イェノイェと、私ハルシヤは家名を同じくするだけでなく、母親同士が実の姉妹だ。

 「持って来たよ。一緒に食べよう」

 渡された薬屋の木箱を開けると、蜂蜜菓子の匂いがした。



 「

 蜂蜜菓子は皆で奪い合う必要がないほど大量にあったので、私は安心して味わっていた。シャハルが台所からお茶を貰って来て、飲みながら語り始めた。

 「今日はお祝いの席だったから、とにかく凄かった。ご三女のキオラお嬢様とアビス家の若様の結婚披露宴だったのだけど、緑の丘に巨大な天幕を張って、その下で執り行われた」

 「ふぅん」

 妹等は蜂蜜菓子を食うのに忙しく、私が適当に相槌を打つ。

 「僕は色んな大人にご挨拶をして、料理を食べた。余興には楽団が招かれていて、歌手がひっきり無しに歌っていた」

 「へぇー」

 「そのうち自由になったので、いつもみたいに食卓の下に潜り込んで料理をくすねていたら、誰かが掛布を捲った。思わずその子を引っ張り込んだら、ご六女のソピリヤお嬢様だった」

 「そりゃ大変だ」

 「危機一髪だったけれど意外なことに、ソピリヤお嬢様は人を呼ばなかった。秘密にしていただく代わりに遊ぶことになった」

 「何だそれ」

 「それで、出席者の子女達が追いかけっこをしている横で木登りをした。ソピリヤお嬢様は腕も細いし、衣装のせいで登りにくそうだったから、下から押し上げなくてはならなかった」

 「ふぅん」

 「何とか登り果せたら、下から悲鳴が聞こえて、ソピリヤお嬢様のお付きの人達が梯子を持って来させようとしていた。それで急いで降りたら、余計騒ぎになった。お付きの人達は大変なお怒りようで、僕は拳骨を食らった」

 「ひぇー」

 「でも大して痛くもなかったし、ソピリヤお嬢様も居なくなったしで清々して、そこいらに転がって、アナンが呼びに来るまで寝てしまった」

 「石頭だものな」

 気がつくと蜂蜜菓子が底を尽きていた。立ち上がったがシャハルに押しとどめられ、座り直した。妹等はお礼を言って立ち去った。

 「天幕に戻ると、そろそろお開きで皆集まっていた。そこへ舞台上に花嫁の父であるハンムラビ様が現れて、最後に一つお知らせがあると仰せになってから、横を向いて手招きした」

 「……」

 「すると男の子が1人走って登場して、ハンムラビ様の横に並んだ。男の子が正面を向くと、どよめきが起こった。男の子はソピリヤお嬢様だった」

 「えっ、…どういうことだ」

 「ハンムラビ様は婿養子を取らずに、ご自分の娘を後継者にするとおっしゃった。それも、男装させて男の教育を受けさせて、他家の跡取り息子に勝るとも劣らぬ、立派な後継者にするのだって」

 「そんなこと出来るのか」

 「知らない、でも普通じゃないよ。お父さんは帰ってすぐ集会所を訪ねていった。ハルシヤのお父さんも、今家に居ないよね」

 「さっき出てった」

 「今頃話し合ってるよ」



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