【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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いくさは人に 恋はおのれに

北住人

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霧越京の朝は、妙に騒がしい。
輿入れ翌朝の食堂――白無垢姿の英賀手は、勝ち戦のように胸を張って入場した。

(晴れて今日から正妻! 英賀手宗女、堂々のお披露目――!)

そう意気込んだ直後だった。



タンタンタン♪
トトトトト!!
スタスタスタ♫
しずしずしず…
しゃなりしゃなり✨️

廊下の奥から、軽やかな足音が奔流のように押し寄せる。

「阿諛ちゃん♪ じゃなかった長上! 朝餉食え」
「長上!! 両属朝の天音さまより文が」
「書類整理、今日もがんばろ♫」
「鼻は…もう治ったから安心して♡」
「ふわあ~眠✨️昨日はお楽しみでしたね💋」

わらわらわら女人がズラリ……
全員、揃いも揃って“媛”の名乗り。

海媛(うみひめ)だの、
管媛(くだひめ)だの、
鈴媛(すずひめ)だの、
雪媛(ゆきひめ)だの、
春媛(はるひめ)だの――

総勢、ざっと三十名。

英賀手、無言で火山噴火🌋。

「全員“媛”!?
 ねえねの美名をパクるとは不届き千万!!
 釘千本用意せよ!!」

長上は、三十人の媛軍団の背後で、目を細めた。

「……世が名付けた……流用だ」

「ねえねの御名を、他のおなごに流用?!
 長上……許すまじ……!」





凄腕医女は、英賀手に唯一、宮中からの同行を許された存在。
彼女は霧越京のどぶろくを愉しみながら、なぜか落ち着いた声で言い放った。

「ちなみに長上、皆さま方とは遅くても三日以内に
“夜更かし”を経験済みだそうで。
 未だに何もないのは、宗女くらいのものだと」

「つまり……あたくしだけ……  
 長上の……訪れが……ない……!?  
 田舎娘共30人が……ねえねより先に……!?」

管媛はクスクス。

「英賀手♪ まだ初心なの?
 やっぱりお母様になってあげようか? かわいらしい娘♡」  

他の媛たちも、次々と追随する。
「かっわいい~♫」「お子ちゃま~♪」
「プンプン赤ちゃん~♡」

英賀手はカチン💥

「お黙りィィ! あたくしは正妻です!! 北の方!!」

長上は、英賀手ひとりを睨みつける。

「……英賀手、なに宴会に残ろうとしているんだ。
 さっさと寝ろ。背が伸びなくなるぞ」

(背……!?)

英賀手の精神は、一瞬で崩壊した。

「(´・ω:;.:.… 
 ああ……怨霊最高……
 アイツなら男だし……許せる……
 あたくし……ただの北住人……
 ねえね……ごめんなさい……
 キヨキヨすぎて……永久の媛君……」



黄泉の奥から、薄ぼんやりとした影がふたり。

『……三十人も!? 長上……!
 もし俺に肉体があれば……っ(号泣バンバン)』

『英賀手、最高やん。
 正妻なのに♡』

英賀手は、初めて自身の霊力を恨んだ。





大広間の片隅。
英賀手は、ねえね藁人形を抱きしめて放心状態。

「……長上……もういいです……  
 あたくし……ねえねの隣で……  
 永遠に媛神してます……」

「……英賀手、結婚してくれないか?  
 俺以外のヤツと。ひさご辺りはどうだ」

「ヨヨヨ…😭だれが偽ねえねなんかと!!!
 この男好きがあ!!! (床バンバン!!)」

霧越京の朝は、今日も騒がしい。



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