【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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月に向かって彼は吼えた今宵は母の命日だ

有給

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鏡太郎は、朝のオフィスで上司に軽く頭を下げた。

「すみません、しばらく数日、有給をちょくちょく使います。家庭の事情です」

上司は眉をひそめ、机に置かれた書類箱をちらりと見ながら尋ねる。
「家庭の事情って、何だ? お前、独身だろ。結婚か?」

鏡太郎は書類に視線を落とし、淡々と答えた。
「いえ、結婚ではありません。身内のーー未成年の一時保護の関係です。緊急案件で、今日から数日、預かることになりました」

同僚が小さくざわめく。
「そんなことまで……?」
「書類手続きは後でまとめます。今日はまず対応優先です」

上司は納得したようにうなずき、余計な詮索もせずに、了解の意を示す。
鏡太郎も視線を逸らさず、静かに付け加えた。
「不在中も連絡を取ります。支障が出ないようにしますので」

外は都会の冬の灰色の空。ビル群の窓が朝の光を微かに反射する。
鏡太郎は鞄を肩にかけ、パソコンの電源を落とすと、静かに席を立った。

「家庭の事情」と一言で片付ける裏側には、今日から数日、少年と面会交流する予定があった。

児相とは既に手続きが済んでおり、親戚と巧みに誤認させるよう言い張り、
たち振る舞った。

鮎にも口止めは完璧だ。
胡散臭い愛人稼業の母の連れ子であるよりも、
得体のしれない公務員との同居生活の方が、
極めて社会的には優れている。

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