【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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サルヌリ朝

【自作】使者

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 サルヌリ朝の使者・タマル冠は、神鳴り山の麓へ到着した。
 タマル冠の目に入るのは、
 あやぎり朝の兵たちが、無人の村内を我が物ヅラで闊歩する姿。

「武人ハイタークめ、手酷い失態を」

 タマル冠は、ため息をつく。
 ハイタークは、あやぎり朝に攻め込んだ。
 いざ刺羽氏(さしばし)の砦を占拠した。
 だが砦は囮。

 ――その隙に、あやぎり朝の本隊は、
 神鳴り山とその麓一帯へ攻め入った。

 間の悪いことに、巡礼中のヒイナまで捕まった。
 サルヌリ朝の民草は、
 ヒイナの不在で罵声の捌け口を失い、不満は爆発寸前。

 ヒイナの従者達は、一人を除き全員が、
 捕虜交換で刺羽氏から戻った。
 口に出すのは言い訳ばかり。
 まったく呆れた者たちだ。


 ✦



「だから、この内(うち)の出番✨️」

 タマル冠は、ヒイナ奪還交渉を掲げーー
 あやぎり朝の長上の前に通される。

 が。

 いざタマル冠が着いてみれば、
 ヒイナは紅い服を着て、
 あやぎり朝の長上と、
 二人一組で縄跳びに興じている。

 これ如何に?

 ヒイナは、タマル冠には気付かずはしゃぐ。

「きゃーっ🤣、縄の回転早すぎ!
 大丈夫かなあ、ヒイナなのにこんなに遊んで」

 長上は使者来訪を知ってるはずなのに無視。

「いいに決まってるだろ~、
 ここはサルヌリ朝じゃない。人目なんか気にするな」

 ヒイナは、さらにはしゃぐ。
 まるで子供がえりだ。いや、れっきとした童女だが。

「ウン、みんなよそ者!
 愚痴も罵倒も聞かなくて良いって最高✨️」

 タマル冠は、わざとらしく咳払いする。

「げ、タマル冠……」

 ようやくこちらに気がついたか、この無礼者め。


 ✦


 タマル冠は、親愛を込めた微笑を向けたが、
 ヒイナは目を合わせようとしなかった。
 タマル冠は、気にせず話を持ち掛ける。

「サルヌリ朝へようこそ、長上。
 内(うち)はタマル冠、サルヌリ朝の使者。
 まずは、ヒイナをお返しくだされ」

 長上は、にべもなく断る。

「知らぬな。
 世は配下の砦を盗まれたんだが?
 それについて、謝罪もなしか?」

 タマル冠は、さっそく抗議する。

「よくも抜け抜けと💢!
 砦の代償には、贅沢すぎる占領地!

 ですがーー今日は単なる顔合わせ、
 これで失礼しますね。
 ヒイナが無事なら何よりです♪」

 タマル冠は、背を向けた。
 すると既に、
 あやぎり朝の兵士たちが周りを固めていた。
 タマル冠の護衛達は未練なく武器を捨て、次々に投降する。
 タマル冠は嘆いた。

「この狼藉者がっ💢
 ヒイナが居れば、人質など足りている」

 長上は、縄をヒイナに手渡すと、
 腕を組みながらタマル冠に言った。

「タマル冠は、演技が不得手の様子。
 宿泊中は、ヒイナに師事しては如何かな?」

 タマル冠は、内心青ざめた。
 この男……人質が、ヒイナだけでは不十分だと知っている。
 ヒイナ自身が告げたな。
 そこまで手懐けられるとは情けない。

 ヒイナは、縄とびの縄を、束ねながら呟く。

「だってタマル冠、ヒイナはもう解任だもの。
 今更ふつうの子に戻っても、お嫁さんにはなれないね?
 お妾さんでもましな方」

 タマル冠は、戴冠の正しさを改めて確信する。
 ヒイナ選びが終われば、迎えに来て下さるだろう。



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