【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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サルヌリ朝

【自作】美姫(びき)

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使者タマル冠までもが長上に捕まって、だいたいひと月位は経っただろうか。

唐突に戴冠(たいかん)が寵姫を一人伴い、
兵共も引き連れ、占領地へ来訪した。

交渉場所の天幕内。
同席したタマル冠は、惚れ惚れしながら見つめる。

(それにしても、寵姫のお姿の
 なんてお美しい事でしょう🙊……
 嗚呼、ついつい見惚れてしまう❤)





そして今、この天幕内にはたったの五名。

サルヌリ朝は三人。
戴冠・寵姫・タマル冠。

あやぎり朝からは長上(おさがみ)と、
槍使い匪躬(ひきゅう)の二名だけ。

互いに少し離れた場所で、待機中の雑兵たちは睨み合い。

この状況下にも関わらずーー
長上は、急にそそくさと立ち上がって言った。

「ちょっくら用を足したいのでな、しばし席を外させていただく」

戴冠と呼ばれる、髭面の男も立ち上がる。

「奇遇だな、ご一緒しても良いだろうか?」





匪躬が、怒りをあらわにして罵る。

「戴冠よ、怯懦に駆られたか?
 それ以上、阿諛(あゆ)に近づくな。
 貴様なんぞ、仕留めるなら一突きだ」

匪躬は、言わずと知れた槍の名手。
あやぎり朝の最高戦力。
コイツを倒せば、あやぎり朝の退却は必定。

つまりはーー相手にとって、不足なし。

「そりゃあ面白いッ!
 ぜひともやってみせてくれ」

武人二人はそう言いながら互いの武器を構え、
ここに、黒曜石槍🆚細石器の対決が始まった。





しかし、
一番臆病風に吹かれたのは、長上だった。
彼は、脇目も振らず天幕を脱出していく。
タマル冠は叫ぶ。

「待たぬか長上! 
 ……まさか、本当に花摘みだったのか?!」

いきり立つタマル冠は、傍らに座る寵姫に止められた。
そのまま戦いの行く末を見守る。





一見すると、得物の長い石槍が有利ーー
だが、サルヌリ朝が誇る細石器の斬れ味は、
四肢でも頸でも、実証済みのすぐれもの。

「そこだあ! くっ、かわしたか。
 なんの、まだまだあ💢 
 殺れ、殺るのだあ🔪🩸
 腰を入れろ、蹴散らすのだあ🙉💥!」

タマル冠は、熱い声援を送り続ける。
さながら死闘の実況中継だ。

力量は互角。

それが分かるからこそ、どちらの使い手も互いに一定距離を保ち、牽制と睨み合いが長く続いた。





細石器の使い手は、心理戦を展開する。

「ほれほれ、どうした~?
 匪躬はご主人様が見ていないと、
 何もしないのか~」

「ほざけ小童」

匪躬から速攻💥と見せかけて、
細石器の使い手は、踏み出した脚を狙われる。
しかし細石器の使い手も、流石の手練。
ひらり🍃と身を翻してよけると同時ーー

代わりに匪躬の懐へ入り込み、細石器で敵の肩を切り裂く。

タマル冠は、握った拳を振り上げる。

「よくやったアアア🔥🔪
 それでこそ武人だあ! ハイターク」

タマル冠は、深く深く頷く。

うむ😤。
猿知恵も無いが、武にだけは優れておる。
にいさまの家来なのだから、これくらい出来て当たり前!

「そうでありましょう、にいさま」

タマル冠は、うっとりと傍らの寵姫を見つめる。
寵姫は無表情。しかしその美貌は凄まじい。
サルヌリ宮廷の妃嬪たちが、束になっても敵わぬ程に。

「ところで……
 女姿もたいへんお似合いです🙊✨。
 でもよりによってハイターク風情と寵姫を演じるだなんて🙈💔
 ごくわずかながら、癪に障るのも確かです🙉💢」




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