【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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管媛《くだひめ》

恐怖!大出世の鬼

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 芸人・毛濔(もみ)と商人・雪蛤(はすま)は、
 その後も漁村で交流を深め、
 村人たちから別れを惜しまれながら、
 霧越京へと帰還した。

 軍医カンカは、多少は村人と打ち解けられたが、
 蒿雀氏そのものへの不信感を拭い去るには至らずーー
 自主禁漁は、その終わりすら見えない。

 ✦

 長上は、旧友の毛濔(もみ)と雪蛤(はすま)から、青二才の治世に関する詳細な報告を受けた。

「世は、青二才に会いに行く。管媛と羽丸も同行せよ」

 長上からの命を受け、
 管媛は、後宮の自室で羽丸を抱きしめると、涙を流した。

「かかさま? おなかが痛いのですか?
 ぼく、長上に言いつけてきます!」

「その必要はない」

 羽丸は、部屋の扉を見た。
 長上と、二人の女人。羽丸はキョトン。

 ーーだれだろう?
 それは海媛と、しせらだった。

 ✦

 5人全員が、早駕籠に乗り込む。
 羽丸は、管媛と母子二人きりになれてご満悦だ。

「かかさま~かかさま~、
 この前ぼくね、下の歯が抜けたの!」

 羽丸は、あんぐりと口を開いて指さして見せた。
 管媛は、羽丸の髪を撫でた。

「そう……屋根には投げた?」

「届かなかったから、ととさまが代わりに。
 でもちっともうまく投げられなくて、
 代わりにカンカが屋根に乗せた~♪」

 ✦

 途中で宿泊しながら何日もかけて、
 長上の一行は、目的地である新領主館に着いた。

 出迎えた青二才は、今にも卒倒しそうだった。
 長上は、深々と一礼した。

「青二才、本当にすまなかった」
「え?」

 青二才は、ひたすら困惑した。
 長上は顔を上げ、更に言葉を続ける。

「世は、そなたに赦しを乞う資格すらない」

 蒿雀氏には、大変世話になっておきながらーー
 亜久里も、青二才も、羽丸も、
 親子全員苦境に追い込んで、世は知らん顔していた。

 青二才。あなたは昔、両属地の野戦病院で、
 私に言った。

 ✦

 両属地の野戦病院。
 寝台横に座った長上ーー当時は衛生兵の阿諛が、
 柔らかな声で尋ねる。

「どしたん? 話、聞くよ」

 ドン底指揮官・青二才は声を震わせ、涙をこぼした。

「……おれ、本当は武人になんてなりたくなかった……
 畑耕して、絵を描いて暮らしたかったんだ……ウッ……」

 ✦

 長上は淡々と、当時の感想を述べる。

「あの頃は…正直言って呆れたし、
 その直後に円理朝の捕虜にもなってバタバタして、
 それどころじゃなかった。だが……」

 青二才は、ガクブルガクブル。
 その内心では、絶叫の嵐が吹き荒れる。

(なんでいまさら!?
 頼むから余計な事を思い出さないでくれ😱)


 ✦


 当時の青二才は、野戦病院で寝込みながらーー
 ふと、阿諛に自分の弱みを見せたことに気づき、顔面蒼白になった。

(ヤバい……あいつ匪躬の養子じゃん……
 匪躬に伝わったら、メッチャ恥ずかしい!
 その前に、阿諛を敵方に売り飛ばすしか……!)

 青二才は、小さく囁いた。

「な、なぁ……阿諛、ちょっとあっちに、
 傷病兵が居たような……ゴニョゴニョ……」

 阿諛は笑顔で手を振る。

「へー、行ってみるわ。ありがとね」

 阿諛は無事、円理朝捕虜になった。
 それから、青二才には全くよく分からないがーー
 阿諛はどうやら円理朝で気に入られ、なんだかんだで講和条件を整えると、

 両属地に両属朝を打ち立て、長上となった。
 その後も長上の出世街道は、とどまる所を知らない。


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