【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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タマル冠(たまるかん)

【自作】便り

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 杼媛(とちひめ)は、
 宮殿の使用人の手も借りて、ミョウバン水を引いた布地を用意する。
 杼媛が長上の私室を訪ねると、硯(すずり)と墨が用意されていた。

「杼媛。これからは墨磨りも頼まれてくれ」
「オホホ🪭くるしゅうない」

 墨は、意外と繊細で、力を込めると折れやすい。
 墨磨りには、非力な方が合っているのだ。
 杼媛は、墨磨り専属係となった。


 ✦


 霧彦は、杼媛に比べるとーー
 画が必要になるかも知れないという理由だけで、
 長上から同席が許可されている。

 そして留守役は、文の内容を吟味する係だ。
 送り先のサルヌリ朝だけでなく、
 報せの鳥が万が一、
 他朝の手へ渡っても支障がない範囲か、
 長上と長時間話し合う事も、しばしばあった。


 ✦


 ある日そこへ、呼んでも呼ばれてもいない人物が、出現した。

「ちょっと失礼しますね。
 長上、タマル冠が参りました🐵✨️」

 長上は、眉をひそめる。

「何の用だ。兄自慢は聞き飽きたぞ」

「そのようですね。
 皆方、最初は聞いてくださるのに、
 数日経ったら、途端に都合がつかなくなるんです🙉💬」

 霧彦は呆れた。

「なんだ、タマル冠にも自覚はあったのですか。
 だったら話題を変えるか、聞き役に回ればいいのに」

 杼媛は、同じく様子を見ていたが、
 硯へ墨を静かに置いて、ひそひそと話し出した。

「霧彦、あの方どうかしてましてよ。
 部屋付の使用人曰く、
 居室に戴冠の肖像を飾って毎日話し掛け、
 一人微笑んでいるそうです😅」

 霧彦は納得した。

「たぶん本当なんだろうな……
 タマル冠ならやりそうな事だ。下手な怪談より怖い😿👻」


 ✦


 タマル冠は、熱に浮かされたかのように言い募る。

「ですから、にいさまと文通なさっているのでしょう🕊️📨。
 内(うち)にも書かせてください。
 あて字は、地面に沢山書いて覚えてきました🐵✨️」

 長上は、タマル冠から目をそらした。

「それがどうした。布も墨も葦筆も、貴重なものだぞ。
 報せの鳥だって手塩にかけて育成している」

 タマル冠は憤慨した。

「わからない方ですね🌋!
 神鳴り山は、内(うち)の持ち物なんですよ。

 長上が産出する磁力石で、
 砂鉄や餅鉄の在処を探して何を企んでいるかは存じませんが🐵❓️。

 山の主(あるじ)の機嫌を損ねても、得などありません」

 長上は、早々に音を上げた。

「分かった分かった。
 もうタマル冠の好きに書け、
 ただ忠告するが、返事は期待するなよ」




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