【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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タマル冠(たまるかん)

【自作】貧すれば鈍する

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「レイヨ…タマルをたすけて…」

大空を、鳥が羽ばたく。サルヌリ朝の方角へと去っていく。

世間乎 宇之等 夜佐之等 於母倍杼母
飛立可祢都 鳥尒之 安良祢婆

(世の中を 憂しとやさしと 思へども
 飛び立ちかねつ 鳥にし あらねば)

ーー世の中をつらい、恥かしいと思うのだが、
  飛び立ち逃れることはできない。
  鳥ではないので。

【山上憶良(やまのうえのおくら)】






サルヌリ朝。
うるわしき鬼・戴冠はーー
あやぎり朝から届いたばかりの文をほうった。

「うわわっ、戴冠! よろしいのですか?」

ハイタークは、サルヌリ宮廷の床に滑り込み、文を片手キャッチ。

「燃やせ。大した内容ではない」
「戴冠、それなら床の雑巾がけをいたします!」
「愚かなりハイターク。墨で汚したいのか?」

ハイタークは、すごすごと引き下がった。
彼は宮廷の庭で文を焚きつけに、
里芋をいくつか焼いて、熱々のまま皮を剥いて頬張る。

「モグモグ……タマル冠、お元気であろうか?」





昨日も今日も、レイヨ冠からの返事はない。
明日も明後日も明々後日も、同様に。
あやぎり朝は、文を隠しているのでは?

タマル冠からレイヨ冠へ
レイヨ冠からタマル冠へ
あるいは、その両方を。

「長上! 内(うち)が鳥を飛ばす🐵💢」

何羽も、何十羽も、報せの鳥を放つタマル冠。
しかし、長上あての返事は届くが、
タマル冠には何もない。





「オホホ🪭 少し冷却期間を置いては?
 殿方はーー押せ押せ!
 では、腰が引けてしまいますことよ♪」

最年少の杼媛(とちひめ)は、訳知り顔で講釈を垂れる。
タマル冠は、ジトッ…と、年下相手に睨みつける。

杼媛は、長上のロリ婚反対主義によって清いまま。
だがこの小娘は、後宮で問題ばかり起こし、偽装初夜で媛となったのは有名な話。

本来媛とはとても呼べない。
実質タマル冠と同じなのに。





霧越京宮殿の後宮。ここは女の園。
タマル冠の加入前、一人の媛が去った。

それが管媛(くだひめ)、
蒿雀亜久里(あおじのあぐり)。
彼女は、前夫との間に一人息子を設けていた。

管媛以外の媛達は、全員が独身。
ゆえにタマル冠は、異変や不調を誤魔化せた。
医女の定期検診は、健康優良児だからと拒んだ。

出血は、
婚資の磁力石で蒐めた砂鉄を酸化させ、赤茶色やニオイを再現。

出血量には個人差があるので、
洗濯係の使用人たちは、気にもとめない。
唯一人、庭師の女は、ふと作業の手を止める。

ーーあの足さばき……
  身体の線が分かりづらい衣服……
  よもや。

だが、彼女は単なる庭師。
それにタマル冠は、結婚同盟によって嫁いだお方。
首尾よくご懐妊とあらば、あやぎり朝の媛達からの反感は必至。

長上のご指示かも知れない。きっとそうだ。



【引用資料】
万葉百科 奈良県立万葉文化館
万葉百科 >  歌詳細

歌詳細
世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

(2025/12/11 18:10アクセス)

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