②シャリム外伝 潜竜談

テジリ

文字の大きさ
17 / 20

腕白ぼうやとホイポイロイ

しおりを挟む
 帰宅したシャリムはシャハルが出て行ったと知るや否や、泣きじゃくりながら伴侶の部屋に引き篭もった。

「畜生、何でダメなの? しょうがないじゃん、好きなんだから。……あー、あの人の匂い……フッ、もう消える前にいっちょ抜いとくか」

 しばらく1人で快楽を追究していると、アリネがノックもせずに部屋に乗り込んで来た。

「出てってくれないか。人に見られてると気が散る」

「あーらら、太子様ったら結構なド変態ですね。ところで太子、本当に彼のつれあいで在り続けたいんですか。わたくしには、必死になって理想の兄に縋り付く、情けない弟の姿にしか見えないんだけど。
あ、分かった。太子って我儘だから。どんな愛情も全部良いとこ取りしたいんだ。まったく、最後の最後にとんだ暴君が産まれたものですね、これでヴィンラフ朝もお終いです」

「煩いな、良いよもう子供なんか。あの人は永遠に自分のものだ。その代わり自分も、永遠にあの人のものだ」

 そう言っていつの間にか寝落ちしたシャリムは、何となく寝苦しくなって目を覚ました。

「え? うわあっ、何で!?」

「んー、うるさいなあ。ここは僕のベッドでしょ、何か文句でもある?」

「あの、ええっとその、あなたの留守中にちょっと汚してしまいまして……」

「そんなの後で洗えば良いじゃん、おやすみシャリム」

 起きて真っ先に手を洗いに行ったシャリムは、急いで戻って来て気持ちを伝えた。

「このままでは、おままごとの恋で終わってしまう。貴方がいつかちゃんとした恋のお相手を見付けたら、こんな自分からは離れていってしまいます」

「そぎゃんね? 恋ってそがん良く無かよ? 大体面倒臭か~。それん僕、ホントは今ん仕事も嫌いじゃ無か。あれたい! 行きよる最中にボーッとすると。あれ良かつたい! 落ち着くと。むしろ着かん方が良かと。どうせ分からんど? 僕が今何を言ったのか」

 まあ僕は僕で一応目的があったから? 

それは事前に伝えておくべきだったと今では反省しているよ。
僕のもう一つの仕事は、文化人類学者だろ? まあ論文書くのとか、人付き合いとか会議とか面倒くさいし、学会からは離れちゃって久しいけど。
研究なんて人に見せる目的が無ければ、適当に乱読したり普段の生活で見て聞いたり経験した事を全部頭の中で自分なりに考えて、あ! こういう事か~、で済ませちゃえばそれで完成だからね。

で、僕が人生単位で取り組んでる研究テーマの1つが、どうすれば魂が傷つかずに済んだのか? 悪いのは全てチャイルド・マレスターのはずなのに、何故僕の魂は傷ついたのか? どうすれば傷つかずに済んだのか?

これはやはりスミドにも有形無形の倫理観として入って来ていた、海外由来の信仰が影響しているようだ。しかしそのお陰で、子供に無体を強いるのは絶対的に悪なのだと、それは絶対にしてはならないのだと。唯一絶対な神の教えでもって、僕はあの地獄の日々から救出された。


時代や社会文化が異なれば、そんな関係当たり前で寧ろ奨励されていて、その社会では男性皆が若い頃似たような目に遭ってても、全く傷付いていない場合がある。

じゃあ僕には被害者仲間や社会的洗脳が足りなかったのか? それとも、自分が次世代に同じ事をやって楽しむ権利が保障されてなかったから? 

いや寧ろ、歴史的に見れば世界中あらゆる場所で少年愛は存在したし、今も一部には存在する。

それは、単なる欲の捌け口としてでは無く、成人男性と少年の交流を通して培われる一人前の大人になるための諸儀式、イニシエーションの1種なのではないかと僕は考えた。

だからといって、僕はチャイルド・マレスターになるつもりは無いから。

あくまで健全な形をとって、決して魂が傷付くことのない、そんなイニシエーションとは何なのか、果たしてそんなものは存在するのか、それを気が付いたら大人になってた自分自身を通して、シャリムという腕白ぼうやを使って、どうなるか実践してみたかったという訳さ。


「……そういうの嫌いです。自分は実験動物か何かですか? 貴方もお父様も、院卒やら大卒なんて至極勝手な人間です。

色んな本を読んで沢山学問されてるのは分かりますが、そこで得た知識ばかり使って、それでまだ子供の自分と、ちゃんと1人の人間として向き合っていると、胸を張って自信を持って言えますか? 

この文献のこれを使ってこうしたらこう反応した、ああじゃあ次はこうしてみよう、それが役立つこともあるでしょうが、貴方達って本来とてもいけ好かない習性をお持ちなのに、それが評価されてお給与も高く貰えるような社会は、だから全体的に性格悪いんだろうなあって、常々思います。

ところでシャハル、貴方は今までの話を聴いて、自分から逃れられると思ってさぞかしホッとしていることでしょうが、甘いです。

貴方はただ黙って自分の側で愛されていれば良いんです。

でもそろそろどこか知らない国のチョコレートも食べたくなってきたので、自分のために買って来てくれてもいいですよ。ただし日帰りですけどね。それと、この歌知ってますか?」


 おいらの名前はポイポイロイ
 ホイポイロイたら ホイポイロイ
 笑わせるしか能のない
 ちゃらんぽらんの 根なし草

 おいらの名前はホイポイロイ
 ホイポイロイたら ホイポイロイ
 そこのイカしたべっぴんさん
 おいらと踊っちゃくれねえか

 おいらの名前はホイポイロイ
 ホイポイロイたら ホイポイロイ!


「知ってるよ。でもシャリムの場合、追い詰めるしか能がないの間違いでしょ? それに比べてホイポイロイって、なんて素晴らしいんだろう。いくら金持ちでも、メンヘラ束縛男よりずっとマシ」

「n次元でも浮気は駄目です! これはあくまでただの誘い文句ですからね? 自分と一曲踊って下さいな」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

後宮祓いの巫女は、鬼将軍に嫁ぐことになりました

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を祓う下級巫女・紗月は、ある日突然、「鬼」と噂される将軍・玄耀の妻になれと命じられる。 それは愛のない政略結婚―― 人ならざる力を持つ将軍を、巫女の力で制御するための契約だった。 後宮の思惑に翻弄されながらも、二人は「契約」ではなく「選んだ縁」として、共に生きる道を選ぶ――。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...