タイマヲマイタ 【園児・小学生時代】

テジリ

文字の大きさ
23 / 51
ヒステリック婆さん

土曜日生まれの子供は生きていくなかで苦労が多い

しおりを挟む
 ヒステリック婆さんの習字教室には、可愛くて快活で、優しくて陽気なきょうだいが居た。

その片方は、男の子だったからより厳しくしても構わないと思われたのか? はたまた灯枇あけびにも身に覚えがあるように、習字の筆の抜けた毛がピヨっと出ているのが気になって、手で抜くような極々ありふれた習性があったからか? とにかく男の子はその現場を、うっかりそういう癖が大嫌いな、心の狭いヒステリック婆さんに目撃されてしまった。

「この、手がいかんとたい!」

 ヒステリック婆さんは全く持って意味不明な事に、男の子をガミガミと罵倒し、挙げ句の果てには彼の手をピシャリと本気でビンタした。

「あんな事したら、習字が嫌いになっちゃうよ。可愛くて快活で、優しくて陽気な子供なのに」

 誰かがヒソヒソと、ヒステリック婆さんには聞こえないように言っているのが聴こえた。





 ヒステリック婆さんも極々稀に気まぐれを起こしたのか、はたまた教え子全員に、本当はめちゃくちゃ嫌われている事実が堪えて来たのかは定かでは無いが、日曜日の先生が代理で来た日に、お城の二の丸公園上空で、ブルーインパルスが飛んでいた事があった。この一大事は、西原にしばる児童館の習字教室の窓からも、一部始終を目撃出来たので、受講生達は皆お習字などそっちのけで、飛来音がする度窓の側まで駆けて行き、すげえすげえと喜んだ。

「土曜日の先生だったら、絶対見せてくれないね~!」

 誰かがうっかり、ありのままの感想を述べた。

「私が日曜日の先生に、見せてあげて下さいって頼んだんですよ!」

 へー、そう。でもそうやって結局怒るって事は、どうせ感謝されたかったんでしょ? それって全然優しさじゃないよ。失礼だとか何だとか、またガミガミガミガミ煩かったけど、何様のつもり? なんて反論は灯枇あけびの頭には一切思い浮かばす、ああ、先生も優しくなって来てるんだなあと、無知故の感慨を覚えていた。


 あまりにヒステリック婆さんに怒鳴られ過ぎて、灯枇あけびは自分の字に関しては上手い下手が分からない。何を書いても下手っぴに見えてしまう、悲しい習性が身についてしまった。そしてこれは習字学習者にはありふれた癖らしいが、筆圧が異様に強くなり、学校でも灯枇あけびの答案を採点していると手が汚れるのだと、ずっと先の担任教師にまで困り笑顔で指摘された。



 灯枇あけびは普段のヒステリック婆さんが出すノルマを完成させるのに一杯一杯で、特殊な昇段用の清書は提出できた試しが無かった。だから結局、習字教室から解放される6年生になっても尚、初段直前の級で成績は終わってしまった。だが世の中にはこういった、うまく行けばさっさと昇段が可能な裏技的近道があるものだから、人様の資格を聞いただけで簡単にひれ伏すのは、一旦待つべきなのかも知れない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

ゼロになるレイナ

崎田毅駿
児童書・童話
お向かいの空き家に母娘二人が越してきた。僕・ジョエルはその女の子に一目惚れした。彼女の名はレイナといって、同じ小学校に転校してきて、同じクラスになった。近所のよしみもあって男子と女子の割には親しい友達になれた。けれども約一年後、レイナは消えてしまう。僕はそのとき、彼女の家にいたというのに。

トウシューズにはキャラメルひとつぶ

白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。 小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。 あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。 隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。 莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。 バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。

夜寝たくなくて朝起きたくない

一郎丸ゆう子
絵本
大人のための絵本です。現代人って夜寝たくなくて朝起きたくない人が多いな、でも、夜は寝ないと困るし、朝は起きないとなんないなんだよね、なんて考えてたら出来たお話です。絵はcanvaで描きました。

処理中です...