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魔王の威厳
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魔王とは他者が恐れるが故に名付けた名前である。
他種族に多くの傷跡を残したギルトは言わずとも、スロウス以外を治める6つの国の王たちも魔王と呼ばれるに相応しい戦果を残している。魔族はこの七人の魔王たちによって成り立っていると言ってもいい……
……はずなのだが、魔族以外の種族はそう思っていない。魔王はただ一人――ギルト・ベルフェゴールだけだと思っているのだ。
これは他の魔王たちが弱いというわけではない。むしろ強い部類に入ると思う。そうでなければ今まで戦ってこれるはずはなかった。
ではどうしてこのようなことが起こっているのか。答えは明白。ギルトが強すぎたのだ。
他の魔族たちは戦術などを考えずに戦う。それ故にある程度の対処を立てることが可能であった。
だが、それはギルトの登場によって変わった。好戦的なのが取り柄の魔族とは思えないほどの冷静な判断。それに文句の一つも言わずに従う部下たち。極めつけは自分勝手が特徴な魔族が協力して戦うという今までの魔族の常識を破る事態――
故にどの種族もこう答える――
――今まで戦っていた魔王は本当の魔王ではない。すべての魔族を従える彼こそが本当の魔王――
ギルトの功績によって他の種族はギルトを魔王として、その他の魔王を四天王だと思い込んだ――六人いるわけだから六天王か。いや暴食と色欲は積極的に戦争をしていないから四天王であっているか。
これが他種族のギルトの認識――しかし、まだ終わらない。魔族間でのギルトの認識が残っている。
言わずとも魔族と言っても7つの国があるわけだ。当然、国によって考え方が異なる。
基本的に魔族は戦えるなら何でもいい。味方同士で戦わないのは効率が悪いから。味方を殺すのは他の種族を殺してからでいいからだと思っている。
しかし彼らでも相手にしたくない相手がいる。そう。それこそがギルトである。好戦的な魔族であってもギルトとの戦いは避けたかったのだ。それは戦う前から結果が見えているから――
これらの理由でギルトはすべての種族から恐れられる存在となっている。それが魔王。それが怠惰の魔王――ギルト・ベルフェゴールなのだ。
当然、スロウスも例外ではない。街中を歩くだけでギルトの姿を見た者たちの慌て、叫ぶ姿がが――
「おっ、ギルトじゃねえか! こっちにいい品が入ったんだ。見ていかないか?」
「悪いな。今日は違う用事があるんだ。また今度、見せてもらうことにするよ」
「あら、ギルちゃん! ちょっとちょっと! いいお野菜があるよ。どうだい?」
「それは気になるな。少し見せてくれないか?」
……ってことはない。スロウスの街は平和。そう、平和なのだ。
国民もギルトに対して一切、怯える素振りを見せない。それどころか自分たちと同じような扱いをしている。全くもって魔王の扱いではない。
それはギルトの命令でもあった。
――今のスロウスがあるのは俺の戦果ではない。皆が一つになったからこその結果だ。ただ俺はその中の一人。たまたま俺が指揮をとっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない――
それから、国民のギルトに対する態度は変わった。王としてではなく同じ国に住む少年だと。自分たちと変わらないスロウス民だと。
そういう経緯もあり、ギルトは国民に愛される王となっていた。誰でも親しみやすい素晴らしい賢王へと……
「ギルト兄ちゃん! 一緒に遊ぼ!」
ギルトの足下にすり寄ってくるは、ギルトよりも幼い子供たち。そんな子供たちでもギルトに絶対的信頼を置いていた。
「おっ、いいぞ。何をするんだ?」
戦争がなくなったスロウス。子供たちの笑顔が見れるのはギルトが望んでいたことだ。
「じゃあ、鬼ごっこしよう!」
「鬼はギルトお兄ちゃんね!」
「みんなぁ! 逃げろぉ!」
子供たちは一目散にギルトの元から散っていく。
「俺が鬼か。すぐに捕まえてしまうぞ?」
ギルトは勝利を確信した笑みを浮かべる。それは戦場でも同じこと。だが、不思議と怖い感じはしなかった。
「おらぁっ! いくぞぉっ!」
怠惰の魔王と言われながらもやるときはやる。それがギルトだ。
「ふふふ、こう見てみると、やっぱりギルちゃんも子供ね」
八百屋のおばさんが手加減することもなく子供たちを追いかけているギルトを見つめる。
「ああ。だが、アイツのおかげで、この国はいい国になった。本人は自分の成果と入ってないが、この光景はギルトがいてこそのものだよ」
鍛冶屋のおじさんはギルトとともに戦場に立っていたからこそわかる。自分たちがこうしていられるのはギルトが自分たちを導いてくれたからこそである。
「いい魔王様を持ったものだよ」
「ああ、そうだな。ただ……」
おじさんが言おうとしたことを、おばさんは理解する。恐らく自分も思うであろうこと……
「ギールトー! 私も混ぜて!」
「はぁ!? お前は本当に手加減無しでやるだろ!」
「大丈夫! 今日は死なない程度に加減するから!」
「それは戦いでの加減だ! 遊びの加減じゃない!」
「じゃあ、行くよ!」
「話聞けや! クソッ! お前ら本気で逃げろ! アイツは本当の鬼だ! 捕まったら死ぬぞ!」
「ひっどいなあ。命までは取らないよ」
「信用できるか!」
「……あれは平和と言えるのだろうか?」
「さあ? あの子が来てからギルちゃんは明るくなったけど……」
何気に先程とは比較にならないスピードで逃げ回るギルトとそれをギルトに劣るとも言えない速さで追いかけるミリティアをおばさんたちは困った表情で見ているのであった。
他種族に多くの傷跡を残したギルトは言わずとも、スロウス以外を治める6つの国の王たちも魔王と呼ばれるに相応しい戦果を残している。魔族はこの七人の魔王たちによって成り立っていると言ってもいい……
……はずなのだが、魔族以外の種族はそう思っていない。魔王はただ一人――ギルト・ベルフェゴールだけだと思っているのだ。
これは他の魔王たちが弱いというわけではない。むしろ強い部類に入ると思う。そうでなければ今まで戦ってこれるはずはなかった。
ではどうしてこのようなことが起こっているのか。答えは明白。ギルトが強すぎたのだ。
他の魔族たちは戦術などを考えずに戦う。それ故にある程度の対処を立てることが可能であった。
だが、それはギルトの登場によって変わった。好戦的なのが取り柄の魔族とは思えないほどの冷静な判断。それに文句の一つも言わずに従う部下たち。極めつけは自分勝手が特徴な魔族が協力して戦うという今までの魔族の常識を破る事態――
故にどの種族もこう答える――
――今まで戦っていた魔王は本当の魔王ではない。すべての魔族を従える彼こそが本当の魔王――
ギルトの功績によって他の種族はギルトを魔王として、その他の魔王を四天王だと思い込んだ――六人いるわけだから六天王か。いや暴食と色欲は積極的に戦争をしていないから四天王であっているか。
これが他種族のギルトの認識――しかし、まだ終わらない。魔族間でのギルトの認識が残っている。
言わずとも魔族と言っても7つの国があるわけだ。当然、国によって考え方が異なる。
基本的に魔族は戦えるなら何でもいい。味方同士で戦わないのは効率が悪いから。味方を殺すのは他の種族を殺してからでいいからだと思っている。
しかし彼らでも相手にしたくない相手がいる。そう。それこそがギルトである。好戦的な魔族であってもギルトとの戦いは避けたかったのだ。それは戦う前から結果が見えているから――
これらの理由でギルトはすべての種族から恐れられる存在となっている。それが魔王。それが怠惰の魔王――ギルト・ベルフェゴールなのだ。
当然、スロウスも例外ではない。街中を歩くだけでギルトの姿を見た者たちの慌て、叫ぶ姿がが――
「おっ、ギルトじゃねえか! こっちにいい品が入ったんだ。見ていかないか?」
「悪いな。今日は違う用事があるんだ。また今度、見せてもらうことにするよ」
「あら、ギルちゃん! ちょっとちょっと! いいお野菜があるよ。どうだい?」
「それは気になるな。少し見せてくれないか?」
……ってことはない。スロウスの街は平和。そう、平和なのだ。
国民もギルトに対して一切、怯える素振りを見せない。それどころか自分たちと同じような扱いをしている。全くもって魔王の扱いではない。
それはギルトの命令でもあった。
――今のスロウスがあるのは俺の戦果ではない。皆が一つになったからこその結果だ。ただ俺はその中の一人。たまたま俺が指揮をとっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない――
それから、国民のギルトに対する態度は変わった。王としてではなく同じ国に住む少年だと。自分たちと変わらないスロウス民だと。
そういう経緯もあり、ギルトは国民に愛される王となっていた。誰でも親しみやすい素晴らしい賢王へと……
「ギルト兄ちゃん! 一緒に遊ぼ!」
ギルトの足下にすり寄ってくるは、ギルトよりも幼い子供たち。そんな子供たちでもギルトに絶対的信頼を置いていた。
「おっ、いいぞ。何をするんだ?」
戦争がなくなったスロウス。子供たちの笑顔が見れるのはギルトが望んでいたことだ。
「じゃあ、鬼ごっこしよう!」
「鬼はギルトお兄ちゃんね!」
「みんなぁ! 逃げろぉ!」
子供たちは一目散にギルトの元から散っていく。
「俺が鬼か。すぐに捕まえてしまうぞ?」
ギルトは勝利を確信した笑みを浮かべる。それは戦場でも同じこと。だが、不思議と怖い感じはしなかった。
「おらぁっ! いくぞぉっ!」
怠惰の魔王と言われながらもやるときはやる。それがギルトだ。
「ふふふ、こう見てみると、やっぱりギルちゃんも子供ね」
八百屋のおばさんが手加減することもなく子供たちを追いかけているギルトを見つめる。
「ああ。だが、アイツのおかげで、この国はいい国になった。本人は自分の成果と入ってないが、この光景はギルトがいてこそのものだよ」
鍛冶屋のおじさんはギルトとともに戦場に立っていたからこそわかる。自分たちがこうしていられるのはギルトが自分たちを導いてくれたからこそである。
「いい魔王様を持ったものだよ」
「ああ、そうだな。ただ……」
おじさんが言おうとしたことを、おばさんは理解する。恐らく自分も思うであろうこと……
「ギールトー! 私も混ぜて!」
「はぁ!? お前は本当に手加減無しでやるだろ!」
「大丈夫! 今日は死なない程度に加減するから!」
「それは戦いでの加減だ! 遊びの加減じゃない!」
「じゃあ、行くよ!」
「話聞けや! クソッ! お前ら本気で逃げろ! アイツは本当の鬼だ! 捕まったら死ぬぞ!」
「ひっどいなあ。命までは取らないよ」
「信用できるか!」
「……あれは平和と言えるのだろうか?」
「さあ? あの子が来てからギルちゃんは明るくなったけど……」
何気に先程とは比較にならないスピードで逃げ回るギルトとそれをギルトに劣るとも言えない速さで追いかけるミリティアをおばさんたちは困った表情で見ているのであった。
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魔王って結構僕達に似てる所もあって、少し可愛いなと思いました。
威力を全開にする事を大々的に言う。
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……流石です。
疑問に思ったところは、魔王の種族なのですが、悪魔なのでしょうか?
しかし、人間の知能を下げていると書いてあったので悪魔では無いですね??
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そそりますね(笑)
僕も異世界系を書いているので読んでいただけるとありがたいです。
感想ありがとうございます!
僕自身は魔王の種族は魔族のつもりですが……書いてなかったですかね? すいません(土下座)
一応、人族が賢いだけで魔族が頭悪いわけではありません。ただ単細胞なだけで(笑)
もしよろしければ、もう一つの作品の方も宜しくお願いします。