精霊殺しの学園生活

はる

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第3章 交流戦

アリスの選択

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 リンたちが生徒会室にいる頃――

 「ねえ、アリス? どうするの?」

 アリスの隣にいる少女――リーゼロッテがアリスの表情をうかがう。

 「うーん、どうするかな……」

 アリスは頭を抱えて唸っている。それを見て、リーゼロッテも疲れたようにため息をつく。どうしてこうなっているのかというと、時は少々さかのぼる――





 数時間前、アリスはアルベルトに呼ばれて王宮へ訪れていた。そしていつも通り、謁見の間でアルベルトと対面していた。しかし、いつもと違うのは、その場にリーゼロッテがいたことだった。
 何故、リーゼロッテがこの場にいるか疑問に思ったアリスだが、だったら余程、重要な話をするのではないと勝手に決めつけた。そしてアルベルトが口を開く――

 「この間のファフニールの件だがな……」

 なんと、リーゼロッテがいるこの場で、アリスが”アリア”だと話してしまったのだ。思わずアリスは目を見開いてしまったが、リーゼロッテは落ち着いたまま、席に座っていた。よく考えれば、アリスがこの場にいる時点で王族と関係を持っていると示しているようなものだが。
 
 しかし、ファフニールの事件はこれから話される本題の前触れに過ぎなかったのだ。むしろ、アリスが”エルフリーデ”所属の人間ということを示すだけのものであった。

 「……それでだ。近々、イーストでの交流戦があるだろう? それに参加して欲しいのだ、アリス」

 「交流戦にですか……?」

 アリスは思わず聞き返してしまう。なんといってもアリスは”エルフリーデ”の人間なのだ。交流戦に出てしまえば勝負にならないことぐらいアルベルトも承知しているだろう。

 「そうだ。代表の一員として頑張って欲しい」

 「しかし――」

 「それにお前はこう思っているだろう。『俺が出ていいのか』と。大丈夫だ、問題ない。向こうにもお前みたいな生徒がいるそうだ。それも二人だ。どちらが不利か言わなくてもわかるだろう?」

 アルベルトが腕を組んでいる応える。

 (”エルフリーデ”に匹敵する組織……”神無月”か。”神無月”に学生が二人もいるのか? それなら、俺が出ないと不利だな……)

 アリスは片膝をついたまま考える。交流戦に国の戦力を入れるのかと。

 ――”神無月”とはサウスで言う”エルフリーデ”に匹敵する組織の名前である。サウスの王族の名”エルフリーデ”を用いているのと同様、イーストも王族の名”神無月”が用いられている。

 「それで、交流戦に参加する”神無月”は誰なのですか?」

 「うむ、それはだな……”炎帝”と“破壊神”が出るようだ」

 「”炎帝”と”破壊神”?」

 聞き覚えのない名前にアリスは首をかしげる。

 「わからないのも無理はないだろう。”炎帝”と”破壊神”は1年前に”神無月”に入ったのだ」

 さらに、アルベルトは言葉を続ける。

 「それに、”炎帝”は火の王級精霊、”破壊神”は光の神獣精霊と契約しているようだ」

 「……ッ!? それは本当ですか!?」

 衝撃の事実にアリスは思わず立ち上がってしまう。イーストに確認されている王級精霊は火の王級精霊のみ。神獣精霊も一体のみだ。つまり――

 (学生が国の戦力なのか!?)

 国を支える四神、王級精霊、神獣精霊。イーストの所持する三体の内の二体を学生が所有しているのだ。ただ事ではないとアリスは驚愕する――そう思うアリスも王級精霊二体と契約しているので説得力がない。むしろ、一人で占拠しているため、”炎帝”たちよりも、たちが悪い。

 ちなみに神獣精霊とは唯一、王級精霊に対抗できる力をもった精霊の総称である。例えば、サウス最強の実力を持つガイアの契約精霊――不死鳥こそが火の神獣精霊なのである。王級精霊は他の精霊にはない唯一無二の力を持っているが、神獣精霊も例外に漏れず、神獣精霊特有の能力を持っている。イーストが所有している火の王級精霊の能力が”浄化”。これに対して、ガイアが所有する火の神獣精霊の能力は”再生”である。この二つの能力は、火属性の中では彼ら以外、誰も扱うことができない。この力をもって、彼らは精霊の頂点に君臨している。

 「わかりました。しかし、私が交流戦に出られるとは限らないのでは?」

 仮にアリスが出ようとしても、1年生の枠はリーゼロッテでほぼ決まりであろう。なんせ、代表戦で決勝まで勝ち上がっただけではなく、ファフニールにも立ち向かったのだ。そんなリーゼロッテの評価は生徒の中でも高いだろう。
 対するアリスの評価はどうだ? グレンに勝った。それがどうした? で終わってしまう。交流戦は3年生で固めるとアリスは知っているので、どうするのかと問いかける。
 
 アリスに対するアルベルトの答えは――

 「俺の”不思議な魔法権力”でなんとかしよう」

 「駄目に決まっているでしょ!」

 これはアリスの言葉ではない。アルベルトの横に立つリーゼロッテがアルベルトに向かって怒鳴りつける。

 「何が”不思議な魔法権力”よ! ふざけているの! 大体、お父様は――」

 リーゼロッテは不思議な魔法=権力と理解しているのであろうか。それとも、親子だから自然と理解できてしまうのか。どちらにしろ、アルベルトは愛する娘に言われるがままだ。しかも、心なしか嬉しそうだ。

 (ドMか!? それとも娘に怒鳴られて嬉しいのか!? ……どちらもか)

 今も嬉しそうにリーゼロッテの説教を聞いているアルベルトにアリスは心底、呆れるばかりだ。アルベルトから視線を外すと、宰相たちもぐったりとしていた。

 (お互い、苦労するな……)

 アリスは学園に通っていたりとアルベルトと顔を合わすのは稀だが、宰相たちは毎日だ。アリスは日々苦労している宰相たちに同情する。

 (ご愁傷様です……)

 アリスは心の中で手を合わせ、宰相たちの今後を願った。





 ――そして、現在に至る。リーゼロッテの説教が終わった後は特に話はなく、交流戦に出るかどうか決めておけとのことだった。

 (出てもいいが……リーゼロッテが候補に選ばれているよな……はぁ)

 隣を歩いているリーゼロッテを見て、アリスの足取りは重くなる。なんとか方法はないかと模索していると――

 (いっそのこと、リンさんに聞いてみるか。何か対策を取ってくれるかもしれないしな……)

 そう決めると、アリスはリーゼロッテとともに、リンの元へ足を運んだのであった。
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