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第4章 忍び寄る敵
プロローグ
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「……次はここだな」
漆黒の闇の中、一人の男が呟く。
「作戦は以前、話した通りだ。お前は“精霊殺し”の相手をしろ。俺は”炎帝”と”破壊神”の相手をする。アレが現れ次第、すぐに撤退だ」
「……わかった」
少女はただ頷くだけ。単に男の指示に従うだけだ。
「しっかしまぁ、お前が“精霊殺し”の相手をしたいだなんてなぁ。普段、感情を表さないから、お前には感情がないものだと思ってたぜ。それともなんだ、アイツと同じ二つ名だから興味を持ったのか?」
無言――少女は男の質問に答えない。まるで興味がないと言わんばかりに。
「ま、どうだっていいがな。俺は任務を成功させれば、それでいい。サウスのカギはファフニールを相手してもらっている間に手に入れた……これで残るは2つ。このままいけば……」
男は静かに笑う。成功する未来を見据えて――
「任務実行は明日の夜だ。それまでは自由にしてもいい」
そう言って、男は闇夜の中へと消えていった。
闇夜に一人残された少女は何かを考えるかのようにたたずんでいる。少女が考えることはただ1つ――
「……やっとこの時が来た」
待ち望んだ。どれほど、この日を待ったか。
自分には名前がなかった。自我が芽生え始めた頃にはすでに施設へと入れられていた。
何の施設かはわからなかった。その時の自分はあまりにも幼かったからだ。
その施設では多くの実験が行われた。主に身体に関係するものであった。しかし、幼い頃から受けていたものに違和感は覚えず、当たり前のものとして受け入れていた。
ただ、人に言われるまま生きる日々、果たしてそれは生きていると言えるのだろうか――
しかし、それは突然、終わりを迎えることとなる。何者かの襲撃により施設は破壊された。その襲撃者は一人で施設の大人たちを殺していった。たった一人でだ。
襲撃者が一人で施設を破壊している間、もう一人の襲撃者が少女の元へと近づいてくる。
少女は警戒態勢に入ろうにも思うように動けなかった。何故かはわからない。しかし、これだけはわかった――
――死――自分も施設の大人たちのように殺されるのだろうと察する。しかし、それは杞憂に終わる――
「心配しなくてもいいよ。僕は君たちを迎えに来ただけだから」
殺伐としたこの状況で目の前の襲撃者――人間が持つとは思えない銀髪紅眼の青年は平然とした態度で少女に語りかける。もちろん、少女が警戒の姿勢を解くことはない。
やれやれと青年は首を振り――
「僕が生きるという意味を教えてあげるよ――」
少女は青年の言葉に興味を持ち、青年に着いていくことにした。
少女は青年から多くのことを学んだ。生きる、自分の価値、そして自分とは――
少女は青年に戦いについても学んだ。青年には勝てないのはもちろん、襲撃時に施設の大人たちを殺していた人にも勝てなかったが、それでも自分は全員の中で3番目の実力を持つまで成長し、ある称号をもらった――
(私は彼に恩返しをする……)
少女が思い浮かべるは自分という人間を育ててくれた青年。彼の野望を聞いたときは戸惑ったが、彼のためならば、命を投げる覚悟もあった。
(でも、それだけじゃ駄目だ……)
彼の願いを叶えるのは当然。少女にはやるべきことがあった。
(“精霊殺し”は二人もいらない……)
彼がくれた称号――それは少女にとって何よりも大切なものであった。彼女が彼女たる証なのだから――
「どちらが本物の“精霊殺し”か決着をつけようじゃないか――アリス――」
漆黒の闇の中、一人の男が呟く。
「作戦は以前、話した通りだ。お前は“精霊殺し”の相手をしろ。俺は”炎帝”と”破壊神”の相手をする。アレが現れ次第、すぐに撤退だ」
「……わかった」
少女はただ頷くだけ。単に男の指示に従うだけだ。
「しっかしまぁ、お前が“精霊殺し”の相手をしたいだなんてなぁ。普段、感情を表さないから、お前には感情がないものだと思ってたぜ。それともなんだ、アイツと同じ二つ名だから興味を持ったのか?」
無言――少女は男の質問に答えない。まるで興味がないと言わんばかりに。
「ま、どうだっていいがな。俺は任務を成功させれば、それでいい。サウスのカギはファフニールを相手してもらっている間に手に入れた……これで残るは2つ。このままいけば……」
男は静かに笑う。成功する未来を見据えて――
「任務実行は明日の夜だ。それまでは自由にしてもいい」
そう言って、男は闇夜の中へと消えていった。
闇夜に一人残された少女は何かを考えるかのようにたたずんでいる。少女が考えることはただ1つ――
「……やっとこの時が来た」
待ち望んだ。どれほど、この日を待ったか。
自分には名前がなかった。自我が芽生え始めた頃にはすでに施設へと入れられていた。
何の施設かはわからなかった。その時の自分はあまりにも幼かったからだ。
その施設では多くの実験が行われた。主に身体に関係するものであった。しかし、幼い頃から受けていたものに違和感は覚えず、当たり前のものとして受け入れていた。
ただ、人に言われるまま生きる日々、果たしてそれは生きていると言えるのだろうか――
しかし、それは突然、終わりを迎えることとなる。何者かの襲撃により施設は破壊された。その襲撃者は一人で施設の大人たちを殺していった。たった一人でだ。
襲撃者が一人で施設を破壊している間、もう一人の襲撃者が少女の元へと近づいてくる。
少女は警戒態勢に入ろうにも思うように動けなかった。何故かはわからない。しかし、これだけはわかった――
――死――自分も施設の大人たちのように殺されるのだろうと察する。しかし、それは杞憂に終わる――
「心配しなくてもいいよ。僕は君たちを迎えに来ただけだから」
殺伐としたこの状況で目の前の襲撃者――人間が持つとは思えない銀髪紅眼の青年は平然とした態度で少女に語りかける。もちろん、少女が警戒の姿勢を解くことはない。
やれやれと青年は首を振り――
「僕が生きるという意味を教えてあげるよ――」
少女は青年の言葉に興味を持ち、青年に着いていくことにした。
少女は青年から多くのことを学んだ。生きる、自分の価値、そして自分とは――
少女は青年に戦いについても学んだ。青年には勝てないのはもちろん、襲撃時に施設の大人たちを殺していた人にも勝てなかったが、それでも自分は全員の中で3番目の実力を持つまで成長し、ある称号をもらった――
(私は彼に恩返しをする……)
少女が思い浮かべるは自分という人間を育ててくれた青年。彼の野望を聞いたときは戸惑ったが、彼のためならば、命を投げる覚悟もあった。
(でも、それだけじゃ駄目だ……)
彼の願いを叶えるのは当然。少女にはやるべきことがあった。
(“精霊殺し”は二人もいらない……)
彼がくれた称号――それは少女にとって何よりも大切なものであった。彼女が彼女たる証なのだから――
「どちらが本物の“精霊殺し”か決着をつけようじゃないか――アリス――」
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