精霊殺しの学園生活

はる

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第4章 忍び寄る敵

祠の謎

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 「――リーゼロッテ、そろそろ帰るぞ」

 剛毅の部屋を後にして、アリスはリーゼロッテが向かった玲奈の部屋に足を運んでいた。

 「あっ、もう話が終わったんだ。じゃあ、玲奈。またね」

 「ええ。あなたとの話は楽しかったわ。またいつでもいらしてね」

 「うん!」

 そう言って、玲奈の部屋から出て、アリスと一緒に宿へと帰って行った。





 リーゼロッテとの帰り際――

 「いつの間にか随分と仲良くなったじゃないか?」

 アリスが部屋に入ったときには、二人とも打ち解けていて仲よさそうに話していた。それこそ年相応の少女たちのように。

 「うん、意外と話が合ってね。思わず盛り上がっちゃった」

 その時のことを思い出しているのだろうか、リーゼロッテは楽しそうに話している。

 「それはよかった。ちなみに、どんな話をしてたんだ?」

 アリスの問いにリーゼロッテは一瞬で顔を真っ赤にして――

 「べ、別になんでもいいでしょ! それに乙女の話を聞くのは駄目だよ!」

 「お、おう。なんかすまん……」

 あまりにもリーゼロッテが必死なので、話の内容を聞くことは諦めた。そして、アリスは新たに学ぶ。

 (女の子に話の内容を聞いてはいけない……)

 こうして、常識を知らない一人の少年は成長の一歩を遂げるのであった。





 「バイバイ、アリス!」

 「おう」

 リーゼロッテが泊まっている宿まで送り届け、アリスは自分も宿へ帰ろうとする――が、その前にやるべきことがある。

 (……おい、聞こえるか?)

 しばしの沈黙。そして――

 ――どうしたのだ、アリス?――

 どこからともなく、脳内に声が響く。紛れもない。麒麟の声である。

 アリスは以前、麒麟と仮契約していた。力こそ共有していないが、互いの距離に関係なくコンタクトが取れる。それによって麒麟とコンタクトが取れていた。

 無事に麒麟と繋がれていたことに安堵し、アリスは今回の用件を述べていく。

 (突然すまない。色々とやっかいなことができたんだ。本題に入る前にそちらの様子はどうだ?)

 ――こちらは其方らが来てから変わったことはない。無論、封印を解いた奴らも姿を見せていない――

 少なくとも現在の時点でセントラルには行っていないと答える。つまり奴らが今、イーストにいる可能性が高くなったともいえる。

 (そうか。では、本題に入る。?)

 ――いかにも。祠はすべての国にある。やっかいなことにな。そうでもしなければ、間に合わなかったのだ――

 あの時は数が多かったという。その精霊たちを封印するにはセントラルだけでは収まらない。結果的に各地に封印されることとなったようだ。

 ――訊くが何故、そのようなことを?――

 何もないのに話しかけることはない。麒麟の方は問題がなかったのだから、アリス側に問題があったと麒麟は判断する。

 (実はな、祠が破壊されるという事件が起こっているんだ。そのことで気に障ったことがあったから訊いてみたんだ)

 ――そうか。で、その場所は?――

 (イーストだ)

 アリスの言葉に麒麟は黙り込む。それと同時に息を飲むのも雰囲気でわかる。

 (どうした? 何か問題があったか?)

 ――いや、我の思い過ごしかもしれん――

 気まずそうに話す麒麟からは、なんともいえない雰囲気が出ている。

 (思い過ごしでもいい。何か疑問にあったことがあれば言ってくれ)

 ――ふむ、そうだな……――

 麒麟は少し考えた末に――

 ――――

 (……はぁ? どういうことだ?)

 アリスの予想ではサウスであったようにファフニールのような精霊が封印されていると踏んでいた。そして、再び暴れさそうと。
 しかし、麒麟が言うには、人に害を為す精霊など封印されていない。仮に封印が解かれたとしても問題ないと。

 ――疑問に思うのも無理はない。そもそもイーストには7つの祠があるのだからな。何か意味あるものと思われるかもしれんが、そこまで重要なものではない。現に今は6つが破壊されているが、何も起こっていないだろう?――

 麒麟の言う通りだ。今は何も問題は起こっていない。

 (俺の思い過ごしなのか?)

 このままいっても何も起きない可能性は十分にある。しかし――

 (何かが引っかかるな……)
 
 ファフニールの時もファフニール自体はただの陽動。今回も陽動なのであろうか。

 (やはり他に目的が? なら、そちらに……いや、祠を破壊する可能性も十分にある……)
 
 考えれば考えるほど、わからなくなっていく。一体、何が目的なのか。もしくは今、考えていることすべてが陽動なのか。

 ――とりあえず、我の言えることはここまでだ。イーストの祠自体には問題はないが、我も知らない何かがあるのかもしれぬ。問題ないと言っておきながら、おかしな話だが、油断はするな――

 (ああ、わかっている……)

 それだけ言うと、麒麟とのコンタクトをやめた。





 アリスは重い足取りのまま、宿へと向かう。

 (祠には何もない。そう言われても何かが引っかかる……)

 長年、エデンに住んでいる麒麟の言うことだ。間違いではないのだろう。だが――

 (一人で悩んでも仕方がないか)

 今、考えても答えは出ないであろう。ならば、自分の答えを預けるとしよう。

 (さて、どうなるか……)
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