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初めましてご主人様
しおりを挟む春の夜風が優しく頬を撫で、月が僕を見つけて照らしてくれる。
この一時が一番好きだ…
いつもの様に窓際で夜空を眺めていると、屋敷の扉が開いたのが見えた。
こんな遅くに客なんて珍しいなと思っていると、しばらくしてコンコンと扉を叩かれる。
「失礼致します」
「!?」
突然部屋に入ってきた男を凝視する。
怖くて恐くてカーテンの裏で震えていると、その男は眉を下げ微笑んだ。
「びっくりさせてしまいましたね。申し訳ございません、日向様」
「あ、んで……あまえ…」
男はスっと膝をつき震える僕の手を取った。
「もちろん存じ上げております、花時 日向様。
私、本日から日向様の専属執事となる東雲 清和と申します。何なりとお申し付け下さいませ!」
「せんぞ…く、しつじ…?」
「ええ♪」
「しおおめ、せいあ?」
「お好きなようにお呼びくださいませ」
「………」
執事……というとこのお屋敷で働いてる人達の事だよね?
その執事さんが僕の側に居てくれるってこと、かな?
でも何で急に……誰が執事さんを呼んだんだろう
あのお母様なはずないし……
思考を巡らせていると、だんだん頭がクラクラしてきて視界が揺らいだ。その直後、体がふわっと持ち上がりベッドへ優しくおろされた。
「少しお疲れのようですので今日はもう眠りましょう。詳しいお話はまた明日に…」
僕の額の汗を拭いながら優しく微笑む東雲。
その甘く低い声に誘われるように僕も夢の中へと沈んでいった。
「おやすみ……日向。良い夢を」
東雲は日向が眠ったのを確認し、浅く額にキスをした。そして起きないようソッとベッドから離れ、カーテンを閉めてまわっていると部屋の異常さに目がいく。
屋敷の最上階にあるこの部屋…およそ9階程の高さはあるだろう。逃げ出さないように扉は常に施錠してあり、トイレは備え付けられていた。
浴室は無いようだがどうしているのだろうか?
あるのは乱雑に床に散らばった絵本と、お絵描きセットようなものだけ。
色々思うところはあるが、それもまた後日にしようと東雲も自室へと戻った。
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