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これがいわゆる異世界転生ですか。
しおりを挟む俺は大抵の事はすぐに理解しある程度できるようになる。
自慢に聞こえるかもしれないがそうじゃない。ある程度のことが出来るだけでその分野の人には勝てない。
俺には何かに対して全力で打ち込むということが出来ない。
正確には続かないのだ。
だからこそ、『自分がある程度のことはすぐできる。』ということに自信を持ってるのだが。
でもすぐに、自分には『これ 』っというものがないということに気がつく。
そうなるととてつもない喪失感に襲われる。
なんで自分には何も無いんだろう。
なんでこれまでひとつの事に集中できなかったんだろう。
なんで自分は・・・・・。
大人になるにつれてこの喪失感は日に日に強くなっていった。
自分が二十歳になる誕生日に『アレ』は起こった。
俺は、農家の息子だった。
ひいじいちゃんの頃から受け継いだ田んぼがあり、親父も母もそのまま田んぼを受け継ぎ、今に至る。
俺も兄も妹も、みんな子供の頃から農作業を手伝っていた。
それが当たり前だった。でも正直めんどくさいし、夏場の作業は本気でしんどい。
誕生日に親父から、家業は兄がいるので継がなくていいと言われてしまった。
だからといって、俺には他にやりたいこともないし。急に言われても困ってしまう。
俺は大学に行ってるが、そこで何かをしているわけでもなく。ただ惰性の日々を送っていた。
親父から家業は継がなくていいと言われた俺は、また喪失感に襲われた。
何もない。何か欲しい。心躍る何かが・・・。
喪失感に襲われたまま夜道に出た。
ここら辺は街灯がなく、夜は月の光と星の光でしか道が見えない。
歩きなれた道だから、大丈夫。
油断していた。
足元も見にくいのに、星を見ながら歩くんじゃなかった。
俺はいつの間にか道を外れ自分の知らない所にいた。
長年住んでいたのでここら辺の地理は把握しているつもりだったのに、周りを見渡してみても見覚えのあるものはない。
それから俺は歩いた。
どこか分からないが、絶対に自分の知っている所にたどり着くと思っていて、焦ってなどいなかった。
だが、何時間歩いても一向にたどり着かない。
だんだん不安になってきた。
自分の誕生日の夜に、「風に当たってくる。」と言っていつまでたっても帰ってこないなんて、心配させてしまう。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
早く帰りたいと思った。
俺は走った。月の光しかなく足場を見ることもままならない。
林の奥に光が見えた。
俺は走った。ただ一点に見える光の向こうへと。
―――――――――――――――――――――
ようやく林を抜け辺りを見回した。
しかし、やはり見覚えのある景色はない。
ギラギラと辺りを照らすふたつの星と藍色に染る空。
その空高くには、大きめの鳥が二頭飛んでいた。
「ここは何処なんだ。」
ふと、そんな言葉が口から零れてハッとする。
俺は何故ここにいる?なんなんだ、何が起きている?そもそも太陽が二つってどういうことだよ?
でも、熱くねぇな。いや暑いは暑いんだが、ただの夏だ。
「&@&=;:%+@72;&=/#?:@=%-2&+(-[*&」
「うゎ!!」
びっくりした!なんだ?辺りには誰もいない。でも何かの声が聞こえた?
怖い、怖い怖い怖い。
なんだここは!!
明らかに地球じゃないよな。
「&@-%!%-#-)[(-626/-&=#=-%;(+3;;&」
また聞こえた。しかも近づいてきてる!なんだ、なんなんだ!
「誰だ!!!」
「+%-/7%--%-(==#=?」
めっちゃ近いぞこれ!何処だ!
「;%-/=@=!」
謎の声が聞こえ目の前に小さな女の子が現れた。
それから何度か話しかけてくれたのだが、言葉が全く分からない。
最初はその子の一挙一動にビクビクしていたが、どうにも焦っている様子だったが悪いやつでもなさそうなのでジェスチャーでなんとかコミュニケーションが取れないか試してみた。
「俺は、凜。君は?」
「*&-@=3=)82[]]#=&[&&-(#-@8&-#-(+%-2+%-%-%--%-&%-(;37(;%@=#[&[;(-#!!」
やっぱり何言ってるか分からないな。こっちの意味も伝わってなさそう。
「「ジジジジジジィ!!!!」」
急に空から、何かをすり潰しながら大声を出したような音が聞こえ、あたりの空気が振動する。
これは雄叫びに近かいが、音は全くそんな生易しいものじゃない。殺意がこもっていた。
「-&-@==(&=%=:::」
少女が顔色を悪くし、腰を下げ身を隠そうとしていた。
もちろん俺自身も怖くなり同じく身を隠し、少女に何の音か訪ねた。
「これなんの音!?やばくない?殺される!やばいって!ねぇ!なにこっ―――」
すると少女は両手で俺の口を塞いだ。
そして、人間としてみれば長すぎる耳をピクピク動かしながら辺りを警戒し何か呟いた。
「~91~」
その瞬間俺と少女の体が光始め、そして少女は林の奥へと走っていった。まるで何かから逃げるように。
俺も数秒遅れで走り出した。
「おい!どうしたんだ!急に!」
追いかけるときについ叫んでしまった。せっかくさっき少女が静かにしてと手で俺の口を塞いでくれたというのに。
「ジジジジジジジジジジィ!!」
その瞬間影が差した。
俺の目の前に現れたのは、鱗を波立たせて翼を大きく広げる何かがいた。
「うわぁぁぁあああああぁぁ!!!」
―――――――――――――――――――――
俺は何をしていたんだろう。
あ、家に帰らなきゃ。今日は俺の誕生日じゃん。
何やってんだ、てかなんだっけ?俺は迷子になったんだっけ?
あ、そっかまたいつもの喪失感に襲われて外歩こうと思ったのか。
あれ?でも夜じゃないぞてかココどこ?
あ、さっきの子は?
辺りを見るとそこは空だった。
上空1000メートルは優に超えそうなほど高い。
何故こんなにも高いところにいるのか?
上を見るとそこには、爬虫類系の大きな顔があった。
これはあれだ、一般的に言うとドラゴンってやつだ。
はっはーん、さてはこれは夢だな。
そうか、なんか新鮮な夢だな~
すっげリアルやん。
なんて現実逃避をしてみたが、五感もはっきりしているし絶対に夢ではないことが分かっていた。
んー、なるほどね、これを察するに。
要するにこれは。
「ジジジジィ」
そんな音とともに俺は浮遊感に見舞われる。
そして地面に向かって落ちていくのがわかった。
ドラゴンに捕まっていたが、落とされてしまった。
そう高いところから。
あああああああ
これ絶対死んだわ、なんだこれ。
急激な展開すぎて逆に冷静になったわ。
あはははははは
笑えねぇ。
「これがいわゆる異世界転生ですか。」
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