家出先のその先は

序章

家出先は江戸時代？！

私は父と二人暮しの普通女子高生 千歳 虎牙 。
母は私が三歳の時に私を残して家を出ていき父が言うにはその後、母とは離婚したそうだ。
別に母が恋しいとかという感情はなく幼い頃から仕事でほとんどいなかった父だけど私を育ててくれてる事には変わりはないそう思って父を嫌いになる事は出来なかった。
だが、最近は父と啀み合う事が耐えない日々が続いている。
理由は様々だが、主な理由として高三になる私の将来の進路についてだ。
家計のために就職するという私に対して父は自分が行けなかった大学にいってほしいというのだ。
そりゃ、大学にいけばその後の就職先はもっといいところにつけるだろう。
だが、今家は金に困っている状況なのに大学にいく金なんてどうひっくり返っても出てくるわけない。
貸してもらうにもこれ以上借金をするわけにもいかないのにどう考えても無理だ。
それを聞き入れてくれない父とずっと反論し続ける私の喧嘩は父が仕事から帰ってくる度何度も続いている。
内心もう懲り懲りだと思い、次またこうなる日が来たら家出する覚悟だった。

そして、叶いたくもなかったその日が私に訪れた。

「虎牙！いい加減にしろ！お前は絶対大学に行くんだ！」

「だから、何度も言ってるじゃない！大学に行くお金なんてないんだから私は就職する！」

「たくっ…何度言ったら分かるんだ！こうなったらお前が考え直すまで家を出ていけ！大学に行くというまで家には入れん！」

「お生憎様！もうとっくにそうするつもりだったからお父ちゃんから言ってくれてよかったわ。私はお父ちゃんが考え直すまで帰らないから！」

私は既に家出ように支度していたリュックを抱えると思いっきり玄関のドアを開け一歩踏み出す。
だが、いつもの地面の感触ではなく足は宙をまって一時停止した。

「えっ…」

咄嗟に後ろのドアを見ると既にドアは閉まっておりドアノブに手を伸ばそうとするが体は引き込まれるように下に落下した。

うそっ！？

「きゃあぁぁぁ！？」

咄嗟に目を瞑り先程の父との喧嘩が走馬灯のように駆け巡る。

本当は、お父ちゃんとあんな風に言い争いたくなかった…
このまま死ぬくらいなら家出なんてするんじゃなかった…

私は死を覚悟し胸の中にあるリュックに抱きつき宙に頬につたる涙が舞った。

ドンッ

「うわっ！？」

「いっ…痛くない？あれ？」

予想していた衝撃と違い瞑っていた目を開け当たりを見渡す。

「森？」

当たりは林ばかりの森の中だった。

「早くどけ…」

「えっ…」

下を見ると私の下敷きになっていた青年が邪険そうに睨んでいた。

「わっ！？ご、ごめんなさいっ！」

急いで青年の上から降りると青年はゆっくりと起き上がり私の方を見ずそのまま立ち去ろうとした。

「ちょっ…ちょっと待って！」

思わず青年の着物の袖を掴む。
その声に振り向いた青年はさっきと同様に蔑んだ目で睨む。

うわっ、こうして見るとかなりのイケメンかも…

青年は銀色の髪が無造作にボサボサになっており右の片目が隠れるほど長い前髪を垂らしていた。
左目からは日にかざすと少し赤みのある黒に近い綺麗な瞳だった。

「普通ここは、何で私が空から落ちてきたのか？とか私は何者か？とかなるとかじゃないの？」

「俺、君に興味ないから…」

「なっ…」

こいつ、見た目はイケメンなのに中身は嫌な感じ…

ムッとした表情で今度は私の方から睨みつけるとそれを見向きもしない素振りで掴んでいた手を振りほどきまたもや立ち去ろうとする青年に慌てて声をかける。

「わっ、分かったから待って！一つだけ聞かせて！」

青年はその声に立ち止まると今度は私の方を振り向きもしないが話は聞いてくれるみたいだった。

「ここはどこなの？森の中みたいだけど町とかあるの？」

「ここは江戸の外れにある森だ…」

「は？江戸？」

江戸ってあの江戸の事？

「ちょっ、ちょっと待って！江戸って…今って何年？」

「元文三年だけど…」

「元文！？」

元文って、えっと…分かんないっ！
そもそも歴史詳しくないし…それに、江戸って事は変わりないんだし江戸時代に入るのかな？
って、つまり私は江戸時代に来ちゃったってことぉ？！

こうして、私の家出先は何故だか江戸時代に来てしまったのであった…