家出先のその先は

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家出先で出会った青年

蓮との出会い

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江戸時代に来てしまったのだと自覚した私はその事実に固まっていた。
すると、返事のない虎牙にその場を後にしようとする蓮が見え咄嗟に蓮の前に飛び出した。

「なんの真似だ?もう用はないだろ…」

「私も一緒に連れていって!あなたが何者でどこに行くのかも分からないけど、あなたについて行かないと私行くあてないの…だから、なるべく迷惑かけないし邪魔にならないようにするから私も一緒に連れていって!」

「なんの冗談だ?…」

「冗談なんかじゃない!本気で言ってるの」

ここで引き下がったら私、来たこともない知らない世界で一人彷徨うことになる…
そんなの絶対嫌っ!

意地でも引かない私に蓮は一つ溜息をつくと仕方ないとばかりに目を伏せる。

「はぁ…勝手にしろ…」

蓮はそういうと通さないとばかりに手を広げていた手をさらりとかわすと森ばかりの道を歩き出した。

「それって…ついて行っていいってことだよね?」

「…」

無言で歩く蓮に急いで追いつくと蓮の隣を歩く。

「ええっと…私、千歳 虎牙!たいがの字は虎に牙って書いて虎牙って言うの。私は自分の名前が虎牙なんて男みたいで嫌いなんだけどおとうちゃ…父が虎のように強くなるようにってつけてくれたって聞いて最近ほんの少しだけ好きになったんだ…」

「…」

「ねぇ、あなたの名前はなんていうの?」

「…れん」

「れんかぁ…どんな漢字なの?」

「…蓮の花」

「蓮の花って水面に咲いてる綺麗な花じゃん!凄い…いいなー」

「四日間しか咲かない花だ…」

その言葉にさっきまで羨ましがっていた気持ちが押し黙る。

何でそんなに寂しそうな顔をするの?

蓮はどこか影を落とすとまた無言で歩いていく。
私はその隣を蓮と同じように無言でついて行ってた。

「うわぁ…町だ!」

森を抜けると江戸の町の風景が目の前に広がっていた。

「あっ、待って蓮っ!」

驚いている私を他所にスタスタと無言で町に降りていく蓮に慌ててついていく。

「ところで、どこに向かってるの?」

「…お前がこれから住む家だ」

「え?それって蓮の住んでる家ってこと?」

「…」

蓮は答えないまま、また押し黙る。

何で無言なのよ…

少しばかりの不満を露わにしつつ無言の蓮について行った。

「何か賑やかだね!凄いお祭りみたい…」

町に降りると商人たちが大声で客寄せしたり大道芸人が駒回しやサルと一緒に芸をしたりと賑わっていた。
当たりを見渡しながらも振り向きもせずスタスタと歩いていく蓮を若干小走りになりながらもついていった。

「ついたぞ…」

「へ?ここって…」

目の前に広がるのは吉原と書かれた女ばかりの如何わしい場所だった。

「れ、蓮ってここに住んでるの!?」

「…」

蓮は質問にまたもや無言でそのまま吉原へと足を踏み入れる。

まさかだよね…?

おずおずと蓮の後に隠れるようについていくと蓮の足が突然止まり蓮の視線の先を見てみると看板に”華乃屋”とかかれていた。

「おや、蓮様ではありんせんか。お久しゅうぶりでありんす。今日はどのような御用で?」

「今日はこの娘を頼みに来た…」

「へ~…」

店から出てきた遊女と思われる一人の女性は私の体や顔を全部見渡していくと満足した笑みで頷いた。

「見た目は中々の上物のようで…」

「いけそうか?」

「はい、さっそくゆうがおねぇ様をおよびいたします…きろ!」

「はい!みさかねぇ様さん…」

「ゆうがおねぇ様をよんできろ」

「はい」

きろと呼ばれた八歳ぐらいの女の子は急いで店の中に入っていった。

「蓮様は、こちらへ…」

蓮と私はみさかと呼ばれていた遊女について中に入っていくと中には綺麗な着物を着た女性が沢山いて私達の方に視線が集まっていた。
主に蓮にだが…

みさかによって通された先は蓮の花が散りばめられた障子の最上階の部屋だった。

「ゆうがおねぇ様、みさかでありんす。急にお呼びして申し訳ありんせん。蓮様がお越ししておりんしたので…」

「蓮様が!?前置きはいい、早くお通ししてくんなまし…」

みさかは襖を開けると一歩下がり蓮と私を中に通す。

「急にすまない、ゆうがお…」

「いいえ…蓮様なら問題はありんせん」

中に入るとさっきまでの遊女たちと違い格段に上と見える高そうな紫の紫陽花が描かれた美しい着物に沢山の綺麗な簪が飾られ白粉で塗られていても分かるほどの美人すぎる顔立ちの遊女が座っていた。

何か私めちゃくちゃ場違いな気がしてきた…

自分の姿を改めて見渡すとボロボロのジーンズに黒のトレーナーにただ茶髪の長い髪を束ねただけという絶対にその場にそぐわない格好だった。

うぅ…早くこんなとこ出たい…

「今日はこいつを頼もうかと思ってな…」

蓮は私に向かって振り向くと再度ゆうがおをみた。

「んー…見た目は上物みたいでありんすが、本当に娘でありんすか?」

は?

「ああ、見かけはこんなんだが一応娘だ…」

いやいや、一応って…
そりゃ、見た目からして男に間違われても仕方ないけどさー

二人の言葉にムッと頬を膨らませるがそんな私を置いて勝手に二人は話を進ませる。

「では、問題ありんせん。わっちから番頭に掛け合ってみるでありんす…」

「ああ、頼む…」

蓮は私を一瞥するとその場から立ち去ろうと襖を開けた。

「ちょっ…蓮どこ行くの!?」

「行き場所も見つかったんだから俺が関わることはもうないだろ…これで、さよならだ」

「え!?そんな、何でさよならなんて…」

その質問に答えてくれたのは蓮ではなく後ろでその状況を見ていたゆうがおだった。

「お前さんは華乃屋に売られたんでありんすよ…」

「えっ…売られた?」

私の事が迷惑だから早く離れたくて売ることにしたの?
だから、私を吉原に連れてきたの?

私は立ち上がると襖に手をかけ立ち去ろうとする蓮に向き直った。

パンッ

「っ…」

私は蓮の顔を見るなり右手で蓮のその綺麗な顔を平手でビンタした。

「そりゃ、私が勝手についてきただけだけどさそんなに私の事が嫌ならあの時突き放してればよかったじゃない!勝手に私を売るなんて私は物じゃない!あんたなんか、こっちからお願い下げよ、もう顔もみたくない!」

私は蓮からもこの部屋からも吉原から早く立ち去りたくてその場から逃げ出した。

「おいっ!」

「気になるんなら追いかけてあげてみてはいかがでありんすか?」

ゆうがおのその一言に蓮は迷うことなく虎牙を追いかけた。

もう、嫌っ!
何で家出しただけなのにこんな知らない世界でこんな知らない人ばかりで挙句の果てには売られそうになるし…もうお家帰りたい

「きゃっ!?」

「危ねぇじゃねぇか!どこ見て走ってんだい、きいつけろ!」

「すみませんっ!」

ぶつかった人にすぐ様お礼をし、吉原を急いで出るとお祭りのように賑わう城下町に再び戻る。

どうしよう…
逃げ出したのはいいけど一人で生きていける確証なんてないし…

周りを見渡しながら不安と恐怖でその場に蹲る。

「おい、これは上玉だぜ…」

「でも、男じゃねぇか。お前、男もいけんのか?」

「何言ってんだよ。見た目が上玉なら男も女も同じだ…おい、そこの童!顔上げろ」

その声に言う通りに顔をあげると髭面で小汚い着物を着た男性が二人私の方を舌を舐めわしながら不敵な笑みで見ていた。

怖いっ…

ますます体を抱きしめていた手に力を入れ震える体を必死で抑える。

「へへへっ やっぱり上玉だぜ、こりゃ…」

男は私の頬に触れると私はすかさず顔を背けた。

「嫌っ!」

「ほう…女みてぇな声だな…」

「脱がしてみたら分かるんじゃね?本当に男かどうか…」

「そりゃそうだな…へへっ」

男は私の服に手をかけ脱がそうと腕を固定する。

「やめてっ!嫌っ!」

助けてっ!お父ちゃんっ!

私は思わず目を瞑り喧嘩したままの父に届く事のない声を心の中で叫んだ…






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