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抱かれたい男の闇の深さは二人だけの秘密です!後編
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☆☆☆
「あかね…」
「んぅ、んんんっ、たいが…」
もうどれくらいこうしているか分からない。
角度を何度も変えながら、ねっとりと舌を絡め合い、互いの気持ちを確かめ合うように貪り合う。
チュッ、グチュ、ジュジュジュ…
耳の奥どころか、脳に沁みるような水音を共有しながら、お互いがその腕で、相手の身体を抱きしめ、まさぐり合う。
こうして抱きしめ合うのは初めてではない。
だけど男女として、今まではどこか禁忌としてきた情欲のままに、互いに触れ合うのはこれが初めてなのだ。
泰叶の腕も、胸も見た目の爽やかさからは分からないくらい、硬く逞しく鍛え上げられているのが服の上からでもわかる。
私の頬を完全に包み込む大きな手の平と長い指。
それが逃さぬように意思を持ち、だけど傷つけぬように優しく、泰叶だけを見つめる事を命ずるように私の顎の角度を巧妙に操る。
今の私は、まるで泰叶の為にあるラブドールのようにされるがままに従順だった。
「…あかね、可愛い」
その言葉に、羞恥に顔が歪む。
「…しゃべらなくて、いいから」
そう言って目を逸らす私を泰叶はますます激しく掻き抱く。
「あかね、ねぇ、あかね、もっと、こっち見て
…」
「やっ…だぁ…」
「…お願い、もっと、俺を見て、舌だして…」
強請られるままに、懸命に差し出した舌を、後頭部をギュッと強く抱き込まれて、痺れるほどに強く啜られる。
こうしてみて改めて思う。
今更ながら、これほどの欲を、よくお互いここまで押し込めて生きて来られたものだと思う。
私達は、お互いを、お互いのものだと、心の何処かできっと認識しながら、ここまで来てしまったのだ。
互いが互いを手放さないですむ、ギリギリの距離を計りながら。
あの頃の私達には大きすぎた、今となってはたった三つの歳の差と、あの春の未熟過ぎた私の若気の至りが、泰叶を傷つけて、それぞれの思いをここまで拗れに拗れさせたのだ。
だけど、時を隔てた今、これほどまでに大人になった泰叶が欲を持った黒曜石の瞳で私を見下ろしている。そして、そこに映るのは、同じく快楽に溺れ泰叶を映し出す私だけ。
「……泰叶」
そっと唇を離して見つめ合う。
(足りない、もう足りない…)
お互いの蕩けた目がそう訴えていた。
離されても未だ濡れた唇にもはやどちらのものかも分からない、銀色の糸を引き、それが頼りなく途切れた瞬間、堪らないとばかりに抱き寄せられて、焦れたようにスーツの上着を脱がされて、ブラウスの釦に長い指先がかかる。
熱に浮かれた胸元が空気に触れたその瞬間、初めて羞恥と共に一つの葛藤が脳裏に過ぎる。
「あ……、泰叶、駄目、汗搔いてる。シャワー、浴びたい…」
そう未だ熱が引かない瞳で懇願する私に、泰叶は余裕なく首を振る。
「駄目、茜、我慢できない」
そう訴える漆黒に揺らめく瞳は私よりもずっと苦しげだった。
「それに、茜の匂いなら、濃ゆければ濃ゆいほど、俺は嬉しいから…」
その言葉に私は目を見開いた!
それと同時に逃すまいと腰に抱きついてくる泰叶。
「ちょ、駄目……、駄目だって……、泰叶!」
まるで、犬になったかのように、匂いを求めて胸元に鼻を寄せ、フンフンと戯れ始めた泰叶の変態行動に私は狼狽えて泰叶に蹴りを入れた。それをものともしないように泰叶は私の腹にすりすりしながら、焦がれるような揺れる漆黒の瞳で見上げて言った。
それはもう、いい顔で…
「大丈夫!茜、本当に大丈夫だから!!茜のおしっこだったら、俺、余裕で一気飲みできる自信があるし、なんならお尻だって舐めてあげるよ?」
今となっては完全に無駄でしかないその美しい表情から紡ぎだされた超ド変態発言に私は白目をむきそうになった。
「そんな自信要らないから!このド変態!!」
「えぇっ??愛が深いって言ってよ!」
「重すぎるわ、馬鹿!!」
「えぇ~!?」
結局、私の完全抗議の拳骨をお見舞された泰叶は、渋々、私だけ軽くシャワーを浴びるだけとの約束で、私の身体を離した。
その時、名残惜し気な泰叶は、じと目で懇願した。
「茜、…洗い過ぎないでね?洗剤は、できたら、使わないで?」
「使うわ!馬鹿!!」
シャワーを浴びて浴室から出ると、大きな影に気付き声を上げた。
「ひっ、泰叶……」
その瞬間、泰叶が持っていたふかふかな白い大きなバスタオルで頭から覆われて、頭を包み込まれるように同時に抱きしめられた。
「ちょ、何もそんなところで待ってなくたって…」
しかもあんた気配なかったよ?
羞恥を隠す為にいつもの調子で抗議した私だったが、返ってきた声音は、私が思うよりもずっと真剣な色を帯びたものだった。
「……ごめん、でも、茜の気が変わってしまうんじゃないかと、気が気じゃなかった」
「……変わらないよ」
タオルで包まれたまま俯いて、そう答える。
きっと、泰叶がこんなに不安定なのは私のせい。
ちゃんと向き合ってこなかった、ずるかった私のせい。
「行こう、泰叶……」
そう言って、泰叶の胸のTシャツに少しだけ力をこめると、泰叶の身体がピクリと震えた。
そしてその次の瞬間、私の身体がふわりと宙に浮いた。
「ちょ、歩けるから、降ろしなよ?」
「いやだ…」
バスルームから、小さな寝室までの距離はほとんどない。あっと言う間に、ベッドのマットレスに丁寧に降ろされ、その上に泰叶の息遣いを感じる。
泰叶はなんとも言えない顔でキョロキョロと辺りを伺っている。
「なにここ、すげぇ、茜の香り、茜の世界…」
「もうっ、また変な事言わないで」
寝室と言うには小さめの、三畳程のベッドとドレッサーだけの部屋。
部屋としてではなく物入かクローゼットとしての使用を想定しているのかこの部屋は換気の為の小さな小窓しかないほぼ密室で外には隣接する建物もない。何もないからこそ、何も考えずに眠れるのが結構気に入っていて、いつもはお気に入りのアロマオイルを焚いて眠っている。それが泰叶の言う私の匂いなのだろうか。だけど、泰叶は突然押し黙った。
「……ねぇ、茜、この部屋、俺以外の男、入れた事ある?」
絶対零度の声でそう問いかけられて、苦笑する。
だけど、その答えは、さっきよりもずっと答え安くて安堵する。
「ないよ…、泰叶だけ」
そう答えてもまだ泰叶の顔から憂いは晴れてなくて私は首を傾げる。
「………なら、最近、誰ともしてない?」
「…し、してないよ?」
私は首を横に振った。
「…ほんと?」
見極めようとするような、疑いを秘めた黒曜石の瞳に覗き込まれる。
「……私、嘘は付けないの、知ってるでしょ?」
「知ってる…」
そう素直に頷いた泰叶。
だけど、まだ迷うような瞳で私を見つめている事に気付いた私は眉を寄せた。
「……じゃあ、今日会ってた男、誰?」
そう問われた私は目をぱちくりと瞬かせた。
「今日?今日、………!?」
「男って、あっ、もしかして…」
泰叶が何を言わんとしているのか、漸く思い至った私は、今日一日のあれやこれやが結びついて脱力した。
「泰叶、もしかして今日、見てた?」
気の抜けた表情でそう問いかけると、泰叶が不貞腐れた顔で頷いた。そして徐々に表情をなくし、薄暗いオーラを纏い始める泰叶に慌てる。
「見てた……、あいつ何?二人きりで何してたの?茜の事狙ってるの??絶対やらないけど、でも、もしそうなら、いや、例え無意識だとしても、やっぱり今のうちに社会的に抹殺して…」
何やら不穏な言葉が聞こえた気がして私は、声を大にして否定した。
「待って、ただの先輩だから!!マタニティグッズ買いに行くのに付き合ってただけ、奥さん突然破水して入院することになって、困ってたから!」
顔中に殺気に似た何かを漂わせ始めた泰叶に慌てた私は、マタニティと奥さんというキーワードを声を大にして強調して、泰叶を現実に戻した。
「え……?」
「だ・か・ら、違うの、本当にただの先輩、あと数日でぱぱになるの楽しみに待ってる奥さん一筋の真面目な先輩なの!!」
「……そう、なの?」
そう言うと、たちまち泰叶の頬は緩んだ。
「マジ良かった、次はもしかしたらあいつに盗られるかと思ったら、滅茶苦茶怖かった」
そう言って、心底安心したように抱きつく泰叶。
「…もう、そういうところは相変わらず子供だよね?」
誤解が解けた事に安心した私は、腰に縋りつくようにスリスリと頭を寄せてくる泰叶をヨシヨシしながら笑った。
「本当に良かった、嬉しい、俺、じゃあ、ずっとここにいたい、俺と茜だけの愛の巣…」
「もう、馬鹿な事ばっかり言ってる」
「……茜」
「…ん?」
「好き……」
キュッと腰に回した手に力が込められる。
「……うん、聞いた」
目を細めて、泰叶の髪の毛を掻き分けるように撫でる指先に少しだけ力を込める。
「本当に、すっげえ好き」
「うん、知ってる…」
そう静かに頷いて、私は泰叶の髪を撫で続けた。
泰叶は噛み締めるように静かにその時間を受け入れている。
それはまるで雪解けのように、優しい時間だった。
顔を見ただけで分かりそうなのに、どうして今まであれだけ気付かないふりが出来ていたのか。
たぶん、今、私の好きも限りなく泰叶の好きに近づいている事を実感している。でも、今、それを言葉に出して言ってしまうのは、少しだけ早い気がした。
言わせたなんて、思われたくない。
ちゃんと届く、本当の≪好き≫を、泰叶にはそう遠くない未来にきちんと自分の言葉で届けたい。
「……泰叶、キスして」
ちょっとくすぐったい気持ちで、勇気をだしてそう強請る。
「私、今すごく泰叶に触って欲しい」
今は、好きという言葉以外の言葉で、体温で、好き以上の心を届けたい。ちゃんと好きだと伝えた時に、泰叶がそれを疑いも、恐れも、違和感もなく真っすぐに笑顔で受け止めてくれるように。
見開かれた漆黒の瞳は、一瞬なんらかのダメージを受けたように見開き、その後、苦し気に歪められたが、瞬時に喜びの色を宿し、同時に焦れたように自らのTシャツを脱ぎ捨てた。
だけど、その姿に私は目を見開いて固まった。
今度はこちらがダメージを受ける番だったからだ。
「わっ、わわわ、やっぱり、ちょっと待った!!」
そう言って、私は即座に白旗、いや、枕を盾にして後退った。
「えっ、なんで、どうしたの?」
私の中で、何が起こったかなど分かっていないに違いない。途端に恨めし気な涙目になる泰叶。
「うん、ごめん、ごめんけど、やっぱりちょっと待って欲しいなって…」
「だから、なんでだよ??」
「い、いや、だって、その、ね…」
ただただその恐ろしいまでに魅惑的な美貌に目を奪われる。
お前は、どこの週刊誌から抜け出てきたのか?と突っ込みを入れたくなる。
鍛え上げられた細マッチョ恐るべし!
プロはやっぱりプロだなと今程、リアルに思い知った事はない。
瞳は黒い宝石のような潤んだ光沢をもち、同色の髪はサラサラして。
顔かたちも端正で立ち振る舞いも典雅。
飄然とした雰囲気は気高く、美しい。
時代もののインタビューでそう評価されていた記事を思い出す。
そうだ、忘れていたけど、泰叶は国民的なレベルで抱かれたい男性俳優だった。
(これは、まずい……)
私は、顔を引き攣らせた。
「ま、眩しすぎて…」
無理かも、ポツリと呟いて私は顔を背けた。
「は?」
「……ここにきて、少々、いや、盛大に臆しております」
「…………」
「……ほらっ、私、あんたにお見せできる程の身体でもないし?年齢的にも、…昔のままってわけにもさ」
暫く、呆けたように私を見つめていた泰叶は、やがて、くつくつと涼やかに笑いだした。
さっきまで余裕なさそうだった癖にと、今はただただ恨めしい。
「何それ、もしかして褒めてくれてるの?…それとも、煽ってるの?」
「あおっ??ち、違うから……」
私はジリジリと右手で枕とタオルで身を守りながら、左手に布団を引き寄せながら後退する。
相場茜27歳、どこにでもいる会社員、身体にはもちろん、そんなに自信があるわけなどない。
「ふ~ん…」
私に少しずつ詰め寄りながら、口の端を釣り上げ、一見酷薄そうな黒い瞳を細める泰叶。
「でも、茜、残念だね、俺もう、逃がす気なんて一ミリもないから」
(で、ですよね~……)
そこはやっぱり、男と女、宥められるように勝負は一瞬でついた。
☆☆
「ん、んぅぅ、…泰叶」
なけなしの理性も溶かすようなキスをもうどれくらい続けているのだろう。
頭が完全に回らない状態で泰叶の欲を帯びた男の顔を見上げる。
今は、タオルが申し訳程度に肩に乗っている状態で、何もつけていない状態の胸は、泰叶の手中でいいように弄ばれている。
やわやわと揉まれ、先を指先で抓られて、抗議の溜息を漏らして漸くキスから解放された瞬間、胸に湿った熱を感じる。
「あっ、やぁぁ…、ふっ」
見れば、泰叶の赤い舌が、私の胸の先端の敏感な部分を舌で転がし、口に含みまるで赤ちゃんのようにチュパチュパと音をたてながら吸い付いている。
乳房を弄ぶようにゆるりと持ち上げて、揉みしだきながら、耳元で愛と共に淫らな言葉が囁かれる。
「ふふっ、茜、可愛い、あぁ、柔らかいね、だけどほら、ここはこんなにコリコリしてきたよ、茜も気持ちいい?」
見ると、泰叶の唾液で光った乳首が痛いくらいに固くなり、熱を持っている。
「はんっ、やっだ、そこばっかりっ、泰叶、やめ……」
そう言って、泰叶から逃れるように体を反らすと、反対側の胸に顔を寄せる泰叶。
「こっちも、同じようにしてあげようね」
そう言って、反対側の乳首に見えるように舌を伸ばす泰叶。
「あっ、ダメ、泰叶…、ああっ…」
今日の今日まで弟同様に接してきた美貌の男が、自分の胸を蹂躙している淫靡な光景を目にするだけでも、居たたまれない。
ぽつぽつと火照っていく熱を知るかのように、泰叶の舌は、徐々に私の肌の至る所をなぞり、無数の赤い跡をつけていく。首筋に、胸元に、腹部にと、何度も何度も私の名を呪文のように繰り返しながら。
泰叶の手は、不埒な欲望のままに曲線を描くように、私の胸から腰をなぞり、尻から太ももを撫でたところでピタリと止まった。
そして、少しの間を置いて、私の肩膝を持ち上げた。
「泰叶…」
私は頼りない声をあげた。
僅かに体に巻き付いていた、バスタオルが私から外れて、ひやりとした外気がぬかるんだ蜜口にあたるのを感じた。
一気に不安に近い緊張に襲われた私は、縋るように泰叶を見つめる。
そこには、熱を持て余した切なげな男の顔があった。
心拍が早まり、期待と緊張で顔を歪める私に気付いたのだろう。
泰叶は、私の太腿の間に膝を割り込ませて、右手で私の太腿の内側に手をかけたまま、私に覆いかぶさった。そして左手で私の頬を包み込むようにして、唇を深く貪った。
内腿をまさぐる右手の刺激と口内を蹂躙する熱い舌で愉悦に溺れていく僅かな理性はもう失われつつあった。
「茜、好きだよ…」
そう言って、もう一度唇を重ねると同時に、それまで迷うように太腿を撫でていた右手の指先が、私の蜜口に触れた。
「すごい……」
それが何を表しているのかを察した私は、羞恥に顔を背けた。
だけどそれを追いかけてくるように更なる口づけを求める泰叶の顔は、情欲と幸福感に溢れている。
「すごい、濡れてるね、茜、気持ちよさそう…、早くここに入りたいな」
その直接的な言葉に答えられない私は、蕩けた顔で泰叶を睨みつけた。
「照れてる、可愛い、茜…」
そう言って、泰叶はまた私に口づけた。
「あっ、やぁ、泰叶……」
泰叶の指はヌチャヌチャと私の蜜口を蠢く。
その度に隠避な痺れが体に走り、私はピクンと体を仰け反らせる。
「ここ、気持ちいい?…ねぇ、茜、もっともっと、気持ちよくしようか?」
クチュクチュと長い中指を動かしながら、私の顔を少し意地悪そうに見つめる泰叶。
蜜壺の入り口を指で何度も往復した後、その指は中に沈められた。
「っ……」
久しぶりの感覚に、顔を歪める。
「……あぁ、やっぱり狭いね、久しぶりなんだもんね、大丈夫だよ、茜、これから、ゆっくり、時間をかけて解してあげるからね、俺は茜にただ痛い思いをさせたりしないからね?」
そう愛し気にささやく言葉をぼんやりと聞いていた私は、突如体制を変えた泰叶を見て驚愕した。
「えっ、ちょっと待って、そんなところ、やだよ?」
悲鳴のような拒否は、まったく聞き入れられる事なく、端正な顔はなんの躊躇もなく、私の股の間の治まったのだ。
「ひっ!? やぁぁ、泰叶、待って…」
膝を抱えられたまま、尖らせた舌先でピチャピチャとあり得ない場所を舐められ初めた私はもはやパニック状態だった。だけど、泰叶は容赦なく続ける。
「ま、待って、泰叶、そこだめぇ、敏感過ぎるから…」
私の身体は泰叶の舌遣いの一つ一つを敏感に拾い上げ、下肢をびくびくと身悶えさせる。
それだけでも息を吐く間もなく、快感を逃せないのに、時折、蜜口の上の一番敏感な部分を舌でぐりぐりとされると刺激の強さで発狂しそうになる。
そのうえ、泰叶は私の一番敏感な部分を舌先で責め立てながら、蜜口に指を入れ、それを
抽挿し始めた。
「ひっ、やぁぁぁっ---…!?」
火照った陰唇を執拗に責め立てる泰叶から、逃れようと腕を使って後退ろうとしても、掴まれた腰は、もっと泰叶の端正な顔に近づくように固定し直されて、私は涙を流しながら首を振った。
「あっ、あぁぁ、っ、ダメ、泰叶ダメ、強すぎるの、なにか、きちゃう…」
二本に増やされた指は、その形を変えながら私の内部を抉り、時々、跳ねる程刺激を受ける場所を探しあてた後に、執拗に同じ場所への抽挿を繰り返す。
「や、やなの、そこ、やだっ!?」
私は涙目で、泰叶に訴えた。
「ダメっ……!?泰叶、怖いのっ…」
「うん、茜、いいよ、いっちゃって…」
苦痛と紙一重の快感が弾け散り、視界が突如明滅する。
硬直していた体が痙攣する。
「あっ、ダメ、ダメぇぇぇ……!!?」
次の瞬間、体から力という力が抜け落ちた。
身体のあちらこちらが力なく震えている。
「あぁ、茜、上手にイケたね、これでやっと気持ちよく繋がれるね」
茫然と見上げる先に、泰叶は情欲を帯びた泰叶の顔があった。
愛し気に私の髪を撫でて、顔を近づけた泰叶は、私にチュッと口付けると自らの下半身を覆っていたものを脱ぎ捨てた。
「……これでも、我慢したんだよ、もう痛くて、辛くて、限界…」
そうして目にした泰叶の滾りを見て、私は総毛立つような震えを感じた。
「大き……」
涼し気な面立ちに似合わない、赤黒くて凶悪にすら見えるものは、パンパンに張り詰めて、先端から先走りを垂らして、テラテラと光を放って見える。
あれが、今から本当に私に挿るというのだろうか。
脱いだジーンズの財布の中から数個連なった長方形の何かを焦れたように探し当てたらしい泰叶は、私から背を向けて、それを切り離し、しばし俯いた後に、私に覆いかぶさった。
「茜、大好き、ずっと大事にするから、一生、離れないで俺と繋がっていて」
若干、不穏過ぎる愛の言葉を囁いた泰叶は、私の唇を塞ぎ、強請るように私の膝を持ち上げて、その間に体を割り入れた。
「あっ…」
その時、クチュリと粘ついた蜜口に押し当てられる熱を感じた私は身じろいだ。
「逃げないで…、お願い、茜…」
そう縋るように熱を持った黒曜石の瞳に見つめられた私は、小さくうん、と頷いて、泰叶のサラサラの髪に指を絡めた。
それに嬉しそうに顔を歪めた泰叶は、次の瞬間、ツプンと花弁を掻き分けるように腰を進めた。
「あっ…」
先ほどまでの愛撫で慣らされたそこは、一瞬容易にそれを受け入れるかと思われたが、その後、それは間違いだったと思い知る事になる。
「あっ、あっ、あっ、泰叶、ダメ、おっき、あっ…」
太くてみっしりと重量感のあるそれを受け入れるのは容易ではなかった。
みちみちと隘路を広げながらまだ先があるのかと気が遠くなりそうになる。
「やっ、泰叶、苦しっ……、嘘でしょ?まだ入って…」
「ごめんっ、茜、もうすぐ、もうすぐだから、少しだけ、我慢して、できるだけ痛くしないから」
きっと、これは久しぶりだからという次元ではないのだと、今になって気付く。
泰叶のモノが、私の記憶に僅かにあるものよりだいぶ大きいのだ。
「……やだ、泰叶の大きすぎて」
「茜、今、そんな事言わないで、何と比べてるか想像したら優しく出来なくなりそうで怖いから」
その言葉に私は息を込み、泰叶の言う通り黙り込む事に決めた。
だけど、それは遅かったようだ。
一度少し腰を引いた泰叶は、その後、腰をグッと奥に推し進めた。
「ひゃっ!?」
その瞬間、ドンと奥に打ち付けられた衝撃で私は、泰叶と私の行き止まりを思い知った。
「悪い子だね、茜、茜がいけないんだよ、こんな時に、他の男の事を思い出したりするから」
「違っ、そうじゃないのに!」
涙目で見つめた泰叶の顔を見た私は、ぶるっと、身悶えた。
「俺が、どんなに茜の初めての男になれなかった事、悔しく思ってるか分かってるの?」
「っ……」
「あぁ、気持ちいいよ、茜……」
そう言って、泰叶は、私の唇を塞いだ。
小さく腰を動かして、眉間に皺を寄せる泰叶は、この状況を心に刻みつけているようでもあった。僅かなアロマの香りの中に混じる男の汗の匂いが、ふわりと鼻孔を擽る。
今、私は、泰叶に抱かれているのだ。
「茜…」
「うん、泰叶…」
「ずっと、こうしたかった」
「うん、そうだね」
そう言って私は、泰叶をギュッと抱きしめた。
ごめんねって、口に出したかったけど、それは少し違う気がして、言ってはいけない言葉な気がして、私は飲み込んだ。
「……俺、茜の最後の男にはなりたい」
そう言われた瞬間、鼻にツンとしょっぱいものが込み上げた。
それを悟られないように、泰叶を抱きしめた。
「うん、泰叶、いいよ、そうしようね」
すると、泰叶がピクリと震えた。
「……約束?」
そう少し弱々しい確認の声が聞こえたから
「うん、約束」
私は、泣きそうになりながらも、少し明るい声で答えた。
「嘘ついたら、死ぬまで抱きつぶしていい?」
「ははっ、嘘吐かないけど、泰叶なら、嘘吐かなくても抱きつぶされそうで怖いよ」
そう言った瞬間、繋がっている泰叶のモノが大きく重量を増したのを感じた。
「あっ!?」
「じゃあ茜、今日のセックスは指切りげんまんだからね?」
「えっ……」
「嘘吐いたら、一生俺の部屋から出さないから!いや、俺のチンコ茜の中から抜かないから!!」
(皆さ~ん、ここに超ヤバい抱かれたい男がいますよ!?)
なんて言っても、きっと、テレビで泰叶を見るファンの女の子達は誰一人として信じてくれないだろう。
結局この日は、ベッドで四回、翌日の昼のシャワーで一回、その後二回押し倒されたところで、泰叶のマネジャーさんからの抗議の電話により漸く解放された私は、抱きつぶされてないと言えるのだろうか?
それはまた別のお話。
了
「あかね…」
「んぅ、んんんっ、たいが…」
もうどれくらいこうしているか分からない。
角度を何度も変えながら、ねっとりと舌を絡め合い、互いの気持ちを確かめ合うように貪り合う。
チュッ、グチュ、ジュジュジュ…
耳の奥どころか、脳に沁みるような水音を共有しながら、お互いがその腕で、相手の身体を抱きしめ、まさぐり合う。
こうして抱きしめ合うのは初めてではない。
だけど男女として、今まではどこか禁忌としてきた情欲のままに、互いに触れ合うのはこれが初めてなのだ。
泰叶の腕も、胸も見た目の爽やかさからは分からないくらい、硬く逞しく鍛え上げられているのが服の上からでもわかる。
私の頬を完全に包み込む大きな手の平と長い指。
それが逃さぬように意思を持ち、だけど傷つけぬように優しく、泰叶だけを見つめる事を命ずるように私の顎の角度を巧妙に操る。
今の私は、まるで泰叶の為にあるラブドールのようにされるがままに従順だった。
「…あかね、可愛い」
その言葉に、羞恥に顔が歪む。
「…しゃべらなくて、いいから」
そう言って目を逸らす私を泰叶はますます激しく掻き抱く。
「あかね、ねぇ、あかね、もっと、こっち見て
…」
「やっ…だぁ…」
「…お願い、もっと、俺を見て、舌だして…」
強請られるままに、懸命に差し出した舌を、後頭部をギュッと強く抱き込まれて、痺れるほどに強く啜られる。
こうしてみて改めて思う。
今更ながら、これほどの欲を、よくお互いここまで押し込めて生きて来られたものだと思う。
私達は、お互いを、お互いのものだと、心の何処かできっと認識しながら、ここまで来てしまったのだ。
互いが互いを手放さないですむ、ギリギリの距離を計りながら。
あの頃の私達には大きすぎた、今となってはたった三つの歳の差と、あの春の未熟過ぎた私の若気の至りが、泰叶を傷つけて、それぞれの思いをここまで拗れに拗れさせたのだ。
だけど、時を隔てた今、これほどまでに大人になった泰叶が欲を持った黒曜石の瞳で私を見下ろしている。そして、そこに映るのは、同じく快楽に溺れ泰叶を映し出す私だけ。
「……泰叶」
そっと唇を離して見つめ合う。
(足りない、もう足りない…)
お互いの蕩けた目がそう訴えていた。
離されても未だ濡れた唇にもはやどちらのものかも分からない、銀色の糸を引き、それが頼りなく途切れた瞬間、堪らないとばかりに抱き寄せられて、焦れたようにスーツの上着を脱がされて、ブラウスの釦に長い指先がかかる。
熱に浮かれた胸元が空気に触れたその瞬間、初めて羞恥と共に一つの葛藤が脳裏に過ぎる。
「あ……、泰叶、駄目、汗搔いてる。シャワー、浴びたい…」
そう未だ熱が引かない瞳で懇願する私に、泰叶は余裕なく首を振る。
「駄目、茜、我慢できない」
そう訴える漆黒に揺らめく瞳は私よりもずっと苦しげだった。
「それに、茜の匂いなら、濃ゆければ濃ゆいほど、俺は嬉しいから…」
その言葉に私は目を見開いた!
それと同時に逃すまいと腰に抱きついてくる泰叶。
「ちょ、駄目……、駄目だって……、泰叶!」
まるで、犬になったかのように、匂いを求めて胸元に鼻を寄せ、フンフンと戯れ始めた泰叶の変態行動に私は狼狽えて泰叶に蹴りを入れた。それをものともしないように泰叶は私の腹にすりすりしながら、焦がれるような揺れる漆黒の瞳で見上げて言った。
それはもう、いい顔で…
「大丈夫!茜、本当に大丈夫だから!!茜のおしっこだったら、俺、余裕で一気飲みできる自信があるし、なんならお尻だって舐めてあげるよ?」
今となっては完全に無駄でしかないその美しい表情から紡ぎだされた超ド変態発言に私は白目をむきそうになった。
「そんな自信要らないから!このド変態!!」
「えぇっ??愛が深いって言ってよ!」
「重すぎるわ、馬鹿!!」
「えぇ~!?」
結局、私の完全抗議の拳骨をお見舞された泰叶は、渋々、私だけ軽くシャワーを浴びるだけとの約束で、私の身体を離した。
その時、名残惜し気な泰叶は、じと目で懇願した。
「茜、…洗い過ぎないでね?洗剤は、できたら、使わないで?」
「使うわ!馬鹿!!」
シャワーを浴びて浴室から出ると、大きな影に気付き声を上げた。
「ひっ、泰叶……」
その瞬間、泰叶が持っていたふかふかな白い大きなバスタオルで頭から覆われて、頭を包み込まれるように同時に抱きしめられた。
「ちょ、何もそんなところで待ってなくたって…」
しかもあんた気配なかったよ?
羞恥を隠す為にいつもの調子で抗議した私だったが、返ってきた声音は、私が思うよりもずっと真剣な色を帯びたものだった。
「……ごめん、でも、茜の気が変わってしまうんじゃないかと、気が気じゃなかった」
「……変わらないよ」
タオルで包まれたまま俯いて、そう答える。
きっと、泰叶がこんなに不安定なのは私のせい。
ちゃんと向き合ってこなかった、ずるかった私のせい。
「行こう、泰叶……」
そう言って、泰叶の胸のTシャツに少しだけ力をこめると、泰叶の身体がピクリと震えた。
そしてその次の瞬間、私の身体がふわりと宙に浮いた。
「ちょ、歩けるから、降ろしなよ?」
「いやだ…」
バスルームから、小さな寝室までの距離はほとんどない。あっと言う間に、ベッドのマットレスに丁寧に降ろされ、その上に泰叶の息遣いを感じる。
泰叶はなんとも言えない顔でキョロキョロと辺りを伺っている。
「なにここ、すげぇ、茜の香り、茜の世界…」
「もうっ、また変な事言わないで」
寝室と言うには小さめの、三畳程のベッドとドレッサーだけの部屋。
部屋としてではなく物入かクローゼットとしての使用を想定しているのかこの部屋は換気の為の小さな小窓しかないほぼ密室で外には隣接する建物もない。何もないからこそ、何も考えずに眠れるのが結構気に入っていて、いつもはお気に入りのアロマオイルを焚いて眠っている。それが泰叶の言う私の匂いなのだろうか。だけど、泰叶は突然押し黙った。
「……ねぇ、茜、この部屋、俺以外の男、入れた事ある?」
絶対零度の声でそう問いかけられて、苦笑する。
だけど、その答えは、さっきよりもずっと答え安くて安堵する。
「ないよ…、泰叶だけ」
そう答えてもまだ泰叶の顔から憂いは晴れてなくて私は首を傾げる。
「………なら、最近、誰ともしてない?」
「…し、してないよ?」
私は首を横に振った。
「…ほんと?」
見極めようとするような、疑いを秘めた黒曜石の瞳に覗き込まれる。
「……私、嘘は付けないの、知ってるでしょ?」
「知ってる…」
そう素直に頷いた泰叶。
だけど、まだ迷うような瞳で私を見つめている事に気付いた私は眉を寄せた。
「……じゃあ、今日会ってた男、誰?」
そう問われた私は目をぱちくりと瞬かせた。
「今日?今日、………!?」
「男って、あっ、もしかして…」
泰叶が何を言わんとしているのか、漸く思い至った私は、今日一日のあれやこれやが結びついて脱力した。
「泰叶、もしかして今日、見てた?」
気の抜けた表情でそう問いかけると、泰叶が不貞腐れた顔で頷いた。そして徐々に表情をなくし、薄暗いオーラを纏い始める泰叶に慌てる。
「見てた……、あいつ何?二人きりで何してたの?茜の事狙ってるの??絶対やらないけど、でも、もしそうなら、いや、例え無意識だとしても、やっぱり今のうちに社会的に抹殺して…」
何やら不穏な言葉が聞こえた気がして私は、声を大にして否定した。
「待って、ただの先輩だから!!マタニティグッズ買いに行くのに付き合ってただけ、奥さん突然破水して入院することになって、困ってたから!」
顔中に殺気に似た何かを漂わせ始めた泰叶に慌てた私は、マタニティと奥さんというキーワードを声を大にして強調して、泰叶を現実に戻した。
「え……?」
「だ・か・ら、違うの、本当にただの先輩、あと数日でぱぱになるの楽しみに待ってる奥さん一筋の真面目な先輩なの!!」
「……そう、なの?」
そう言うと、たちまち泰叶の頬は緩んだ。
「マジ良かった、次はもしかしたらあいつに盗られるかと思ったら、滅茶苦茶怖かった」
そう言って、心底安心したように抱きつく泰叶。
「…もう、そういうところは相変わらず子供だよね?」
誤解が解けた事に安心した私は、腰に縋りつくようにスリスリと頭を寄せてくる泰叶をヨシヨシしながら笑った。
「本当に良かった、嬉しい、俺、じゃあ、ずっとここにいたい、俺と茜だけの愛の巣…」
「もう、馬鹿な事ばっかり言ってる」
「……茜」
「…ん?」
「好き……」
キュッと腰に回した手に力が込められる。
「……うん、聞いた」
目を細めて、泰叶の髪の毛を掻き分けるように撫でる指先に少しだけ力を込める。
「本当に、すっげえ好き」
「うん、知ってる…」
そう静かに頷いて、私は泰叶の髪を撫で続けた。
泰叶は噛み締めるように静かにその時間を受け入れている。
それはまるで雪解けのように、優しい時間だった。
顔を見ただけで分かりそうなのに、どうして今まであれだけ気付かないふりが出来ていたのか。
たぶん、今、私の好きも限りなく泰叶の好きに近づいている事を実感している。でも、今、それを言葉に出して言ってしまうのは、少しだけ早い気がした。
言わせたなんて、思われたくない。
ちゃんと届く、本当の≪好き≫を、泰叶にはそう遠くない未来にきちんと自分の言葉で届けたい。
「……泰叶、キスして」
ちょっとくすぐったい気持ちで、勇気をだしてそう強請る。
「私、今すごく泰叶に触って欲しい」
今は、好きという言葉以外の言葉で、体温で、好き以上の心を届けたい。ちゃんと好きだと伝えた時に、泰叶がそれを疑いも、恐れも、違和感もなく真っすぐに笑顔で受け止めてくれるように。
見開かれた漆黒の瞳は、一瞬なんらかのダメージを受けたように見開き、その後、苦し気に歪められたが、瞬時に喜びの色を宿し、同時に焦れたように自らのTシャツを脱ぎ捨てた。
だけど、その姿に私は目を見開いて固まった。
今度はこちらがダメージを受ける番だったからだ。
「わっ、わわわ、やっぱり、ちょっと待った!!」
そう言って、私は即座に白旗、いや、枕を盾にして後退った。
「えっ、なんで、どうしたの?」
私の中で、何が起こったかなど分かっていないに違いない。途端に恨めし気な涙目になる泰叶。
「うん、ごめん、ごめんけど、やっぱりちょっと待って欲しいなって…」
「だから、なんでだよ??」
「い、いや、だって、その、ね…」
ただただその恐ろしいまでに魅惑的な美貌に目を奪われる。
お前は、どこの週刊誌から抜け出てきたのか?と突っ込みを入れたくなる。
鍛え上げられた細マッチョ恐るべし!
プロはやっぱりプロだなと今程、リアルに思い知った事はない。
瞳は黒い宝石のような潤んだ光沢をもち、同色の髪はサラサラして。
顔かたちも端正で立ち振る舞いも典雅。
飄然とした雰囲気は気高く、美しい。
時代もののインタビューでそう評価されていた記事を思い出す。
そうだ、忘れていたけど、泰叶は国民的なレベルで抱かれたい男性俳優だった。
(これは、まずい……)
私は、顔を引き攣らせた。
「ま、眩しすぎて…」
無理かも、ポツリと呟いて私は顔を背けた。
「は?」
「……ここにきて、少々、いや、盛大に臆しております」
「…………」
「……ほらっ、私、あんたにお見せできる程の身体でもないし?年齢的にも、…昔のままってわけにもさ」
暫く、呆けたように私を見つめていた泰叶は、やがて、くつくつと涼やかに笑いだした。
さっきまで余裕なさそうだった癖にと、今はただただ恨めしい。
「何それ、もしかして褒めてくれてるの?…それとも、煽ってるの?」
「あおっ??ち、違うから……」
私はジリジリと右手で枕とタオルで身を守りながら、左手に布団を引き寄せながら後退する。
相場茜27歳、どこにでもいる会社員、身体にはもちろん、そんなに自信があるわけなどない。
「ふ~ん…」
私に少しずつ詰め寄りながら、口の端を釣り上げ、一見酷薄そうな黒い瞳を細める泰叶。
「でも、茜、残念だね、俺もう、逃がす気なんて一ミリもないから」
(で、ですよね~……)
そこはやっぱり、男と女、宥められるように勝負は一瞬でついた。
☆☆
「ん、んぅぅ、…泰叶」
なけなしの理性も溶かすようなキスをもうどれくらい続けているのだろう。
頭が完全に回らない状態で泰叶の欲を帯びた男の顔を見上げる。
今は、タオルが申し訳程度に肩に乗っている状態で、何もつけていない状態の胸は、泰叶の手中でいいように弄ばれている。
やわやわと揉まれ、先を指先で抓られて、抗議の溜息を漏らして漸くキスから解放された瞬間、胸に湿った熱を感じる。
「あっ、やぁぁ…、ふっ」
見れば、泰叶の赤い舌が、私の胸の先端の敏感な部分を舌で転がし、口に含みまるで赤ちゃんのようにチュパチュパと音をたてながら吸い付いている。
乳房を弄ぶようにゆるりと持ち上げて、揉みしだきながら、耳元で愛と共に淫らな言葉が囁かれる。
「ふふっ、茜、可愛い、あぁ、柔らかいね、だけどほら、ここはこんなにコリコリしてきたよ、茜も気持ちいい?」
見ると、泰叶の唾液で光った乳首が痛いくらいに固くなり、熱を持っている。
「はんっ、やっだ、そこばっかりっ、泰叶、やめ……」
そう言って、泰叶から逃れるように体を反らすと、反対側の胸に顔を寄せる泰叶。
「こっちも、同じようにしてあげようね」
そう言って、反対側の乳首に見えるように舌を伸ばす泰叶。
「あっ、ダメ、泰叶…、ああっ…」
今日の今日まで弟同様に接してきた美貌の男が、自分の胸を蹂躙している淫靡な光景を目にするだけでも、居たたまれない。
ぽつぽつと火照っていく熱を知るかのように、泰叶の舌は、徐々に私の肌の至る所をなぞり、無数の赤い跡をつけていく。首筋に、胸元に、腹部にと、何度も何度も私の名を呪文のように繰り返しながら。
泰叶の手は、不埒な欲望のままに曲線を描くように、私の胸から腰をなぞり、尻から太ももを撫でたところでピタリと止まった。
そして、少しの間を置いて、私の肩膝を持ち上げた。
「泰叶…」
私は頼りない声をあげた。
僅かに体に巻き付いていた、バスタオルが私から外れて、ひやりとした外気がぬかるんだ蜜口にあたるのを感じた。
一気に不安に近い緊張に襲われた私は、縋るように泰叶を見つめる。
そこには、熱を持て余した切なげな男の顔があった。
心拍が早まり、期待と緊張で顔を歪める私に気付いたのだろう。
泰叶は、私の太腿の間に膝を割り込ませて、右手で私の太腿の内側に手をかけたまま、私に覆いかぶさった。そして左手で私の頬を包み込むようにして、唇を深く貪った。
内腿をまさぐる右手の刺激と口内を蹂躙する熱い舌で愉悦に溺れていく僅かな理性はもう失われつつあった。
「茜、好きだよ…」
そう言って、もう一度唇を重ねると同時に、それまで迷うように太腿を撫でていた右手の指先が、私の蜜口に触れた。
「すごい……」
それが何を表しているのかを察した私は、羞恥に顔を背けた。
だけどそれを追いかけてくるように更なる口づけを求める泰叶の顔は、情欲と幸福感に溢れている。
「すごい、濡れてるね、茜、気持ちよさそう…、早くここに入りたいな」
その直接的な言葉に答えられない私は、蕩けた顔で泰叶を睨みつけた。
「照れてる、可愛い、茜…」
そう言って、泰叶はまた私に口づけた。
「あっ、やぁ、泰叶……」
泰叶の指はヌチャヌチャと私の蜜口を蠢く。
その度に隠避な痺れが体に走り、私はピクンと体を仰け反らせる。
「ここ、気持ちいい?…ねぇ、茜、もっともっと、気持ちよくしようか?」
クチュクチュと長い中指を動かしながら、私の顔を少し意地悪そうに見つめる泰叶。
蜜壺の入り口を指で何度も往復した後、その指は中に沈められた。
「っ……」
久しぶりの感覚に、顔を歪める。
「……あぁ、やっぱり狭いね、久しぶりなんだもんね、大丈夫だよ、茜、これから、ゆっくり、時間をかけて解してあげるからね、俺は茜にただ痛い思いをさせたりしないからね?」
そう愛し気にささやく言葉をぼんやりと聞いていた私は、突如体制を変えた泰叶を見て驚愕した。
「えっ、ちょっと待って、そんなところ、やだよ?」
悲鳴のような拒否は、まったく聞き入れられる事なく、端正な顔はなんの躊躇もなく、私の股の間の治まったのだ。
「ひっ!? やぁぁ、泰叶、待って…」
膝を抱えられたまま、尖らせた舌先でピチャピチャとあり得ない場所を舐められ初めた私はもはやパニック状態だった。だけど、泰叶は容赦なく続ける。
「ま、待って、泰叶、そこだめぇ、敏感過ぎるから…」
私の身体は泰叶の舌遣いの一つ一つを敏感に拾い上げ、下肢をびくびくと身悶えさせる。
それだけでも息を吐く間もなく、快感を逃せないのに、時折、蜜口の上の一番敏感な部分を舌でぐりぐりとされると刺激の強さで発狂しそうになる。
そのうえ、泰叶は私の一番敏感な部分を舌先で責め立てながら、蜜口に指を入れ、それを
抽挿し始めた。
「ひっ、やぁぁぁっ---…!?」
火照った陰唇を執拗に責め立てる泰叶から、逃れようと腕を使って後退ろうとしても、掴まれた腰は、もっと泰叶の端正な顔に近づくように固定し直されて、私は涙を流しながら首を振った。
「あっ、あぁぁ、っ、ダメ、泰叶ダメ、強すぎるの、なにか、きちゃう…」
二本に増やされた指は、その形を変えながら私の内部を抉り、時々、跳ねる程刺激を受ける場所を探しあてた後に、執拗に同じ場所への抽挿を繰り返す。
「や、やなの、そこ、やだっ!?」
私は涙目で、泰叶に訴えた。
「ダメっ……!?泰叶、怖いのっ…」
「うん、茜、いいよ、いっちゃって…」
苦痛と紙一重の快感が弾け散り、視界が突如明滅する。
硬直していた体が痙攣する。
「あっ、ダメ、ダメぇぇぇ……!!?」
次の瞬間、体から力という力が抜け落ちた。
身体のあちらこちらが力なく震えている。
「あぁ、茜、上手にイケたね、これでやっと気持ちよく繋がれるね」
茫然と見上げる先に、泰叶は情欲を帯びた泰叶の顔があった。
愛し気に私の髪を撫でて、顔を近づけた泰叶は、私にチュッと口付けると自らの下半身を覆っていたものを脱ぎ捨てた。
「……これでも、我慢したんだよ、もう痛くて、辛くて、限界…」
そうして目にした泰叶の滾りを見て、私は総毛立つような震えを感じた。
「大き……」
涼し気な面立ちに似合わない、赤黒くて凶悪にすら見えるものは、パンパンに張り詰めて、先端から先走りを垂らして、テラテラと光を放って見える。
あれが、今から本当に私に挿るというのだろうか。
脱いだジーンズの財布の中から数個連なった長方形の何かを焦れたように探し当てたらしい泰叶は、私から背を向けて、それを切り離し、しばし俯いた後に、私に覆いかぶさった。
「茜、大好き、ずっと大事にするから、一生、離れないで俺と繋がっていて」
若干、不穏過ぎる愛の言葉を囁いた泰叶は、私の唇を塞ぎ、強請るように私の膝を持ち上げて、その間に体を割り入れた。
「あっ…」
その時、クチュリと粘ついた蜜口に押し当てられる熱を感じた私は身じろいだ。
「逃げないで…、お願い、茜…」
そう縋るように熱を持った黒曜石の瞳に見つめられた私は、小さくうん、と頷いて、泰叶のサラサラの髪に指を絡めた。
それに嬉しそうに顔を歪めた泰叶は、次の瞬間、ツプンと花弁を掻き分けるように腰を進めた。
「あっ…」
先ほどまでの愛撫で慣らされたそこは、一瞬容易にそれを受け入れるかと思われたが、その後、それは間違いだったと思い知る事になる。
「あっ、あっ、あっ、泰叶、ダメ、おっき、あっ…」
太くてみっしりと重量感のあるそれを受け入れるのは容易ではなかった。
みちみちと隘路を広げながらまだ先があるのかと気が遠くなりそうになる。
「やっ、泰叶、苦しっ……、嘘でしょ?まだ入って…」
「ごめんっ、茜、もうすぐ、もうすぐだから、少しだけ、我慢して、できるだけ痛くしないから」
きっと、これは久しぶりだからという次元ではないのだと、今になって気付く。
泰叶のモノが、私の記憶に僅かにあるものよりだいぶ大きいのだ。
「……やだ、泰叶の大きすぎて」
「茜、今、そんな事言わないで、何と比べてるか想像したら優しく出来なくなりそうで怖いから」
その言葉に私は息を込み、泰叶の言う通り黙り込む事に決めた。
だけど、それは遅かったようだ。
一度少し腰を引いた泰叶は、その後、腰をグッと奥に推し進めた。
「ひゃっ!?」
その瞬間、ドンと奥に打ち付けられた衝撃で私は、泰叶と私の行き止まりを思い知った。
「悪い子だね、茜、茜がいけないんだよ、こんな時に、他の男の事を思い出したりするから」
「違っ、そうじゃないのに!」
涙目で見つめた泰叶の顔を見た私は、ぶるっと、身悶えた。
「俺が、どんなに茜の初めての男になれなかった事、悔しく思ってるか分かってるの?」
「っ……」
「あぁ、気持ちいいよ、茜……」
そう言って、泰叶は、私の唇を塞いだ。
小さく腰を動かして、眉間に皺を寄せる泰叶は、この状況を心に刻みつけているようでもあった。僅かなアロマの香りの中に混じる男の汗の匂いが、ふわりと鼻孔を擽る。
今、私は、泰叶に抱かれているのだ。
「茜…」
「うん、泰叶…」
「ずっと、こうしたかった」
「うん、そうだね」
そう言って私は、泰叶をギュッと抱きしめた。
ごめんねって、口に出したかったけど、それは少し違う気がして、言ってはいけない言葉な気がして、私は飲み込んだ。
「……俺、茜の最後の男にはなりたい」
そう言われた瞬間、鼻にツンとしょっぱいものが込み上げた。
それを悟られないように、泰叶を抱きしめた。
「うん、泰叶、いいよ、そうしようね」
すると、泰叶がピクリと震えた。
「……約束?」
そう少し弱々しい確認の声が聞こえたから
「うん、約束」
私は、泣きそうになりながらも、少し明るい声で答えた。
「嘘ついたら、死ぬまで抱きつぶしていい?」
「ははっ、嘘吐かないけど、泰叶なら、嘘吐かなくても抱きつぶされそうで怖いよ」
そう言った瞬間、繋がっている泰叶のモノが大きく重量を増したのを感じた。
「あっ!?」
「じゃあ茜、今日のセックスは指切りげんまんだからね?」
「えっ……」
「嘘吐いたら、一生俺の部屋から出さないから!いや、俺のチンコ茜の中から抜かないから!!」
(皆さ~ん、ここに超ヤバい抱かれたい男がいますよ!?)
なんて言っても、きっと、テレビで泰叶を見るファンの女の子達は誰一人として信じてくれないだろう。
結局この日は、ベッドで四回、翌日の昼のシャワーで一回、その後二回押し倒されたところで、泰叶のマネジャーさんからの抗議の電話により漸く解放された私は、抱きつぶされてないと言えるのだろうか?
それはまた別のお話。
了
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