精子を下さい!

たまりん

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大きな体に組み敷かれ、経験したことのない程の至近距離で優しく見下された。

薄褐色の瞳。
兄より男性的な顔の作り。

少し厚めの唇がどこか妖艶に思えてゴクンと唾を飲み込んだ。

静寂の中、遠くから聞こえるのは僅かな虫の声。

その音を上回るようにドクンドクンと脈打つ私の心臓の音。

「麻衣子…」

そう名を呼ばれ、そっと唇に触れるようなキスが落とされた。

そして私の耳元に囁かれるような低音の声。

「色々、順番がおかしかったけど」

そう言われてジッと見つめられた。

「----好きだ。」

その言葉に目を見開く。

「あぁ、そうだな俺、…お前の事が〝好き″だったんだな、口に出してみてようやくしっくりきた。」

そう染み染み納得するように、何故か満足そうに頷きながら、私の頰に触れて横から目を細める翔真さん。

(好き……?)

そう言われ慣れていない言葉に驚くしかない私。
そして、判りかねるように首を傾げて、翔真さんと目を合わせた私に、困ったように翔真さんは笑った。

「でも、いつからって、聞くなよ?」

「……え?」

「俺にも、よく分からないんだ……。ただ、会った時からずっと、ほんとずっと、気づいたら、いつもお前の事で悩んでた。」

(え……、え……?)

「翔真さん…、それって…」

(単に困ってたんじゃ…)

困らせていた自覚のあり過ぎる私は、眉を寄せた。

「それって、………好きなのとは?」

(違うのでは……?)

そう、口にしようとした瞬間、そっと人差し指で優しく口を押さえられた。

「……、だったんだよ。だって俺、そんな風に、誰かの事、一日中考えたことなんて今までねえもん…。」

そう言って照れたように少し目を逸らされた。

「翔真さん…?」

「だからさ…、正直、結構しんどかったな…。」

(え……?)

「しんどい…?」

やはりと眉を寄せる私に翔真さんは、ちょっとだけ意地悪に小さく笑った。

(苦しめていた…?)

翔真さんの言葉の意味が分からずその一言一言に一喜一憂してしまう。

「あー、しんどかった。自分の気持ちにちゃんと気付く前に…まさか自分の精子にまで嫉妬するなんてな…」

「は…はい…?」

(せ、精子に嫉妬?)

引き攣った顔の私を見て、翔真さんは唇を釣り上げた。

「おかしいだろ?自分でも呆れたな。…夜中に何度も想像するんだ。お前の中に俺の(精子)が入って、一杯になった腹から俺のものが滴り落ちて…、その腿を濡らすんだ……」

そう言って、翔真さんは、私の下腹部を服の上からそっと押さえた。

「っ……、」

それに体が反応して身体が熱を帯びる。

「麻衣子…」

名を呼ばれ、再び唇を塞がれる

今までよりも一層深く求められるような口付けにオズオズと応えた舌を、一気に絡め取られて口の中を蹂躙される。

「はっ…あっ…、」

時々息継ぎをしながら長く長く続くキスに、体も心も蕩けていく。

…もう何も考えられない。

力を失った体を、翔真さんに支えられる。

「もう、いいよな…?素直になっても。お前への気持ちにも、自分のどうしようもない欲望にも…」

そう言って覗き込まれる熱い瞳に私は目を瞬かせた。



********

「はぁ、翔真さ…、ダメ、もう……」

形を変える程に、揉まれる胸の先端を唇に含まれて、密口から長い指を入れられ攻め立てられる。  

最初は一本に悲鳴をあげたそこにはきっと二本、いやもしかしたら三本に増やされた指を苦しそうに咥え込んでいる。

「んっ…… ダメ、ダメだから……」

どれほどこうして乱されているのだろう。

何度も何度もその長い指と、淫らに這う舌と、時には恥ずかしい言葉を使い私の全てを高め続ける翔真さん。

何度も、目の前が白くなるような虚脱感を経験した私は、もう何もかもが分からなくなるくらい力の抜けた体をクッタリと翔真さんの前に曝け出していた。

着ていた上着を邪魔そうに脱いだ翔真さんの身体が迫る。
大きくて、均整の取れた筋肉をしっかり纏っている男の人の身体。

羞恥も理性も取り払われた私は、ハクハクと息を吐きながら、目の前の翔真さんを見上げていた。

秘所を散々かき乱していた、指が私から抜かれクチュリと立てる音に身体がピクンと反応する。

ツッと引いた糸のような愛液を纏った指を躊躇いなく舌で舐めた翔真さんは、憂いを帯びた顔で私の頭を撫でた。

「随分解れたな…。いい子だ…」

そう言った翔真さんは、再び私の唇を優しく食んで耳元に囁いた。

覆いかぶさるように抱き込まれたその瞬間、肌と肌が下半身で触れ合うのを感じた。
固い熱のようなものに触れたと思った瞬間、ベッドの下に翔真さんの着けていた最後の下着が放られた。

その瞬間キスが何度も落とされた。

不安そうな私を安心させるように、優しく優しく唇を食む翔真さん。

「いくぞ……、麻衣子」

そう言ったかと思えば、太ももに熱くて湿った何かを感じた。

それが既に敏感になりすぎた蜜口を何度か音をたて往復したと思った瞬間、入り口に熱いものが押し当てられた。

抽送を繰り返しながら、狭い入り口をこじ開けるようにして中に侵入してくる熱の塊の重量に驚く私。

「はっ……、翔真さ?」

目を見開く私の唇を自分の唇で塞ぐ翔真さん。

(なっ…、何これ…?)

硬く大きな熱に狼狽える私に目を細め、大丈夫だと宥められるようにまたしても優しく何度も唇を食まれる。

涙目で強張る私の気を引くかのように抽送を繰り返しながら、花芯を撫で上げる指先の動きに私は嬌声を挙げた。

「麻衣子、ゴメンな、ちょっとだけ我慢して…」

その間にも、まるで逃がさないとばかりにしっかりと抱かれた腰。

下腹の中の締め付けは徐々にきつくなり、割開かれるような痛みに顔を歪めた。

「あっ……ひっ…」

その時何かが弾けるような不思議な痛みを感じたと思ったらギュッと抱き込まれた。

「ふっ……」

酷く艶めかしい顔をした翔真さんと瞳を合わせる。

髪を撫でられて労わる様に見つめられる。
次の瞬間、目尻から溢れた涙を愛し気に親指の腹で拭われて気付いた。

荒い翔真さんの息遣い。

「は、入った…の?」
 
そう問いかける私に、何かを我慢したような切なげな表情で頷く翔真さん。

「あぁ、繋がった。…お前の中、熱くて狭くて、たまらないな……」

そう言われて髪を撫でられながら、再び唇を受け止めた。

時折、余裕がなさそうに眉間に皺を寄せる翔真さんに甘やかされるようにどれだけそうしていただろうか。

そのキツさに少しだけ慣れ始めた頃、翔真さんに請うようにジッと見つめられた。

「麻衣子、……動いてもよさそうか?」

そう案じるように問われて、コクリと頷くと、翔真さんが堪りかねたように私を抱きしめ、腰を少しずつ動かしはじめた。

「あっ……」

「くっ……」

同時にあがる声に今、二人が一つに繋がっている事を実感する。

(私の中に、翔真さんがいる……)

「麻衣子……」

(名前を呼んでくれる……)

ギュッと苦しいくらいに抱き込まれ、もっともっとと距離を詰めるように穿ちつけられる熱。

時折、私の身体を濡らす、翔真さんの汗。

「麻衣子……、気持ちいい……」

そう言って、切なく口づけられるその余裕のなさに、不思議な感情を覚えた。

痛くないかと言われたら痛い……

でも、それを上回るほどの愛しさに痛みすら麻痺して……、この状況に堪らない快感を感じる。

そう思った時に、身体の奥の異変を感じた。

打ち付けられた瞬間、電気が走る様に体の奥の奥が歓喜の声を上げた。

「あぁん……」

そう言った瞬間、目を見開いた翔真さんと目があった。

翔真さんは、次の瞬間、少しだけ悪い顔で微笑んだ。

「ここだな……」

そう言った翔真さんは、まるで探る様に私の顔を見つめながら、同じ場所を責めたらた。

「あっ、ダメ、翔真さん、そこダメ、ダメだから、そこばっかりヤダ~」

突然の激しい快感の連続に怖くなり涙目になる私をどこか愉悦を含んだ顔で何度も穿ちつける翔真さん。

肉と肉がぶつかる音が室内に響き渡り頭がおかしくなりそうだ。

「もうっ……もう、ダメ、ダメだから、翔真さんお願い……」

もう、何をお願いしているのか自分でも分からなかった。

「やめて欲しいのか?」

そう問いかけられてそうでは無い気がして、私は戸惑った。

「ちがっ…… 、やめないで…… 」

自分のその言葉に驚いた。

その瞬間翔真さんはニヤリと笑った。
今日一番、悪い顔かもしれない。

ピタリと動きを止めた翔真さんに不安になる。

「翔真、さん……?」

戸惑う私に、翔真さんは、一度息をして面白そうに問いかけた。

「はい、麻衣子さんに最後の質問です。今から約束通り、この俺様の金の精子をこの中に入れてあげます!
麻衣子さんが欲しいのはこの密封容器スポイトセットですか? それともこの俺様の金のちんこですか?」

そう言われた私は目を見開いた。

「…………翔真さん、もしかして結構根に持ってます??」

そう問いかけた私に、翔真さんは私を睨み付けたまま若干顔を引き攣らせた。

「たりめえだよ!!人を散々種馬扱いしやがって、男ってのは意外に傷つき安いんだ!!」

「すっ……すみません!!」

咄嗟に謝る私に息を吐いた翔真さんは、まだ不機嫌に眉間に皺を寄せたまま私に言った。

「で……?どうなんだよ? お前は今でも、……まだ俺自身でも、スポイトこいつでも変わんねえのかよ…?」

そう言って、忌々しく密封容器とスポイトを睨み付ける翔真さん。

私は、申し訳なさにオズオズと口を開いた。

「……スポイトのほうが、色んな意味で安全だと思ったんです。私も怖かったし、相手の人にも罪悪感とか責任とか感じて欲しくないっていうか……。」

その言葉をジッと聞く翔真さん。

「でも……、今は……」

「今は、何だよ?」

その先を焦れた様に待つ薄褐色の瞳。

「………感じていたいです。翔真さんが一番近くにいてくれること…。他の誰でもない私を求めてくれてること……。それを私自身が、何よりも、すごく喜んじゃってる事…。」

そう俯いて口にして、見上げた翔真さんの顔は、私が知る中で一番優しい顔だった。

……。」

***********

それからの翔真さんは、勢いを増し、結局初めてにも関わらず、私はあれから数回翔真さんの精子をお腹一杯になるまで受け止めた。




それからの翔真さんは、まるで間違えてしまった手順を一つ一つ取り戻すように私を大切に甘やかしてくれた。


映画に行って
食事をして
水族館や動物園を巡って私の尽きる事のない話をちゃんと最期まで聞いてくれた。

二人で色んなところに旅行に行ったりもして、同じものを見て笑いあうその距離感がとても愛しいと感じた。

そして誕生日を25本のロウソクとネームプレート付きのケーキでお祝いしてくれた翔真さんは、その時に、誕生日プレゼントとして私にを誓ってくれた。

その時に涙目で「皇帝ペンギンみたいに、何があっても私のところに帰ってきてくれる努力をしてくれますか?」
そう問いかけた私に、やや引き攣り気味に頷いてくれた翔真さんに私も永遠の愛を約束した。



そして、今、お腹に子供を宿した私に翔真さんはを追加してくれた。

「これから先、どんな事があっても、俺はでこの子の成長を見守って行くからな…。よろしくな、ママ……」

そう言って、笑ってくれる翔真さんをみて、本当にこの人がいてくれてよかったと思った。



************


そして結婚式を出産後に見送る事にした私たちは、今日入籍をすませた。

「本当にいいのか…?」

「うん……、きっと喜んでくれるよ?」

そう答える私に、「そうだな」と頷きながら亡き兄の部屋を名残惜しそうに見つめる翔真さん。

私達は、新居の準備に取り掛かっていた。

新しい家族を迎えて、未来を生きていかなければならないのだ。

過去にだけ執着してはいられない。

何より、今は亡き家族もそれを望んでいてくれるだろう。

だから、二人で話し合った結果、家族との縁の薄い私の為に「せめて思い出だけは大切にしよう」と翔真さんが私の実家に移り住んでくれることになった。

兄の部屋を子供部屋に……
台所と居間を一つ続きにしてリビングダイニングに改装するのだ。


「では、奥様、ご希望は先ほどの通りでよろしいですね?」

業者さんの最終確認に私はしっかりと頷いた。

「では、仏間だけは既存のままで……」

そう付け加えてくれる業者さんの心遣いに感謝して私たちは家を出た。

兄の所有しているマンションに向かうためだ。

兄の死後、私は兄のマンションに足を踏み入れた事はない。

部屋の簡単な片付けは球団の人達がすませてくれたと聞いている。

あそこまで、空っぽなのを見たくなかったのだと今は自己分析できる。

どこかでまだ兄がいるような……

そんな死を信じられない錯覚に浸っていたかったのかもしれない。

でも、これを機にきちんと遺品を整理して、未来を歩き出そうと翔真さんと話し合った。

マンションの鍵を開けて、室内に入る。

シンとした空間。
まだ、真新しいマンション。

誰もいないこの空間に今立てるのは、隣にこの人がいてくれるから。

「お兄ちゃん……」

そうかけたくなる声をギュッと飲み込む。

私の隣で、先を促す翔真さんの瞳に頷いた。

二人で室内に入り、部屋を喚起するために、バルコニーに向かった翔真さんは、8階から眼下を見下ろし、
そこに佇んでいた。

その瞳の先には、かつて兄がプレイしていた野球場が賑わいを見せていた。

鳴り響く応援団の声、赤と青に別れたファンの纏うユニフォームの色。

それを二人で見下ろした。

「あそこに……いたんだな、あいつ」

「うん……」

そう二人で在りし日の兄の姿を思い浮かべる。

「はじめるか……」

そう言われて頷いた私達は兄の部屋を片付け始めた。

リビングダイニングを広くとった3LDKのマンション。

一室は寝室で、もう一室は私が泊まりに来た時のための客間だと言っていた。

もう一つの部屋は「あっ、そこは物置にしてるから、入っちゃダメ」そう言って兄にやんわり入室を止められた事を思い出す。


その部屋のドアを指さされ「この部屋は?」

そう翔真さんに問われて「うん、物置にしてるってお兄ちゃん…」

そう答えた。

「そうか……」

そう言って、二人で立ち入った部屋は案外スッキリと片付いていて……。

部屋には、高校の野球姿をした兄がもう一人の男の人と並んで笑う姿が大きな写真で飾られていた。

「これ……、俺??」

翔真さんが、立ち止まり、目を見開いた。

「あいつ、…何だってこんな」

そこにはいくつかのトロフィーやメダルが角に寄せられるように並んでいた。

「思い出の部屋かな…?」

そう思った私は、ソファーベッドの横のサイドテーブルの上に乗せられている大きめのデジタルフォトフレームの電源を無造作に入れた。

その瞬間、画面に表示されるまだ少し幼さが残る笑顔。

「翔真さん……?」

やっぱり、野球の思いでの写真集なんだと思い、それに魅入った。

後ろで固まる翔真さん。

「ちょっと待て……、何人チームメイトがいたと思ってんだよ…」

振り向くと引き攣った顔で立ち尽くす翔真さん。

「……何だって、全部が全部にが映ってるんだよ?」

そう言われればと、再びフレームを見つめる。

「本当だ……」

一見、同じユニフォームを来た野球青年が沢山登場しているが、その全てが翔真さんを中心に撮影されたもののようだった。

むしろ兄より、翔真さんの写真ばかり映し出されるスライドショー。

「あ~、本当だね。お兄ちゃん、翔真さんの事がよっぽど好きだったのかな?」

何気なくそう言った一言に、その場の空気はピシリと固まった。

「ば…馬鹿いってんじゃねぇ……」

翔真さんの額には明らかに汗が浮かんでいる。

焦ったように眉間に皺を寄せた翔真さんは部屋中を見回した。

そして、一点に目を向けて固まった翔真さんは、何かを隠すようにして私を振り返った。

「こっ……この部屋は俺が片付ける。お前はリビングと、お前の部屋を片づけとけ!!いいなっ?」

そう凄い勢いで言われて私が出た瞬間、翔真さんはピシャリとその部屋を締めた。

「ちょ……、翔真さん、あれ開かない…。鍵するなんて酷い。ねぇ…?」

「いいから、あっちを…。頼むから…。」

そう言われた私は、言われた通りにリビングに向かった。









































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