異世界で、初めて恋を知りました。(仮)

青樹蓮華

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 次第に汗が出るほど体が熱くなってきた。短期間での体温の変動のせいか、気持ち悪さが残る。神経がゾワゾワするような、なんとも言い難い気分が続いている。


 まだ、足元もふらふらするためカイに横抱きにしてもらって医務室へ向かっている。
「また、カイに運んでもらって、いつも悪いな。俺がわがまま言ったばっかりに、みんなに迷惑かけて・・・。」
「違うだろ。あの店主が気がかりだったんだろ?ナオトの考えてる事は大体わかる。顔に出やすいしな。それにナオトの警護を少しでも外れた俺が悪い。全部あいつの計画だったのかも知れねぇ。くそっ。」

 そっか・・・ポーカーフェイスは得意だと思ってたのにな。この世界に来て自分の感情に蓋をするのことが出来なくなった気がする。これがいい事なのか、悪いことなのかは分からない。

 医務室ではブレアと、フードを被ったフィンが待機していた。俺には治癒や鑑定魔法が出来ないから、どうするんだろう。それに魔法が発展してるだけあって、きっと医療自体はあまり発展していない。何もできることはないだろうな。

「ナオト!」
 フィンが俺に駆け寄り、顔を覗かせる。心配そうな深紅の瞳がこちらを見ている。俺は「大丈夫だよ。」と、フードの中のフィンの頬に手を添える。しっかりと顔が見えないのは残念だけど、今は仕方がないな。
 俺が手を離すと、フィンがベッドの方へ案内してくれる。カイが案内されたところへ俺をゆっくりと降ろしてくれた。
「ちょっと口ゆすぎたい・・・。」
 気持ちの問題だけど、スティーブンと接触してから口元の気持ち悪さが残っている。察したカイが器に水を汲んで持ってきてくれた。サッと口を流しブレアが拭いてくれる。その後カイは「報告に行ってくる。」と医務室を出て行ってしまった。

「えっと。ナオト、今体調は?しんどいでしょ、横になって?」

 ブレアがおずおずと尋ねてくる。 多分本気で心配をかけてしまったんだな。俺はベッドに横になりスティーブンにさらわれてからの体調の変化を一通り説明した。するとフィンが考え込んでいる。

「スティーブン閣下の魔力に当てられたことと、・・・もしかしたら魔力増強剤を過剰に摂取されたのかも知れません。こればかりはもう推測の域を超えないので、経過を観るしかなさそうですね・・・。」

 それを聞いていたブレアも何やら考えていて、閃いたようにこちらを見た。

「ナオトが僕に魔力を流し込んでみて?そしたら、ナオトの魔力がどんな状態か分かるかも!」
 すぐさま俺は首を横に振りブレアの提案を拒否する。
「今、全然魔力がコントロール出来なくて、また体が熱くなってるし、ブレアがしんどくなるかも知れないからそんなこと出来ない。」

「いつもナオトの魔力訓練をしてたのは僕だよ。だからナオトの魔力コントロールの精密さは知ってる。鑑定魔法が出来ない分少しでもナオトを助けるヒントが欲しいんだ。」

 いつもはあっけらかんとしてるのに、今日はずっと険しい表情をしている。いや、俺がさせてるんだろう。年下にこんな気を遣わせて面目ない。俺がどうしようか考えていると、コツコツと誰が歩いてくる音が聞こえる。
 エドガー殿下が入ってきた。その後クリス、カイ、アルベルトが来て顔馴染みが揃った。クリスとアルベルトは俺の姿を見て安心したような、不安気な表情をしている。
 俺は今すぐ二人に抱きつきたい気持ちを抑え、エドガー殿下に何を言われるか身構える。しかし、エドガー殿下はブレアに視線を移していた。
「いい、続けろ。」
 おそらくさっきまでの会話を聞いていたであろうエドガー殿下がブレアに言い放った。ブレアは特に怯えるわけでもなく、ただ俺の方を悲しそうに見ている。

「僕は大丈夫だから、ナオト手かして?」

 ベッドサイドにいるブレアが手を重ねて来た。いつものように指を絡めるように握られる。背後にいるエドガー殿下の威圧はどうでもいいし、ブレアに負担をかけるのは本意ではない。
 でも、ブレア自身が俺を心配して言ってくれているのが分かるからなるべく抑えてながら魔力を流していく。それでも身体の中をうねってコントロールできるような状態じゃない。時々顔を歪めるブレアが可哀想で魔力を流し込むのを止めた。

「・・・ナオトは通常でも充分な魔力量だけど、今は密度もすごく上がってる。うーん、魔力増強する成分を持つ薬を調合されて、多量に飲まされた可能性が高いと思う。しんどかったね。薬の効果は時間を追うごとに無くなると思うよ。それまでに魔力が暴走しそうになったら・・・、えっと、移行するのがいいと思うよ・・・。」

 顔を赤らめるブレアを気に止める様子はなく、エドガー殿下は一通り聞くと俺の方を見る。

「言質を取りに来た。拉致したのはスティーブン閣下で間違いないか?」
 俺はなんとか起き上がり、エドガー殿下を見上げる。安定しない身体はすぐ横にいたフィンが支えてくれた。
「間違いありません。俺の魔力をだいぶ奪われました。なんか実験器具のようなものに溜めてて・・・。何を企んでるのかは分からなかった。」

 エドガー殿下は「ふん。」と鼻を鳴らし少しの間考える。
「そうか、決まったな。スティーブンは称号の剥奪、指名手配にするか国外追放とするかは父上次第か・・・。残りの根城を捜査せねば。」
 俺を向いていたエドガー殿下が後ろに控えていたクリスとカイを振り返る。

「クリス、カイ団長は私と共に着いてきて貰おう。事の始末と今後の動きを考えなければいけない。あと、ブレアには神子の体の状態を詳しく教えて貰う。」
 始末?ザワザワと感情が揺らぐ。それに反応した魔力が暴発するように周囲に漂う。
「待って!城下町に行きたいって駄々を捏ねたのは俺なんだ。罰を受けるなら俺だけにしてくれ。」
 後ろから俺の身体を支えていたフィンの手に力が入る。カイは俺の口を手で塞ぎこれ以上の発言を封じる。
「ナオト、お前はなにも言うな。俺はどんな罰でも受けないといけねぇ立場だ。いつ騎士を辞めてもいい。」

 俺の魔力が散乱して、医務室内に立ち込める。それに伴い体温も上昇する。

 有終の美を飾ることが全てだとは思わない。だけど、俺のせいでこんな終わり方になるのは絶対に嫌だ。心血を注ぎ騎士として仕事をしてきたカイの終わり方は、もっと本当にカイの望む形であって欲しい。
 俺は姿勢を保てなくて、フィンにもたれかかってしまった。フィンは俺を力いっぱい抱き、支えてくれる。エドガー殿下は、俺の身体の状態など気に求める様子はなく俺を一瞥し嘲笑う。

「団長であるのに簡単に辞めさせる分けないだろう。これからスティーブンが何を仕掛けてくるか分からない。お前には責任を負う価値もない。口出しするな。」
 冷たくそれだけ言うと、アルベルトとフィンを残し医務室を出て行った。アルベルトは俺の方に駆け寄り、フィンの腕から俺を抱き寄せた。

「どんな事でも最終決定は、リチャード国王陛下だ。カイ団長はそれよりもナオトを守れなかった方が辛いだろう。私も同じだ。ナオト、魔力を抑えれそうか?」

「一人では難しい。アルベルト」
 俺はアルベルトの手を取り自分の頭に置く。自然とアルベルトが俺の頭を撫でてくれる。荒ぶった感情を宥めるような手つきにさっきまでのトゲトゲした気持ちが嘘のように静まっていく。俺は目を瞑り深く呼吸をした。魔力はまだ平常では無いが、フィンの前でずっとこうしてるのもな。アルベルトの胸をそっと押しやって離した。

「いつもありがとう。アルベルトもう大丈夫だよ。・・・・んっ?」
 目を開けるとすぐそこにアルベルトの顔があった。何度か口付けを交わす。処置としてしてくれてるのは分かるけど・・・。魔力の増幅とは別に顔がどんどん熱くなっていく。
 好きな人との触れ合いはやっぱり心地いいと感じてしまう。いつの間にか、魔力は落ち着いていた。
「こっちの方が、早く楽になると思ったんだが良かったか?」
 俺は、赤くなった顔をフィンに見られないように顔を背ける。
「うん、だいぶ楽になったよ。ありがとう。俺、今日はここで寝ないとダメ?」
 アルベルトは、フィンの方に視線を移す。フィンは戸惑いながら返事をする。
「そうですね。一晩はここで、誰かか傍でナオトの様子を見ていた方が良いでしょう。」
 アルベルトは頷くと、ベッドサイドの椅子に腰をかける。
「なら、私が残ってナオトの様子を観ておく。」

「何かあれば呼んでください。私もいつでも対応致しますので。あと、私はナオトのことを価値がないとは思いません・・・。」
 フィンにしてはとても珍しい、怒りを隠した声で言い放つと医務室を後にした。

 俺以外の病人はいないようで、医務室に二人きりになった。ベッドサイドの椅子からこちらを気遣わしげに見ている。
「アルベルトは寝ないの?俺もう大丈夫だよ。」

「私が寝てる時にナオトに何かあれば心配だ。しんどくなってもナオトは気を使って起こさないだろ。いいから早く寝てくれ。」

「しんどくなったらちゃんと言うから、一緒に寝て?俺のこと信じて?」

 アルベルトが入れるように布団を持ち上げる。少し迷ってから、アルベルトが入ってきてくれた。
 このベッドで男二人が寝るのは狭いけど、いつも密着して寝てるからあんまり違和感はないな。
 アルベルトの体温や香りを感じることを幸せに思いながら、眠りにつくまでに時間はかからなそうだ。
 伝えれる時にしっかりと気持ちを伝えておこう。俺はアルベルトに抱き寄せられたまま頭を擦り寄せ心拍を確認する。

「いつも心配ばかりかけてごめんね。アルベルト大好きだ。愛してる。それにアルベルトに好きになってもらえて良かった。俺が起きるまで一緒にいてほしいな。・・・おやすみ。」

「当たり前だ、ナオト愛してる。ゆっくり休んでくれ。」

 アルベルトはそういうと俺の額にキスを落とす。アルベルトが見る夢も少しでも幸せなものでありますようにと、心の中で願いながら俺もギュッと目を瞑り眠りについた。
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