双子の姉は令嬢で、妹の私は使用人だけれど、特に問題は無い。

黒鯖

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第10話「王立学園」⑤

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はた、と気づく。
私が受験した場合、受験料という名の寄付金がかからないなぁ、と。
いや、しかし、お嬢様を差し置いて私が受験させてもらえることはないだろう。
お金がかからないとしても、普段の扱いを恨んでわざと不合格になろうとする可能性もある。
その点は、替え玉受験でも言えることだけれど。
そう、だから、いくらお嬢様に甘い旦那様といえど、替え玉受験をしろ、などということはない。
そもそも、旦那様たちは、私がお嬢様の代わりにお勉強をしているということを知らない。
だから、替え玉する必要性がわからないし、替え玉できると思うわけがないはず。
私に替え玉受験させるとなると、一から教え込まないといけない、となるのだから。
平民にお金を使うことになるし、何より、私に知恵を与えるのをよしとするかがわからない。
言うことを聞かせるには、無知の方が好都合なはずだ。
それに、私が人目に触れることを嫌がっていたのだから、受験となれば、会場まで行かなければいけない。
外に出さなければいけない。
万が一にも逃げられるようなことがあったら、と考えるはず。
替え玉して故意に受験を失敗されたり、外に出して逃亡されたり、そう言ったマイナス要素が多いことを考えれば、命令してこないはず。
そう、思ったのだけれど。

「まぁ、ロリヤが通うことに変わりはない」

「ロリヤの代わりに受験できることを光栄に思え」

「明日からは仕事ではなく勉強に励め」

旦那様は躊躇うことなく、そう言い放った。
本当に替え玉受験をするらしい。
嘘でしょうと、内心で大騒ぎしていようとも、驚きすぎて言葉が出ない。
話は終わったと立ち上がったお嬢様に、このまま話を終わらせるわけには行かないと、絞り出す。

「わ、私が一から勉強するよりも、お嬢様自身で受験なさった方が、良いと思います」

そもそも、自分たちが私に勉強を一切させていないことを忘れているのだろうか。
私はお嬢様の代わりに勉強しているけれど、それがなければ、文字すら教わっていない。
いや、それともそれぐらいなら使用人たちの間で教わっていると思っているのだろうか。
けれど、普通、平民は前世の小学校と同程度の学校に通って、文字と簡単な算数を習って終わる。
つまり、使用人は大体小学校卒業した程度の知識だ。
教わっていたとしても、たかだか、小学校までの勉強になる。
小学生に高校受験させるような無謀さだ。
そういうことだとわかっているんだろうか。
むしろ、わかってほしい。
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