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第一章
『宮女募集』
通りに立てられた粗末な板には、そのたった四文字が、やたらと達筆な文字で書かれている。
その掲示を見つけた私は、お使いの途中だというのに、ついふらふらとそちらに引き寄せられていた。
本当は真面目にお使いに行って、急いで帰らなければ怒られる。そう分かってはいても、私の足は根を張ってしまったようにその板の前から動かなかった。
季節は早春。
暦の上では春であったが、まだ名ばかりの寒々しいこの季節。
私の着ている擦り切れたお下がりの着物は、スカスカと冷たい風を通して、防寒の役には立っていなかった。往来を行き交う人混みも土埃が立つばかりで風除けになりはしない。急ぎの早歩きであれば体も温まるが、立ち止まっていると即座に冷え始める。
けれども私は宮女募集の文字に釘付けになっていた。
小さな期待に胸が高鳴る。もしかしたら、と思うのを止められなかった。
その掲示に足を止めているのは私ひとり。ひっきりなしに人通りのあるこの道で、ここだけが閑散としている。そうでなければ人より小柄な私には掲示が見えなかっただろう。
だからこそ、これは運命なのかもしれない、なんて思ってしまうのだ。
宮女募集の掲示の横には小男がぼんやりとした顔で酷く退屈そうに立っていたが、掲示板の前に陣取る私に気が付いて、鷹揚にこちらを向いた。
中年だと思うけれど、眉の薄いつるりとした顔には髭もなく、どことなくおばさんのようにも見える男だ。おそらくは噂に聞く宦官とやらなのだろう。
私はごくっと唾を呑み込み、その男に話しかける。
「こんにちは。あの……この宮女募集って……」
「ああ、皇帝陛下の後宮で働く宮女の募集だよ」
小男は相変わらずぼんやりとした表情でそう言った。暇だからぼんやりしていたのではなく、これが常態らしい。
「と言っても今回はただの下働きの宮女募集でね。それでもいくつも条件がある。若く健康で、生娘であること。不美人も駄目だ。お前さんは――」
言葉を切って私の顔をじっくりと見た。
私は特別な美人でもないが、幸いなことに不美人というほどでもない。平凡な顔であるのは重々承知だ。
「うん、まあ、受からなくもない、というところか。だが、それなりの家柄も必要でね、裕福な商家だとか、役人の家系じゃないといけない。下働きでも読み書きや計算なんかの最低限の教養が必要なのさ」
次いでその男は、私の着ている擦り切れた着物に視線を落とした。
お下がりの上衣は色褪せており、裳には繕った跡がある。手持ちの着物の中でもとりわけ古びている部類だ。こんなことなら今日はもう少しましな着物にしておけばよかった。身を縮めたくなるのを堪えて立つ。
幸い、宦官はこんな酷い格好の私にも淡々と話しかけてくる。
「お前さん、裕福な商家の娘には到底見えないね。だが文字は読めるのか」
「商家ではないけど、役人の娘よ。まあ一応、といったところだけれど。読み書きも出来るし、自分で言うのもなんだけど、こう見えて力持ちだし、とにかく丈夫よ。あ、お金はかかる? 先に言っておくと、私一銭も持っていないの」
「ふうん」
男は気の抜けたような鼻息を漏らす。
確かに酷い襤褸をまとった私は役人の娘には見えないだろう。我が家で働く小間使いだってもう少しましな着物を着ている。
顔も平凡だし、私にはこれといって取り柄がない。あるのは病知らずの健康なこの体だけである。その体すら栄養が不足しているからか、チビで痩せっぽち。姉とは一歳しか違わないというのに、あちらはすでに大人の女性らしい体付き、私の方はガリガリで丸みはかけらもない。
「まあ、良いか。戸籍の写しを出さねばならんから、どうせ不正も出来まいよ。それに試験だってある。試験を受けるだけなら金はかからんが、門前払いになる可能性だってあるよ。それでも良いかい」
「それでも良いです!」
私は食い気味に答えて、力強く頷く。
何せこれまでろくな目に遭ってこなかった。これからだってそうだろうから、出来ることならなんだって試してみたい。それにしたってお金がかからないのは僥倖だ。私には自由になるお金もないのだから。
宦官は首を傾けるように頷く。
「そうかい。それでお前さん、年と名前は?」
「十六歳よ。名前は――」
「――おい、待て待て、どこが十六だ。そなた、良いところ十三、四にしか見えないだろう!」
「はあ!?」
突然、横槍を入れられてカチンときた。
いつの間にやら私と宦官の横に大男が立っており、話を立ち聞きしていたらしい。
私は文句を言ってやろうと険しい顔で大声の主を振り向き、その姿に思わずギョッとする。それもそのはず。見るからに不審ななりだ。
その男は雨でもないのに笠を被っていた。それも長い垂布が付いた笠である。薄い紗のような布だから笠の内側からは外が見えるのだろうが、垂布で腰辺りまでを覆っているため、こちらからでは顔どころか上半身が全く見えない。かろうじてその声と体付きから男であるのが分かる程度。
おそらく旅装束なのだろう。垂布の笠は街道を歩く時、日差しや砂埃から目を守るために被る。だがこんな街中では、邪魔にしかならない笠は外して歩くのが普通だ。
その異様な風体に、眉根を寄せていた私は目を見開いた。
あの宦官も大男を見ている。ぼんやりとした表情ながら今までで一番目が大きく開いているから、さすがに驚いているのかもしれない。
一瞬怯んでしまったが、それでも一言物申さねば気が済まないので口を開いた。
「な、なんですか、貴方には関係ないでしょう!」
「いや、たまたま聞こえたのだが、往来で十六歳などと嘘を吐いているのが耳に入ってきたゆえな。下手したら十三以下でもおかしくあるまい。そんなちんちくりんのくせして、サバを読みすぎであろう」
「なんですって!」
確かに身長が低いせいで若く――というか幼く見られがちではあるが、まさか十三歳以下に見られるとは思ってもみなかった。うら若き乙女になんという言い草だ。
この迦国では十六歳ならもう成人だ。私も立派な大人と自信を持って言えるわけではないが、結婚だって出来るような年齢なのに、道を駆け回る洟垂れ小僧共と一緒だと思われるのは屈辱である。
「身長が低くて悪かったわね! 成長期なんだからこれからだって伸びるわよ!」
「そうかぁ? そんなに痩せて、ちゃんと食べておるのか? 食べねば伸びるものも伸びぬぞ」
「そうね、義理の母が食事抜きにしない日ならね! ってもう、アンタはなんなのよ。私、こう見えて忙しいんだから、あっちに行って!」
「……待て。待て待て。食事抜きとはなんだ。そんなに幼いというのに、そなたは継母にいじめられておるのか。庶民向けの物語でもあるまいに」
「なんだって良いでしょう。アンタには関係ないんだから!」
腹の底がカッと熱くなり、そのまま言い返した。腹が立って毛が逆立っているのか、うなじがピリピリとする。
「言っておくけどね、そんな境遇なんて別に珍しくもなんともない。そこら辺にゴロゴロいるし、いちいち同情される筋合いもないわよ。自力でどうにかするために宮女の募集に乗っかろうとしてるんじゃない。邪魔しないで!」
私はその男に犬を追い払うみたいに手を振ってから、思いっきり顔をしかめて、べえっと舌を出した。
男はもう言い返してこなかった。言い返してきたとしても、無視するつもりだったが。
「ごめんなさい、お待たせしたわね。まさかちょこっと騒いだからって、この場で断ったりなんてしないでしょうね」
私は笠の男を追い払い、宦官の方へ向き直った。宦官は我に返ったようにしきりに瞬きをして私に目線を戻す。
「あ、ああ。まあ……驚いたが、そういうこともあるだろうさ」
それほど驚いている様子には見えなかったが、本人的にはそうでもないらしい。
「ええと、どこまで聞いたか。年は十六で、名前は」
「私の名前は朱莉珠。朱色に茉莉花の莉、それから珠と書くの。朱家の娘よ」
男は落ち着きを取り戻したのか、手にしていた木の板に携帯用の細筆でサラサラと書き込んだ。
「それで、家は役人、と。……おや、朱家で役人といえば、この辺りでは朱高殿しか知らないが」
「それが私の父です。この先の通りにある朱の屋敷が私の家」
「ふむふむ……朱家には二年ほど前に、美女と評判の娘御を後宮にどうかという話を持っていったことがあったんだが……確か娘は一人しかおらず、跡取り娘だから婿を取らねばならぬのだと断られたはずだ」
「それはそうでしょうね」
私は苦笑いをする。さっきの笠の男とのやりとりで薄々は境遇を察していることだろう。
「私は妾腹の娘なんです。多分、二年前に声をかけたというのは、私の姉の朱華でしょう」
「ああ……なるほどね。大体分かったよ。それじゃあ、後で朱家にもう一度話を持っていこう」
「ありがとう! あの、貴方の名前を伺っても?」
「私は楊益だ。察しの通り、宦官だよ。それでも、まあ、あまり期待はしないように」
「ええ! それじゃあ、またお目にかかれることを祈ってる!」
楊益はぼんやりとした表情のまま頷き、また往来に視線を戻した。笠の男はもう見える辺りにはいないようだ。
私は再びあの輩に絡まれないよう、そそくさと急ぎ足で歩き去った。
その帰り道、私はお使いで頼まれた酒の大瓶を担いでいた。重い買い物やきつい仕事は小間使いではなく私の仕事となっている。おかげで力は強いし、体も丈夫だ。
私はずっしりと重い酒瓶を運びながら、先程の掲示を思い返していた。
宮女――後宮で雑務を行う女性のことだ。今回は下働きと言っていたから、妃候補やその側付きではなく、身の回りの世話や雑用をする宮女の募集ということなのだろう。
私の住まう迦国では後宮制度が存続していた。だが、かつては数千人の女たちがいたと言われている後宮も今は随分と規模が小さいのだと聞いたことがある。
「確か、新しい皇帝が即位したばかりなんだっけ」
一年ほど前、即位の前後はそれはもうお祭り騒ぎであった。もちろん私は忙しくこき使われただけで、なんの恩恵もなかったが。
その前は女帝だったはずなので後宮の必要性が低かったのだろうが、ようやく増やし始めたらしい。
下働きの宮女でも見た目の美しさが必要なら、平凡顔の私なんてお呼びじゃないかもしれない。しかし飯炊きや掃除婦はまた別の枠だろう。もし宮女が駄目だとしても、どうにか宮中で働けないか頼んでみようか。
宦官が熱心に宮女を探すのは、自分が見つけ出した宮女が妃候補となり、皇帝の寵愛を受けることになれば、後々の出世にも関わってくるからだとか。それが行き過ぎたのが、かつて行われたという宮女狩りだ。
私は先程の楊益を思い返す。あまり熱心そうではなかったが、ちゃんと私の相手をしてくれた。
むしろあれくらい熱心でない方が良いかもしれない。私には大それた望みはない。とにかく少しでも早く家を出たいだけ。
私は肩に食い込む縄をしっかりと握って酒瓶を背負い直すと、真っ直ぐに前を見据えた。
◆ ◆ ◆
「遅かったじゃないか! 何をサボっていたの!」
「すみません」
お使いを終わらせた私は、帰って早々、義母の苛立った声に出迎えられた。
ああ、またか、と思ったが声には出さない。
「本当にお前はサボるのが得意だこと。なら食事はいらないわねえ。そんなにサボってばかりではお腹も空かないでしょう」
私は唇を噛み締めて、嫌味ったらしい義母と目が合わないように視線を伏せた。
機嫌の悪い時の義母はとにかくトゲトゲした声でこちらに当たり散らし、時には棒で叩いてくるものだから、たちが悪い。食事抜きにされるのも珍しくない。
確かに今日は楊益と話したので、多少は遅くなったかもしれない。それでもあまり遅くならないよう、人の少ないところでは走ったほどだ。だが、こうして罵られるのは遅かったからではない。義母は妾腹の私がただひたすら憎いだけなのだ。
しかし口答えなどすれば何をされるか分からない。腹立たしくとも我慢するしかなかった。ただでさえ一日二食もらえれば御の字の食事を、これ以上減らされては敵わない。
「――まあまあ、お母様。そんなに怒鳴らなくても……外まで聞こえていてよ。それより、ちょっと小腹が空く時間でしょう。お母様もお茶の時間にしましょうよ、ね?」
場を取りなしながら奥から出てきたのは腹違いの姉、朱華だった。
美女と名高い姉は私と違い、一度も日に焼けたことのないような白い肌をしている。仕立てたばかりと思しき真新しい着物に、手入れの行き届いた黒く艶々した髪。金の細工に赤い珊瑚玉の付いた華やかな簪を挿しているその姿は優美で、誰が見ても裕福な家の子女だ。この美貌であれば後宮から声がかかるのも当然だろう。姉と自分を比べても惨めにすらならない。そんな気持ちはとうの昔に擦り切れていた。
姉は無垢な微笑みを浮かべて、愛らしく母親の袖を引いている。義母もそんな愛娘に袖を引かれては、蕩けるような甘い声を出すしかない。
「おや、本当に華々は優しい子だこと。そうね、向こうで甘い菓子でも食べましょうか」
義母は小間使いにお茶を頼むと、私のことは忘れたみたいに行ってしまった。
「――厨に貴方の分も用意させてるから大丈夫よ。後でこっそり取りに行って」
通りすがりに、姉からそっと耳打ちをされる。
「……姉さん、ありがとう」
私がそう言うと、姉は唇の端を上げて静かに微笑みを浮かべた。
私は義母には疎まれているが、腹違いの姉はこうして優しくしてくれる。しかし姉だって正面切って母親には逆らえない。今のように気を逸らそうとしてくれるのが精一杯だ。それでも見て見ぬ振りの父親よりはずっとましだし、ありがたい。
食事抜きにされるのは、成長期には特にこたえる罰だ。今日は食事抜きどころかおやつまで食べられそうで、珍しく良い日だった。ウキウキしながらも、足音を立てずにそっと厨へ向かう。足音がうるさいと叩かれるせいで、猫のように足音を立てないのがすっかり癖になっていた。
自室で、厨から持ってきたおやつにかぶりついた。
滅多に食べられないおやつ。しかも好物の包子だ。冷めていたが甘い餡が入っていて美味しい。今日は走ったのでお腹が空いていたから尚のこと。
元は物置だった狭くて日当たりの悪いこの部屋は、かなり冷える。だがそのせいもあって、寒がりな義母はこの部屋に近付くことは滅多にない。私の数少ない安息の場所だ。
たった一つの家具である長持に入っているのは、義母に取り上げられずに済んだ若干の着物と祖父が残してくれた書物や書き付け、それからこれ。
私は大事にしている練り香水を取り出した。
平たい二枚貝の綺麗な貝殻に、軟膏状の練り香水が、かつてはたっぷりと入っていた。
もう残り少ないが、顔に近付けて匂いを嗅ぐと、懐かしい茉莉花がほのかに薫る。
これは祖父の形見だった。幼い私に作ってくれた茉莉花の練り香水。毎日付けるように、と言い、なくなりかけたら足してくれた祖父はもういない。最後の練り香水も、間もなく尽きようとしていた。
私はそれをほんの少し薬指に掬い取って耳の後ろに付ける。普段は朝にしか付けないが、今日は良い日だったから、特別に自分へのご褒美だった。
暗い室内に茉莉花の香りが漂う。その懐かしい香りを嗅ぎながらいつのまにか目を閉じていた。
◆ ◆ ◆
暗闇の中、どこからか子供の笑い声が聞こえる。
楽しそうに、無邪気に笑っている子供。
――いや、あれは幼い頃の私の声だ。
――ああ、ではきっとこれは夢なのだ。懐かしい、祖父との思い出。
――もう十年も前のこと。
暗闇から、かつて祖父と暮らしていた小さな家が現れた――
幼い私は、誰もいない部屋の暗がりに向かって楽しそうな笑い声を立てていた。
「――それでね……あ、爺ちゃん!」
「莉珠や、お前、一体誰と話してるんだい」
「んー知らない! でもね莉珠を撫でてくれるの。お話もしてくれるよ!」
「……そこには誰もおらんよ」
「いるもん!」
「不憫な子だ……」
祖父は私を抱きしめる。
私が寂しさのあまり空想上の友達を作って慰めにしていると思っていたらしい。
しかし、私にはソレが見えていた。私にとっての現実だったのだ。
「寂しくさせてすまんなぁ……」
まばらに生えた髭が、頬をちくちくと刺激するのがくすぐったくて、私は笑う。
「なぁに、爺ちゃん、くすぐったいよぉ」
私は祖父が大好きだった。たった一人の私の家族だったのだ。時に厳しく、時に優しく、私を育て導いてくれた祖父。
だが私の見えていたモノは祖父には見えていなかったのだ。
――人ならざるモノ。それは黒っぽかったり、白かったり、ほとんど人と変わらないようなモノもいた。獣や鳥の姿に見えたこともある。はっきり見えたり見えなかったりと、日によっても異なっていた。そこにいるのが当たり前過ぎて、幼い私は疑問にすら思わなかったのだ。
やがて祖父も私が人ならざるモノを見ていることに気が付いたが、そんな奇妙な私を気味悪がることなく可愛がってくれた。私もたった一人の家族である祖父が大好きだった。
「爺ちゃん、この草? こっちの葉っぱは?」
祖父は薬草を摘み、それを煎じて作った薬を売り生計を立てていた。私は少しでも祖父の役に立ちたくて、あちこちから草を引っこ抜いて集めた。
「おうおう、よく見つけたな、莉珠。こっちの草は歯痛に効く。この葉は咳止めだ。莉珠は覚えが良いな」
「やったあ! ねえ、もっと探してくる!」
「これ、莉珠。あんまり遠くに行くんじゃないよ」
「はーい!」
その日も、まだ薄暗い早朝に家を抜け出し、小さな籐籠を手にふらふらと川沿いに来ていた。家の庭にも薬草は生えていたが、川沿いには種類の違う薬草が生えていたからだ。
覚えたばかりの薬草を摘み終え、近道にと、当時の私よりもずっと背の高い葦の合間を通っていた。そんな私の耳にどこからともなく泣き声とも呻き声ともつかぬ声が聞こえてくる。不思議なその声に、うなじがピリピリとした。
人気のない川の近く。普通の子供であれば恐れて逃げたかもしれないが、当時の私は好奇心の方が勝っていた。私の周囲にいた人ならざるモノは総じて私に優しく、危害を加えられるとは思いもしなかったのだ。
「だれかいるの?」
その泣き声は私の呼びかけでピタリとやむ。だがもしも本当に泣いているなら放っておけないと、再度声をかけた。
「ねえ、泣いてんの?」
「……泣いてなどいない」
「でも……。えっと、迷子なら爺ちゃんを呼んでこようか?」
『宮女募集』
通りに立てられた粗末な板には、そのたった四文字が、やたらと達筆な文字で書かれている。
その掲示を見つけた私は、お使いの途中だというのに、ついふらふらとそちらに引き寄せられていた。
本当は真面目にお使いに行って、急いで帰らなければ怒られる。そう分かってはいても、私の足は根を張ってしまったようにその板の前から動かなかった。
季節は早春。
暦の上では春であったが、まだ名ばかりの寒々しいこの季節。
私の着ている擦り切れたお下がりの着物は、スカスカと冷たい風を通して、防寒の役には立っていなかった。往来を行き交う人混みも土埃が立つばかりで風除けになりはしない。急ぎの早歩きであれば体も温まるが、立ち止まっていると即座に冷え始める。
けれども私は宮女募集の文字に釘付けになっていた。
小さな期待に胸が高鳴る。もしかしたら、と思うのを止められなかった。
その掲示に足を止めているのは私ひとり。ひっきりなしに人通りのあるこの道で、ここだけが閑散としている。そうでなければ人より小柄な私には掲示が見えなかっただろう。
だからこそ、これは運命なのかもしれない、なんて思ってしまうのだ。
宮女募集の掲示の横には小男がぼんやりとした顔で酷く退屈そうに立っていたが、掲示板の前に陣取る私に気が付いて、鷹揚にこちらを向いた。
中年だと思うけれど、眉の薄いつるりとした顔には髭もなく、どことなくおばさんのようにも見える男だ。おそらくは噂に聞く宦官とやらなのだろう。
私はごくっと唾を呑み込み、その男に話しかける。
「こんにちは。あの……この宮女募集って……」
「ああ、皇帝陛下の後宮で働く宮女の募集だよ」
小男は相変わらずぼんやりとした表情でそう言った。暇だからぼんやりしていたのではなく、これが常態らしい。
「と言っても今回はただの下働きの宮女募集でね。それでもいくつも条件がある。若く健康で、生娘であること。不美人も駄目だ。お前さんは――」
言葉を切って私の顔をじっくりと見た。
私は特別な美人でもないが、幸いなことに不美人というほどでもない。平凡な顔であるのは重々承知だ。
「うん、まあ、受からなくもない、というところか。だが、それなりの家柄も必要でね、裕福な商家だとか、役人の家系じゃないといけない。下働きでも読み書きや計算なんかの最低限の教養が必要なのさ」
次いでその男は、私の着ている擦り切れた着物に視線を落とした。
お下がりの上衣は色褪せており、裳には繕った跡がある。手持ちの着物の中でもとりわけ古びている部類だ。こんなことなら今日はもう少しましな着物にしておけばよかった。身を縮めたくなるのを堪えて立つ。
幸い、宦官はこんな酷い格好の私にも淡々と話しかけてくる。
「お前さん、裕福な商家の娘には到底見えないね。だが文字は読めるのか」
「商家ではないけど、役人の娘よ。まあ一応、といったところだけれど。読み書きも出来るし、自分で言うのもなんだけど、こう見えて力持ちだし、とにかく丈夫よ。あ、お金はかかる? 先に言っておくと、私一銭も持っていないの」
「ふうん」
男は気の抜けたような鼻息を漏らす。
確かに酷い襤褸をまとった私は役人の娘には見えないだろう。我が家で働く小間使いだってもう少しましな着物を着ている。
顔も平凡だし、私にはこれといって取り柄がない。あるのは病知らずの健康なこの体だけである。その体すら栄養が不足しているからか、チビで痩せっぽち。姉とは一歳しか違わないというのに、あちらはすでに大人の女性らしい体付き、私の方はガリガリで丸みはかけらもない。
「まあ、良いか。戸籍の写しを出さねばならんから、どうせ不正も出来まいよ。それに試験だってある。試験を受けるだけなら金はかからんが、門前払いになる可能性だってあるよ。それでも良いかい」
「それでも良いです!」
私は食い気味に答えて、力強く頷く。
何せこれまでろくな目に遭ってこなかった。これからだってそうだろうから、出来ることならなんだって試してみたい。それにしたってお金がかからないのは僥倖だ。私には自由になるお金もないのだから。
宦官は首を傾けるように頷く。
「そうかい。それでお前さん、年と名前は?」
「十六歳よ。名前は――」
「――おい、待て待て、どこが十六だ。そなた、良いところ十三、四にしか見えないだろう!」
「はあ!?」
突然、横槍を入れられてカチンときた。
いつの間にやら私と宦官の横に大男が立っており、話を立ち聞きしていたらしい。
私は文句を言ってやろうと険しい顔で大声の主を振り向き、その姿に思わずギョッとする。それもそのはず。見るからに不審ななりだ。
その男は雨でもないのに笠を被っていた。それも長い垂布が付いた笠である。薄い紗のような布だから笠の内側からは外が見えるのだろうが、垂布で腰辺りまでを覆っているため、こちらからでは顔どころか上半身が全く見えない。かろうじてその声と体付きから男であるのが分かる程度。
おそらく旅装束なのだろう。垂布の笠は街道を歩く時、日差しや砂埃から目を守るために被る。だがこんな街中では、邪魔にしかならない笠は外して歩くのが普通だ。
その異様な風体に、眉根を寄せていた私は目を見開いた。
あの宦官も大男を見ている。ぼんやりとした表情ながら今までで一番目が大きく開いているから、さすがに驚いているのかもしれない。
一瞬怯んでしまったが、それでも一言物申さねば気が済まないので口を開いた。
「な、なんですか、貴方には関係ないでしょう!」
「いや、たまたま聞こえたのだが、往来で十六歳などと嘘を吐いているのが耳に入ってきたゆえな。下手したら十三以下でもおかしくあるまい。そんなちんちくりんのくせして、サバを読みすぎであろう」
「なんですって!」
確かに身長が低いせいで若く――というか幼く見られがちではあるが、まさか十三歳以下に見られるとは思ってもみなかった。うら若き乙女になんという言い草だ。
この迦国では十六歳ならもう成人だ。私も立派な大人と自信を持って言えるわけではないが、結婚だって出来るような年齢なのに、道を駆け回る洟垂れ小僧共と一緒だと思われるのは屈辱である。
「身長が低くて悪かったわね! 成長期なんだからこれからだって伸びるわよ!」
「そうかぁ? そんなに痩せて、ちゃんと食べておるのか? 食べねば伸びるものも伸びぬぞ」
「そうね、義理の母が食事抜きにしない日ならね! ってもう、アンタはなんなのよ。私、こう見えて忙しいんだから、あっちに行って!」
「……待て。待て待て。食事抜きとはなんだ。そんなに幼いというのに、そなたは継母にいじめられておるのか。庶民向けの物語でもあるまいに」
「なんだって良いでしょう。アンタには関係ないんだから!」
腹の底がカッと熱くなり、そのまま言い返した。腹が立って毛が逆立っているのか、うなじがピリピリとする。
「言っておくけどね、そんな境遇なんて別に珍しくもなんともない。そこら辺にゴロゴロいるし、いちいち同情される筋合いもないわよ。自力でどうにかするために宮女の募集に乗っかろうとしてるんじゃない。邪魔しないで!」
私はその男に犬を追い払うみたいに手を振ってから、思いっきり顔をしかめて、べえっと舌を出した。
男はもう言い返してこなかった。言い返してきたとしても、無視するつもりだったが。
「ごめんなさい、お待たせしたわね。まさかちょこっと騒いだからって、この場で断ったりなんてしないでしょうね」
私は笠の男を追い払い、宦官の方へ向き直った。宦官は我に返ったようにしきりに瞬きをして私に目線を戻す。
「あ、ああ。まあ……驚いたが、そういうこともあるだろうさ」
それほど驚いている様子には見えなかったが、本人的にはそうでもないらしい。
「ええと、どこまで聞いたか。年は十六で、名前は」
「私の名前は朱莉珠。朱色に茉莉花の莉、それから珠と書くの。朱家の娘よ」
男は落ち着きを取り戻したのか、手にしていた木の板に携帯用の細筆でサラサラと書き込んだ。
「それで、家は役人、と。……おや、朱家で役人といえば、この辺りでは朱高殿しか知らないが」
「それが私の父です。この先の通りにある朱の屋敷が私の家」
「ふむふむ……朱家には二年ほど前に、美女と評判の娘御を後宮にどうかという話を持っていったことがあったんだが……確か娘は一人しかおらず、跡取り娘だから婿を取らねばならぬのだと断られたはずだ」
「それはそうでしょうね」
私は苦笑いをする。さっきの笠の男とのやりとりで薄々は境遇を察していることだろう。
「私は妾腹の娘なんです。多分、二年前に声をかけたというのは、私の姉の朱華でしょう」
「ああ……なるほどね。大体分かったよ。それじゃあ、後で朱家にもう一度話を持っていこう」
「ありがとう! あの、貴方の名前を伺っても?」
「私は楊益だ。察しの通り、宦官だよ。それでも、まあ、あまり期待はしないように」
「ええ! それじゃあ、またお目にかかれることを祈ってる!」
楊益はぼんやりとした表情のまま頷き、また往来に視線を戻した。笠の男はもう見える辺りにはいないようだ。
私は再びあの輩に絡まれないよう、そそくさと急ぎ足で歩き去った。
その帰り道、私はお使いで頼まれた酒の大瓶を担いでいた。重い買い物やきつい仕事は小間使いではなく私の仕事となっている。おかげで力は強いし、体も丈夫だ。
私はずっしりと重い酒瓶を運びながら、先程の掲示を思い返していた。
宮女――後宮で雑務を行う女性のことだ。今回は下働きと言っていたから、妃候補やその側付きではなく、身の回りの世話や雑用をする宮女の募集ということなのだろう。
私の住まう迦国では後宮制度が存続していた。だが、かつては数千人の女たちがいたと言われている後宮も今は随分と規模が小さいのだと聞いたことがある。
「確か、新しい皇帝が即位したばかりなんだっけ」
一年ほど前、即位の前後はそれはもうお祭り騒ぎであった。もちろん私は忙しくこき使われただけで、なんの恩恵もなかったが。
その前は女帝だったはずなので後宮の必要性が低かったのだろうが、ようやく増やし始めたらしい。
下働きの宮女でも見た目の美しさが必要なら、平凡顔の私なんてお呼びじゃないかもしれない。しかし飯炊きや掃除婦はまた別の枠だろう。もし宮女が駄目だとしても、どうにか宮中で働けないか頼んでみようか。
宦官が熱心に宮女を探すのは、自分が見つけ出した宮女が妃候補となり、皇帝の寵愛を受けることになれば、後々の出世にも関わってくるからだとか。それが行き過ぎたのが、かつて行われたという宮女狩りだ。
私は先程の楊益を思い返す。あまり熱心そうではなかったが、ちゃんと私の相手をしてくれた。
むしろあれくらい熱心でない方が良いかもしれない。私には大それた望みはない。とにかく少しでも早く家を出たいだけ。
私は肩に食い込む縄をしっかりと握って酒瓶を背負い直すと、真っ直ぐに前を見据えた。
◆ ◆ ◆
「遅かったじゃないか! 何をサボっていたの!」
「すみません」
お使いを終わらせた私は、帰って早々、義母の苛立った声に出迎えられた。
ああ、またか、と思ったが声には出さない。
「本当にお前はサボるのが得意だこと。なら食事はいらないわねえ。そんなにサボってばかりではお腹も空かないでしょう」
私は唇を噛み締めて、嫌味ったらしい義母と目が合わないように視線を伏せた。
機嫌の悪い時の義母はとにかくトゲトゲした声でこちらに当たり散らし、時には棒で叩いてくるものだから、たちが悪い。食事抜きにされるのも珍しくない。
確かに今日は楊益と話したので、多少は遅くなったかもしれない。それでもあまり遅くならないよう、人の少ないところでは走ったほどだ。だが、こうして罵られるのは遅かったからではない。義母は妾腹の私がただひたすら憎いだけなのだ。
しかし口答えなどすれば何をされるか分からない。腹立たしくとも我慢するしかなかった。ただでさえ一日二食もらえれば御の字の食事を、これ以上減らされては敵わない。
「――まあまあ、お母様。そんなに怒鳴らなくても……外まで聞こえていてよ。それより、ちょっと小腹が空く時間でしょう。お母様もお茶の時間にしましょうよ、ね?」
場を取りなしながら奥から出てきたのは腹違いの姉、朱華だった。
美女と名高い姉は私と違い、一度も日に焼けたことのないような白い肌をしている。仕立てたばかりと思しき真新しい着物に、手入れの行き届いた黒く艶々した髪。金の細工に赤い珊瑚玉の付いた華やかな簪を挿しているその姿は優美で、誰が見ても裕福な家の子女だ。この美貌であれば後宮から声がかかるのも当然だろう。姉と自分を比べても惨めにすらならない。そんな気持ちはとうの昔に擦り切れていた。
姉は無垢な微笑みを浮かべて、愛らしく母親の袖を引いている。義母もそんな愛娘に袖を引かれては、蕩けるような甘い声を出すしかない。
「おや、本当に華々は優しい子だこと。そうね、向こうで甘い菓子でも食べましょうか」
義母は小間使いにお茶を頼むと、私のことは忘れたみたいに行ってしまった。
「――厨に貴方の分も用意させてるから大丈夫よ。後でこっそり取りに行って」
通りすがりに、姉からそっと耳打ちをされる。
「……姉さん、ありがとう」
私がそう言うと、姉は唇の端を上げて静かに微笑みを浮かべた。
私は義母には疎まれているが、腹違いの姉はこうして優しくしてくれる。しかし姉だって正面切って母親には逆らえない。今のように気を逸らそうとしてくれるのが精一杯だ。それでも見て見ぬ振りの父親よりはずっとましだし、ありがたい。
食事抜きにされるのは、成長期には特にこたえる罰だ。今日は食事抜きどころかおやつまで食べられそうで、珍しく良い日だった。ウキウキしながらも、足音を立てずにそっと厨へ向かう。足音がうるさいと叩かれるせいで、猫のように足音を立てないのがすっかり癖になっていた。
自室で、厨から持ってきたおやつにかぶりついた。
滅多に食べられないおやつ。しかも好物の包子だ。冷めていたが甘い餡が入っていて美味しい。今日は走ったのでお腹が空いていたから尚のこと。
元は物置だった狭くて日当たりの悪いこの部屋は、かなり冷える。だがそのせいもあって、寒がりな義母はこの部屋に近付くことは滅多にない。私の数少ない安息の場所だ。
たった一つの家具である長持に入っているのは、義母に取り上げられずに済んだ若干の着物と祖父が残してくれた書物や書き付け、それからこれ。
私は大事にしている練り香水を取り出した。
平たい二枚貝の綺麗な貝殻に、軟膏状の練り香水が、かつてはたっぷりと入っていた。
もう残り少ないが、顔に近付けて匂いを嗅ぐと、懐かしい茉莉花がほのかに薫る。
これは祖父の形見だった。幼い私に作ってくれた茉莉花の練り香水。毎日付けるように、と言い、なくなりかけたら足してくれた祖父はもういない。最後の練り香水も、間もなく尽きようとしていた。
私はそれをほんの少し薬指に掬い取って耳の後ろに付ける。普段は朝にしか付けないが、今日は良い日だったから、特別に自分へのご褒美だった。
暗い室内に茉莉花の香りが漂う。その懐かしい香りを嗅ぎながらいつのまにか目を閉じていた。
◆ ◆ ◆
暗闇の中、どこからか子供の笑い声が聞こえる。
楽しそうに、無邪気に笑っている子供。
――いや、あれは幼い頃の私の声だ。
――ああ、ではきっとこれは夢なのだ。懐かしい、祖父との思い出。
――もう十年も前のこと。
暗闇から、かつて祖父と暮らしていた小さな家が現れた――
幼い私は、誰もいない部屋の暗がりに向かって楽しそうな笑い声を立てていた。
「――それでね……あ、爺ちゃん!」
「莉珠や、お前、一体誰と話してるんだい」
「んー知らない! でもね莉珠を撫でてくれるの。お話もしてくれるよ!」
「……そこには誰もおらんよ」
「いるもん!」
「不憫な子だ……」
祖父は私を抱きしめる。
私が寂しさのあまり空想上の友達を作って慰めにしていると思っていたらしい。
しかし、私にはソレが見えていた。私にとっての現実だったのだ。
「寂しくさせてすまんなぁ……」
まばらに生えた髭が、頬をちくちくと刺激するのがくすぐったくて、私は笑う。
「なぁに、爺ちゃん、くすぐったいよぉ」
私は祖父が大好きだった。たった一人の私の家族だったのだ。時に厳しく、時に優しく、私を育て導いてくれた祖父。
だが私の見えていたモノは祖父には見えていなかったのだ。
――人ならざるモノ。それは黒っぽかったり、白かったり、ほとんど人と変わらないようなモノもいた。獣や鳥の姿に見えたこともある。はっきり見えたり見えなかったりと、日によっても異なっていた。そこにいるのが当たり前過ぎて、幼い私は疑問にすら思わなかったのだ。
やがて祖父も私が人ならざるモノを見ていることに気が付いたが、そんな奇妙な私を気味悪がることなく可愛がってくれた。私もたった一人の家族である祖父が大好きだった。
「爺ちゃん、この草? こっちの葉っぱは?」
祖父は薬草を摘み、それを煎じて作った薬を売り生計を立てていた。私は少しでも祖父の役に立ちたくて、あちこちから草を引っこ抜いて集めた。
「おうおう、よく見つけたな、莉珠。こっちの草は歯痛に効く。この葉は咳止めだ。莉珠は覚えが良いな」
「やったあ! ねえ、もっと探してくる!」
「これ、莉珠。あんまり遠くに行くんじゃないよ」
「はーい!」
その日も、まだ薄暗い早朝に家を抜け出し、小さな籐籠を手にふらふらと川沿いに来ていた。家の庭にも薬草は生えていたが、川沿いには種類の違う薬草が生えていたからだ。
覚えたばかりの薬草を摘み終え、近道にと、当時の私よりもずっと背の高い葦の合間を通っていた。そんな私の耳にどこからともなく泣き声とも呻き声ともつかぬ声が聞こえてくる。不思議なその声に、うなじがピリピリとした。
人気のない川の近く。普通の子供であれば恐れて逃げたかもしれないが、当時の私は好奇心の方が勝っていた。私の周囲にいた人ならざるモノは総じて私に優しく、危害を加えられるとは思いもしなかったのだ。
「だれかいるの?」
その泣き声は私の呼びかけでピタリとやむ。だがもしも本当に泣いているなら放っておけないと、再度声をかけた。
「ねえ、泣いてんの?」
「……泣いてなどいない」
「でも……。えっと、迷子なら爺ちゃんを呼んでこようか?」
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