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番外編
【迦国5巻発売&完結記念番外編②】大団円のその後で
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※迦国あやかし後宮譚5巻の重大なネタバレを含みますので、読了後にこの番外編をお読みください。
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「──上、母上、起きてください。こんなところでお休みになると風邪を召されますよ」
そう揺さぶられて、ふと目を覚ました。
『母上』だなんて、いったい誰がそんな呼び方をしているのだろう。
私は子持ちではあるけれど、長男の暁明はまだ一歳にもなっていないはずだ。
「……だ、誰?」
眩しさに目を開くと、私の目の前に十二歳ほどの少年がいた。長い髪に、女物を着せたら美少女にも見紛うような綺麗な顔立ち。
「……あれ、雨了?」
初めて会った時の雨了によく似ている。少し年上だろうか。
そう思った私に、目の前の美少年は呆れたように言った。
「母上、何をおっしゃるのですか。私は暁明です。確かに私と父上はよく似ていますけれど。まだ寝ぼけているみたいですね」
じわじわと記憶が蘇ってくる。
そうだ。この子は暁明ではないか。
すっかり寝ぼけていたらしい。
暁明を産んでからもう十二年が経ったのだ。まるで、一晩の夢のようにあっという間のことのように感じる。
「ごめんなさい。寝ぼけていたみたい」
宮殿の中庭でうたた寝をしてしまっていたらしい。夢を見たせいで、一瞬記憶が昔に戻ってしまっていたのだ。
「お疲れなのでしょう。父上の行幸に付き添って帰られたばかりですから」
「そうかもしれないわ」
暁明は十二歳ながらしっかりした子だ。
さすが雨了の子である。
でもまだ甘えたい盛りだろうと、頭を撫でた。
暁明は真っ赤になって飛ぶように後退った。
「や、やめてください! もう子供ではありません!」
「何を言っているのだか。まだまだ子供でしょう」
暁明がしきりに後ろを気にするので、そちらに視線を向けると、女の子が二人、男の子が一人いて、私たちのやり取りを興味深そうに眺めていた。
そうだった。中庭には子供たちが全員いたのだ。
暁明より少し年下の美少女は氷華。
瑞雪と白呈孝の娘だ。白琅の公主で、今は暁明の婚約者として迦国に滞在している。
親が決めた婚約者ではなく、暁明が自分の番とした相手だった。
白銀のふわふわした髪と、抜けるように白い肌と薄青い瞳はどこか浮世離れした美貌で、長ずれば相当な美人になるだろう。
そんな彼女は、中身は瑞雪にそっくりなのである。
母親に頭を撫でられた暁明に、ニマニマと笑みを向けている。
きっと暁明はあとで散々揶揄われるのだろう。
ちょっと申し訳ないことをしたかもしれない。
それからもうすぐ十歳になるのが、虹羨と雷夏。双子の兄妹である。
長女の雷夏は全体的な雰囲気などは雨了に似ているが、目元は私にも似て猫のようにくりっとしている。驚くほど激しい気性で、カッとなりやすく、泣くと雷が鳴ったようにうるさい。うちで一番の跳ねっ返りだ。とはいえ困った性格というわけではなく、感情豊かで情に厚い、いい子だ。
蔡美宣とウマがあって、美形が好きすぎるのが玉に瑕だろうか。
そして次男の虹羨は、ほんわか穏やかした雰囲気で、読書家で知識欲も高い。
顔は私に一番似ているのかもしれない。龍の鱗は持たずに生まれ、妖や幽霊を見る能力も高いから、体質も私似だ。
祖父から名前を一字もらったせいか、壁巍も一番目をかけている気がする。
穏やかな性格なので、カッとして飛び出しそうになる雷夏を止めるのが上手だが、案外こういう性格の虹羨の方がふらふらどこかに行ったまま消えてしまいそうな雰囲気があるのだ。
まあ、次男だし、龍の血が濃くないみたいなので、大人になってからなら、自由に生きるのも構わないと思っている。
暁明は聡明で、十二歳にして立太子し、私は最近皇后位を得たのだった。
おかげで政治にも口出しできる部分が増えてきた。雨了の重い荷物を少しずつ一緒に支えられるようになってきたのだ。
子供たちも随分大きくなった。
実は双子を産んだ時、出血が激しく、命が危うかった。
そのせいで、これ以降は子供を作らない方がいいと決めていたのだが、大きくなった子供たちを目の前にすると、やっぱりもう一人くらい欲しい気がしてしまう。
「母上、そろそろ夕方ですから室内に」
「ええ、そうね」
そう促された瞬間、夕方の空をスーッと滑るように飛んできた燕が私のお腹にぶつかった。
「きゃあっ」
「ど、どうされましたか?」
驚いて声を上げたが、暁明はきょとんとしている。
「つ、燕が、お腹に……」
そう言ったが、子供たちは首を捻っている。
「何もいませんでしたが……」
幻覚とは思えない。
何かの予兆か、妖だったとか……?
「僕は見ましたよ。燕が母上のお腹に入っていきました」
そう言ったのは虹羨だった。
私と同じく星見の血が強いせいか、私と虹羨だけが不思議な燕を見たようだ。
「母上、妹は春燕という名前にしてください」
そうポツリと虹羨が言い、私はお腹に手を当てた。
もしかして。
まだ膨らみはないけれど、もう一人くらい欲しいと思っていたところだ。
それに、燕というのもいい。
私の亡き友人、夕燕に少し似た穏やかな性質の女の子になるのかもしれない。
私付きの宮女だった恩永玉も結婚して、子供ができたと連絡をもらったところだ。お腹の子が生まれたら、恩永玉に乳母として復帰してもらうのもいいかもしれない。
相変わらず私付きの金苑も、恩永玉が戻ってきたなら喜んでくれるだろう。
「莉珠! 今日の政務が終わったぞー!」
そんな大きな声が聞こえて私は微笑む。
雨了は珍しく早めに政務が終わったようだ。
今晩は家族でゆっくり暮らせそうだ。
ああ、私は幸せだ。
暮れゆく空を見上げて私は微笑む。
明日も明後日も、この幸せが続きますように。
「──莉珠、莉珠」
「んん……」
そう揺さぶられて私は目を開いた。
雨了にそっくりに成長した暁明が私を覗き込んでいる。また眠ってしまったようだ。
それにしても、随分大きい。
「あら……暁明……少し見ない間に大人になったの?」
「何をおかしなことを。暁明ならこっちだ」
クスッと笑い声に目を瞬かせる。
「あれ、雨了?」
「眠いのにすまないな。暁明がどうしても莉珠のばがいいと聞かなくてな。乳母が困っていたから連れてきたのだ」
私を覗き込んでいたのは雨了だ。その腕にまだ赤ん坊の暁明が抱かれていた。
「……ということはさっきのは夢なのね」
「どんな夢だ?」
「未来の夢だったわ。暁明も大きくなって、私は皇后になって、雨了を支えているの」
思い出すと心の中が温かくなる。
「いい夢だったから、少し残念なような気もするわね」
しかし、夢は夢。こうしている間にも少しずつ朧げになっていく。
「いや、案外正夢かもしれぬぞ。そなたは過去を覗き見たことが何度もあるのだからな、未来を見ることもあるだろう」
「ふふ、そうかもね」
細かい部分はもう忘れてしまったけれど、あんな幸せな未来になるように、これからも精進していくだけだ。
それはそれとして。
私は雨了の腕の中でぐずっている暁明を抱き上げた。
途端に安らいだ顔になる。
今くらいは甘えさせてあげよう。あれが正夢なら、次は双子で甘えられることも減ってしまうだろうから。
「それから、雨了も」
私は暁明を抱いたのと逆の手で雨了の背中に手を回した。
「り、莉珠……」
私が雨了を支えられるようになるまで、雨了にはもう少し頑張ってもらわなければならない。
「今日もお疲れ様」
「……ああ」
安らいだ顔で目を閉じる雨了の頬に、私はそっと口付けをしたのだった。
終わり
======================================
最終巻である迦国あやかし後宮譚5巻が刊行しました。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
デビュー作で5巻まで書かせていただくことができたのも、読んでくださった方々のおかげです。
ここまで書き切ることができて、とても楽しく、幸せでした。
重ね重ね、ありがとうございました!
シアノ
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「──上、母上、起きてください。こんなところでお休みになると風邪を召されますよ」
そう揺さぶられて、ふと目を覚ました。
『母上』だなんて、いったい誰がそんな呼び方をしているのだろう。
私は子持ちではあるけれど、長男の暁明はまだ一歳にもなっていないはずだ。
「……だ、誰?」
眩しさに目を開くと、私の目の前に十二歳ほどの少年がいた。長い髪に、女物を着せたら美少女にも見紛うような綺麗な顔立ち。
「……あれ、雨了?」
初めて会った時の雨了によく似ている。少し年上だろうか。
そう思った私に、目の前の美少年は呆れたように言った。
「母上、何をおっしゃるのですか。私は暁明です。確かに私と父上はよく似ていますけれど。まだ寝ぼけているみたいですね」
じわじわと記憶が蘇ってくる。
そうだ。この子は暁明ではないか。
すっかり寝ぼけていたらしい。
暁明を産んでからもう十二年が経ったのだ。まるで、一晩の夢のようにあっという間のことのように感じる。
「ごめんなさい。寝ぼけていたみたい」
宮殿の中庭でうたた寝をしてしまっていたらしい。夢を見たせいで、一瞬記憶が昔に戻ってしまっていたのだ。
「お疲れなのでしょう。父上の行幸に付き添って帰られたばかりですから」
「そうかもしれないわ」
暁明は十二歳ながらしっかりした子だ。
さすが雨了の子である。
でもまだ甘えたい盛りだろうと、頭を撫でた。
暁明は真っ赤になって飛ぶように後退った。
「や、やめてください! もう子供ではありません!」
「何を言っているのだか。まだまだ子供でしょう」
暁明がしきりに後ろを気にするので、そちらに視線を向けると、女の子が二人、男の子が一人いて、私たちのやり取りを興味深そうに眺めていた。
そうだった。中庭には子供たちが全員いたのだ。
暁明より少し年下の美少女は氷華。
瑞雪と白呈孝の娘だ。白琅の公主で、今は暁明の婚約者として迦国に滞在している。
親が決めた婚約者ではなく、暁明が自分の番とした相手だった。
白銀のふわふわした髪と、抜けるように白い肌と薄青い瞳はどこか浮世離れした美貌で、長ずれば相当な美人になるだろう。
そんな彼女は、中身は瑞雪にそっくりなのである。
母親に頭を撫でられた暁明に、ニマニマと笑みを向けている。
きっと暁明はあとで散々揶揄われるのだろう。
ちょっと申し訳ないことをしたかもしれない。
それからもうすぐ十歳になるのが、虹羨と雷夏。双子の兄妹である。
長女の雷夏は全体的な雰囲気などは雨了に似ているが、目元は私にも似て猫のようにくりっとしている。驚くほど激しい気性で、カッとなりやすく、泣くと雷が鳴ったようにうるさい。うちで一番の跳ねっ返りだ。とはいえ困った性格というわけではなく、感情豊かで情に厚い、いい子だ。
蔡美宣とウマがあって、美形が好きすぎるのが玉に瑕だろうか。
そして次男の虹羨は、ほんわか穏やかした雰囲気で、読書家で知識欲も高い。
顔は私に一番似ているのかもしれない。龍の鱗は持たずに生まれ、妖や幽霊を見る能力も高いから、体質も私似だ。
祖父から名前を一字もらったせいか、壁巍も一番目をかけている気がする。
穏やかな性格なので、カッとして飛び出しそうになる雷夏を止めるのが上手だが、案外こういう性格の虹羨の方がふらふらどこかに行ったまま消えてしまいそうな雰囲気があるのだ。
まあ、次男だし、龍の血が濃くないみたいなので、大人になってからなら、自由に生きるのも構わないと思っている。
暁明は聡明で、十二歳にして立太子し、私は最近皇后位を得たのだった。
おかげで政治にも口出しできる部分が増えてきた。雨了の重い荷物を少しずつ一緒に支えられるようになってきたのだ。
子供たちも随分大きくなった。
実は双子を産んだ時、出血が激しく、命が危うかった。
そのせいで、これ以降は子供を作らない方がいいと決めていたのだが、大きくなった子供たちを目の前にすると、やっぱりもう一人くらい欲しい気がしてしまう。
「母上、そろそろ夕方ですから室内に」
「ええ、そうね」
そう促された瞬間、夕方の空をスーッと滑るように飛んできた燕が私のお腹にぶつかった。
「きゃあっ」
「ど、どうされましたか?」
驚いて声を上げたが、暁明はきょとんとしている。
「つ、燕が、お腹に……」
そう言ったが、子供たちは首を捻っている。
「何もいませんでしたが……」
幻覚とは思えない。
何かの予兆か、妖だったとか……?
「僕は見ましたよ。燕が母上のお腹に入っていきました」
そう言ったのは虹羨だった。
私と同じく星見の血が強いせいか、私と虹羨だけが不思議な燕を見たようだ。
「母上、妹は春燕という名前にしてください」
そうポツリと虹羨が言い、私はお腹に手を当てた。
もしかして。
まだ膨らみはないけれど、もう一人くらい欲しいと思っていたところだ。
それに、燕というのもいい。
私の亡き友人、夕燕に少し似た穏やかな性質の女の子になるのかもしれない。
私付きの宮女だった恩永玉も結婚して、子供ができたと連絡をもらったところだ。お腹の子が生まれたら、恩永玉に乳母として復帰してもらうのもいいかもしれない。
相変わらず私付きの金苑も、恩永玉が戻ってきたなら喜んでくれるだろう。
「莉珠! 今日の政務が終わったぞー!」
そんな大きな声が聞こえて私は微笑む。
雨了は珍しく早めに政務が終わったようだ。
今晩は家族でゆっくり暮らせそうだ。
ああ、私は幸せだ。
暮れゆく空を見上げて私は微笑む。
明日も明後日も、この幸せが続きますように。
「──莉珠、莉珠」
「んん……」
そう揺さぶられて私は目を開いた。
雨了にそっくりに成長した暁明が私を覗き込んでいる。また眠ってしまったようだ。
それにしても、随分大きい。
「あら……暁明……少し見ない間に大人になったの?」
「何をおかしなことを。暁明ならこっちだ」
クスッと笑い声に目を瞬かせる。
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私を覗き込んでいたのは雨了だ。その腕にまだ赤ん坊の暁明が抱かれていた。
「……ということはさっきのは夢なのね」
「どんな夢だ?」
「未来の夢だったわ。暁明も大きくなって、私は皇后になって、雨了を支えているの」
思い出すと心の中が温かくなる。
「いい夢だったから、少し残念なような気もするわね」
しかし、夢は夢。こうしている間にも少しずつ朧げになっていく。
「いや、案外正夢かもしれぬぞ。そなたは過去を覗き見たことが何度もあるのだからな、未来を見ることもあるだろう」
「ふふ、そうかもね」
細かい部分はもう忘れてしまったけれど、あんな幸せな未来になるように、これからも精進していくだけだ。
それはそれとして。
私は雨了の腕の中でぐずっている暁明を抱き上げた。
途端に安らいだ顔になる。
今くらいは甘えさせてあげよう。あれが正夢なら、次は双子で甘えられることも減ってしまうだろうから。
「それから、雨了も」
私は暁明を抱いたのと逆の手で雨了の背中に手を回した。
「り、莉珠……」
私が雨了を支えられるようになるまで、雨了にはもう少し頑張ってもらわなければならない。
「今日もお疲れ様」
「……ああ」
安らいだ顔で目を閉じる雨了の頬に、私はそっと口付けをしたのだった。
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最終巻である迦国あやかし後宮譚5巻が刊行しました。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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